Why 96% of Indie Games Fail (なぜ96%のインディーゲーム開発は失敗するのか) という動画が面白かったので内容と個人的な感想をまとめておきます。 www.youtube.com
動画の内容
1. 情熱の置き所を間違えている
インディーゲーム開発者が、ゲームを作る動機の1つとして「脳内にある作りたいゲームのアイデアの実現」にあります。 ですが、これに情熱を注ぎすぎることで以下の問題が発生します。
- 技術不足:技術が足りないにも関わらずアイデアに固執して開発が停滞する
- 表現力不足:アートや演出を表現する力がないこと気がつき萎えてしまう
- 結果が出ない:SNSで開発中の動画を出しても見向きもされない。体験版を作ってもプレイされない
こういった問題に直面することで「自分の能力・アイデアは大したことない」といった挫折を味わい、完成・販売までたどり着けない開発者が 75% (4分の3) いる、とのことです。
ただ、開発者は「アイデアへの情熱」ばかり見るのではなく、「開発のプロセス自体を楽しむ」ことにも注目すべきと主張しています。 例えば、John Romero(Doom開発者)は「アイデアではなく実行力が全て」と答えており、90作以上の経験を経て成功にたどり着いたという事例を紹介しています。
アイデアを何も考えずゲームを作るわけではないですが、「能力不足」や「結果」といった目先の事象にとらわれずゲーム開発を楽しむのが大切、ということです。
2. プレイヤーの声を無視している
ゲームを作るモチベーションは「自分の好きなゲームを作る」です。このことは悪いことではなく、むしろ継続的なゲーム開発に大切なものです。 ここで問題となるのは、実際にゲームをリリースしたときに「市場が求めていないもの」だったときに話題にもならず売上にもつながらない可能性が高いということです。
そうならないようにするには、Fordの「馬の代わりに車を」的な話のように、プレイヤーの本質的ニーズを読み取ることが必要です。開発前にアイデアを持ってユーザーに聞きに行き、 フィードバックを得て検証することが重要です。
3. 市場調査をしていない
インディーゲームで成功するには「作りたいゲームが市場でどのように受け入れられるか」を考える必要があります。わかりやすいところでは「ジャンル」から目星をつけていきます。自分のゲームがどのジャンル/サブジャンルに属するのかを理解します。
サブジャンルというのも重要で、例えばパズルゲーム全体 と マッチ3パズル(Candy Crush系)では市場規模やユーザー層がまったく違います。これは経験や勘に頼らず "統計データ" から「誰がターゲットか」「市場の潜在規模はどれくらいか」「上位は大手が独占しているか」を調べることが重要です。具体的には Steamで配信するのであれば、Steamでそのジャンルを検索して、アイデアや価格、ボリュームを調査してみるのも1つの方法です。
例えば、マッチ3パズルは上位5社が市場の85%を占有し、平均的な作品は数千ドルしか稼げないという事実があります。そのため開発コスト次第で成功か失敗かが決まります。
4. マーケティング不足
多くのインディーゲーム開発者はマーケティングを軽視するか、間違った層にアピールしてしまっています。 単にPVやプレイ動画をSNSに投稿するだけでは売上につながりません。マーケティングは「価値の提供(教育・娯楽・感動)」であり、かつ 適切なオーディエンスに届けること が肝心です。
極端な例ですが、カジュアルなパーティゲームを Counter-Strikeのファン層に宣伝しても効果が薄い、ということです。
まとめ:失敗を避けるための4つのステップ
最後に動画は「失敗は視点次第。目標がリリースすることなら、それだけで成功」と締めくくっています。 つまり、アートとビジネスの両面を理解し、試行錯誤を続けることが成功への道だと強調しています。
改善のアイデア
以下は個人的に考える成功のためのインディーゲーム開発の改善案です。
1. 「小さく作って完成させる」習慣を持つ
作りたいゲームにもよりますが、1つの大きな夢のゲームを追い続けるのではなく、小規模なプロジェクトを何度も完成させるというのも1つの方法です。 例えばゲームジャム参加や「1週間で完成」を目標します。完成させることで「実行力」への自信がつき、挫折感を減らすことができます。 "Game A Week" に挑戦するのも良いかもしれません。 2dgames.jp もちろん有料で販売するには、クオリティを上げるための作り込みが必要です。ただ「面白くなるかどうかわからない」といった不安を抱えながら作るよりは、Game A Weekによってある程度面白さを確定してから、作り込みを行うほうが安定した開発を行いやすいと思います。
2. 「開発の習慣化」=楽しむためのルーチンを作る
ゲーム開発は短くても数ヶ月、長い場合は数年に及ぶことがあります。そういった継続的な開発を行うには、毎日15分でも「コードを書く・アートを描く・テストをする」という習慣を身につけることです。
さらに進捗を「今日はここまで進んだ!」と可視化することで、アイデアの結果に依存せず、プロセス自体の達成感を得られる。 100ノートやスマホのメモ帳にメモ書きをして残しても良いですし、TrelloやRedmineで小タスクを切って、チェックするのも効果的だと思います。
3. 「学び」と「創作」を一体化する
アイデアが思うように実現できないときの「技術不足」や「表現力不足」を「学習チャンス」と捉えことです。 例えば「この演出を作れない」という問題に直面したときに挫折を感じるのではなく「ゲームエンジンやプログラムの機能を調べて動いた!」という流れを「小さな成功体験」にします。
これについて、開発ログや学習ログを残す(ブログやSNSで発信)と、自分の成長を客観的に感じやすくて良いと思います。
4. 「結果指標」を変える
ゲームを配信したときの指標を「ゲームの売上」や「SNSのいいね数」といった他人の反応を成功指標にすると挫折しやすいです。
そこで他人の評価ではなく「自分が何をできたのか?」を指標とします。例えば以下のものが考えられます。
- 完成本数(例: 今年はゲームを3本完成させました、など)
- 新しいスキル習得(例: 「シェーダーを1つ書けた」「敵のAIをうまく作れた」など)
- 外部フィードバック回数(例: 「月1回はテストプレイヤーに触ってもらう」など)
といった「結果」ではなく「プロセス(過程)」中心の評価に切り替えます。
5. 「仲間」や「外部の目」を取り入れる
ゲーム開発は自分一人だと「技術不足 → 自分のせい」となりがちです。 そこで、Discordコミュニティや小規模チームで進めると、他人の進捗を見るだけで刺激になります。
「誰かが見ている・待っている」環境はモチベを支えます。
まとめ
まとめとしては以下のとおりです。
- 小さく完成させる習慣
- 開発そのものを楽しむ仕組み化
- 結果ではなく学びを成果として数える
- 仲間や外部の視点で孤立を防ぐ
すべてを取り入れるのは難しいかもしれませんが、部分的にでも取り入れることで、「アイデアに固執して燃え尽きる」ループを避け「 ゲーム開発を実行する力」を身に着けやすくなると思います。