ゲームを作るために、よく用いられる7つのパターンを紹介します。
目次
ゲームを作る過程は人それぞれ
ゲームを作るための方法は、人それぞれで絶対となる方法はありません。例えば「ゲームジャンル」から発想する人もいれば、「使いたい技術」から発想する人もいます。また「コンセプトを固めてから作る」人も入れば「作りながらコンセプトを考える」人もいます。
確実に言えるのは、作るためのパターンを増やせば増やすほど、作れるものに幅が生まれる可能性がある、ということです。
完成するまでの「過程」が異なることで、同じように見えるゲームでもこだわりの部分が突出し、それが特徴となってゲームの個性となる可能性があります。
パターンの分類
今回紹介するのは以下の7つのパターンです。
- 1. コンセプト主導
- 2. イテレーション開発
- 3. ジャンルのテンプレを利用する
- 4. メタルールの制約を課す
- 5. 技術から作る
- 6. フランケンシュタイン手法
- 7. ストーリー主導
それぞれのパターンは完全に独立するものではなく、少し重なりがあったり、パターンを複合して使われることもあります。
1. コンセプト主導
最初に紹介するのは「コンセプト主導」です。
「コンセプト主導のゲームを作るには」「“体験”から作るゲームデザイン」で紹介したとおり、コンセプトを起点・中心にゲームを構築していく手法です。多くの優れたゲームデザイナーがこの方法を用いてゲームを作っている気がします。
ルール#1:プレイヤーの体験のためにゲームを作るべし
そんなロッテーリ氏が,まず最初に引用したのが,ほかならぬAmazonの創業者であり,世界でもっともお金持ちとして知られるジェフ・ベゾス氏の言葉で,「我ーは競争に執着しているのではなく,顧客に執着しているのだ。まず顧客のことを考えることから始め,そこから逆流していく(のが我ーのやり方である)」というものだ。
[GDC 2019]Amazon Gamesのイルジャ・ロッテーリ氏が語る「次なる偉大なeスポーツタイトルを生み出すための10のルール」
こちらのGDCの記事にあるとおり、1番目のルールに “どんな体験が得られるか” ということが書かれていて、やはり体験を重視して作るのが基本ではないかと思いました。
この方法はコンセプトをゲームシステムに落とし込み、人間の感情にフォーカスしたゲームを作ります。
- そのゲームではどんな “体験” ができるか。
- どんな “経験” が得られるのか。
- どんな “感情” が得られるのか。
- どんな “人生” を送ることができるのか(どんな人物・職業になりきれるのか)。
コンセプトをゲームシステムにストンと落とし込めるなら上手く行きますが、うまく落とし込めないと、試作を繰り返すこととなるため、なかなか手間のかかる開発となるかもしれません。
2. イテレーション開発
イテレーション開発とは、作りながら「何が面白いか」を考え、少しづつ形にしていく手法です。
コンセプトとゲームシステム、サブシステムそれぞれを作りながらお互いを改良していきます。
この手法のメリットとして、どこまでも作り続けられるのでクオリティの高いゲームができます。ですが、考えながら作るのでどうしても開発期間が長くなりがちです。
さらには、「核」となるものが見つからないと延々と開発し続けることになって、開発中止……なんてことにもなりやすい方法です。
ただ、明確なコンセプトがぼんやりしている場合や、核となる技術が身についていない場合、イテレーション開発により、それらを明確にして基盤を作っていく方法としては有効なのではないかと思います。
個人的には、じっくりと開発に時間をかけられる場合、悪くない開発手法と考えています。
3. ジャンルのテンプレを利用する
既存ジャンルのテンプレを応用して新しいゲームを作る方法です。ゲームを作る際の最も一般的な手法で、一から作るよりも早く、簡単に作ることができます。
既存のゲームの足し算と引き算を繰り返しながら、それに別の世界観を加えることで新しいゲームを作ります。
個人的には、ゲーム制作に不慣れな初心者におすすめの方法と考えています。
4. メタルールの制約を課す
アイデア、ゲームデザインの発想に制約を加える方法です。例えば以下のルールのものでゲームを作ります。
- 既存のゲームシステムを参考にしない: ジャンルでゲームを考えない
- 世界観を利用しない: 純粋なゲームルールからゲームを考える
- 使用可能な操作方法を制限する: ボタンを1つしか使わない操作のゲームを考える、など
ルール同士にはある程度の優先順位(重視したい要素)をつけ、ルール同士の衝突や一貫性の不備によりゲームデザインが停滞して進まなくなるのを防ぎます。
5. 技術から作る
「ある技術を使って作れるゲームは何か?」ということからゲームデザインを考える方法です。
例えば、VRやGPSなどの技術を使ってどんなゲームが作れるか、という考え方をします。
注意点として、技術を中心とするゲームデザインは “一流の技術” を持っていないと他との競合と差別化がしにくいというデメリットがあります。
思いつきですが、「枯れた技術の水平思考」のように今まで使われていなかった分野に既存の技術を適用させる、というのもこれに近いかもしれません
6. フランケンシュタイン手法
失敗作、お蔵入りしたゲームを使いまわして別のゲームを作る方法です。
もし失敗作に “光る部分” があれば、それを抽出して磨き上げることで偉大なゲームとなる可能性があります。ただ、使いまわしが難しい場合、使いまわすための余計な労力が発生することになるかもしれません。
この手法は「イテレーション開発」で無駄になったアイデアを再利用するのにも使えそうです。
途中でゲーム制作を挫折しても、フランケンシュタイン手法で蘇らせてゲームコンテストで大賞を獲得した方もおられるので、お蔵入りしたゲームも再利用できるようにどこかにまとめておいた方が良いのかもしれません。
「機械人形は歌わない」というゲーム自体は、過去に売ろうとしたことがある作品で、そのときは技術が足りなくて完成できなかったのですけど、何作か作って技術を身につけることで作れるようになった、というのはありますね
YouTube – 初代グランプリのてんこ様、フリゲ制作者の「リアル」を答える【前半】
7. ストーリー主導
例えば、原作ありき。版権ゲーム。キャラクターゲームです。
「1. コンセプト主導」でサブシステムとした「物語」「世界観」「キャラクター」を描くためにゲームを作る方法です。
ストーリー主導で作る場合によくある問題として、物語を書く人がゲームデザインを理解していないと、形にするのは難しいかもしれません。
「シナリオは良いけどゲーム性が……」という場合の多くは、シナリオライターがゲームを理解していないためだったりします。主人公になりきれるようにするには、ドラゴンクエストの主人公のように寡黙であるのがセオリーですし、主人公の成長はゲームプレイで描かれるもので、例えば主人公の挫折を “負けイベント” で表現するとやらされている感が出てしまったりします。
ストーリーや世界観以外のテーマとしては、お気に入りの「音楽」から連想されるイメージを元にゲームを作るのも良いかもしれません。こうなると「1. コンセプト主導」に近いと言える気もします。
パターンの使い方
今回紹介したパターンは、それぞれが完成に独立したものではありません。ゲーム作りに対する考え方や状況に応じて自由に組み合わせることが可能です。
例えば、世界観からゲームを発想する方法をする際、
- 1. 映画や漫画を見て面白いと思った世界観や設定について考える
- 2. それらがどのような体験を生み出しているのかを考える
- 3. その体験を生み出すコンセプトを抽出して、それを実現させるゲームシステムを考える
- 4. 作り上げたゲームシステムやゲームバランスがコンセプトを満たしているかチェックする
- 5. コンセプトを満たしていたらさらに作り込む。満たさない場合は、コンセプトとゲームシステムを見直す
というようにパターンを組み合わせてゲームを形にしていく方法もあります。
参考にした本
この本に書かれていた「7種のゲームデザイン方法」を参考にしました。