【初心者向け】ゲームシナリオの書き方

この記事は、以下の方を対象にしたものとなります。

  • これからゲームシナリオを書きたいと思っている個人ゲーム開発者
  • ゲームシナリオを書きたいのに書けない個人ゲーム開発者

ゲームシナリオを書くための4ステップ

ゲームシナリオを書く場合、おおよそ以下の4ステップを行います。

■STEP 1. ストーリーを考える

ストーリーのアイデアや設定の5W1Hをぼんやり考えます。思いついたところから書き出すと良いです。

■STEP 2. あらすじ・プロットを考える

ストーリーのアイデアや設定を元に、ストーリー全体の流れや展開を大まかに書いていきます。

■STEP 3. シーンに合わせてセリフや情景描写、心の声を書く

プロットで出来事の流れや関連する理由や原因などを書き出せたら、シーンやキャラのセリフなどのテキストを書いていきます。このテキストはユーザーがゲームプレイ中に読む文章となります。

■STEP 4. テストプレイをしながらテキストを調整する

テストプレイしながらテキストや演出を調整していきます。

1. ストーリーを考える

ゲームジャンルを基準に方針を決める

ゲームシナリオはゲームで得られる体験」を基準に方針を決めます。例として「ゲームジャンル」を基準に考えます。

  • 一般的なJRPG:強大な敵との戦いを通して得られる仲間との友情、大切な人との出会い別れ戦争の悲惨さ平和の素晴らしさなど。
  • ローグライク:同じ世界や時間をループすることによるヒーローの苦悩絶望。そこから抜け出したときの達成感解放感など
  • ホラーゲーム:得体のしれない異形の生物に追いかけられる焦燥感、迫りくる死の恐怖。極限状態における人間の狂気など

ゲームジャンルが明確であれば、既存のゲームのシナリオを参考にします。ゲームジャンルごとに相性の良いシナリオの種類はある程度決まっているので、何か特別な理由がなければ王道のシナリオで良いと思います。

✏️王道のシナリオ

ゲームジャンルごとに王道となるシナリオは異なりますが、プレイヤーの努力が報われるような結末にするのが多くの場合は良いです。

  • ラスボスを倒すことが目的のゲーム:ラスボスを「絶対悪」として描き、倒すことで大きなカタルシスを得られるようにする
  • 恋愛ゲーム:ヒロインと結ばれる結末。ただ早い段階で結ばれるような話の場合は、死別などのビターな結末も考えられます
  • メトロイドヴァニアなどの探索ゲーム:主人公の動機を「何らかのお宝を探すために行動している」とすると、結末ではお宝を手に入れるものの本当に欲しかったものは別のものと気づき、真の意味での成長を成し遂げる

もちろんゲームジャンルが明確に決められないこともありますが、その場合は「作りたいゲームの核となる体験は何か?」「得られる感情は何か?」をよく考え、それを表現するのに適したシナリオを選択していくのが良いと思います。

ここではゲームシステムありきのシナリオの決め方について書きましたが、シナリオを決めていく順番は自由で、

  • 1. ゲームシナリオとゲームシステムを「並行」して決めていく
  • 2. ゲームシナリオを先に固める → ゲーム内容を後で考える
  • 3. ゲームジャンルを決める → シナリオを後付けで考える

シナリオが先にあってゲームを後で作っても良いですし、同時に並行して進めていくのも良いです。

個人的な印象では、長いテキストを読ませるようなノベルゲームの場合はシナリオが先にあり、アクションゲームの場合はシナリオは後付けで良いような気がしています。

5W1H」でシナリオを具体的にする

方針が決まったらシナリオを具体的にしてきます。具体的にするには「5W1H」を考えると良いです。

5W1H シナリオの構成要素
Who だれが 登場人物・関係者・NPC
When いつ 時代・背景・時系列のチャート表
Where どこで 舞台・場所
What なにを 出来事・事件・事件の内容
Why なぜ 経緯・理由・PC / NPCの行動原理
How どのように 展開・結末・能力の使われ方

これらは好きな順番で作りたいものを基準に決めていって問題ないですが、1つだけ気をつけたほうが良いことがあります。それは自分が「作れる素材」で絞り込みしたほうが良い、ということです。

例えばアクションゲームの舞台を「学校」や「都会の街」「近未来SF風の建物」など人工物の多い入り組んだ場所にすると絵が描けない場合、素材を作るのに苦労します。

以下は「アクションゲーム」「素材」「背景」でGoogle検索した結果ですが、草原」「」「荒野」など簡素な自然物の素材が多いことがわかります。

■「アクションゲーム」「素材」「背景」でGoogle検索した結果

 

他にもダンジョン」「洞窟」「迷宮」は素材が多く、ゲームの舞台として扱いやすくておすすめです。

■「アクションゲーム」「素材」「ダンジョン」でGoogle検索した結果

このあたりはシナリオから頑張って決めていくよりも、「実際にゲームを作って、それに合う舞台を決める」とした方が楽なのではないかと思います。

以下、背景素材をフリー素材として提供されている方のリンクを貼っておきます。

2. プロットを作る

プロットとは、ストーリーの大まかな流れをつかむためのもので、発生する出来事や結末を並べただけのものです。以下は例としてホラー風の脱出ゲームのプロットです。

No 出来事 検討事項
1 主人公と友達は何者かによって
深夜の学校の教室に閉じ込められる
なぜ二人は深夜の学校にいる?
2 この学校に取り付いた悪霊が
閉じ込めていたことがわかる
悪霊が存在する理由は?
3 友達は命がけで霊的なアイテムを手に入れるが、
それを主人公に渡した後に呪い殺される
アイテムとは?
なぜ命がけで?
どういう状況?
どうやって主人公に渡した?
4 アイテムを使って悪霊を退治し、
主人公は学校から脱出する
なぜ悪霊を倒せた?
脱出後どうなった?
出来事を思いつくままに書いていきます。書いていくうちに疑問点が生まれますが、その場では答えが思いつかなくても、とりあえず「検討事項」の項目に入れておいて後で考えれば良いです

前の段階で考えたアイデアや設定をどんどん詰め込んでいきます。多少の矛盾は後で調整しましょう。

それと例では起承転結を意識した時系列の順で出来事を書いていきましたが、順番もバラバラで良いです。ただ最終的にはストーリーの最初から最後までつながるようにしていきます。

そして登場人物の一覧を作って、名前や性格、役割や特技や悩み、他のキャラとの関係性などをまとめていきます。

名前 役割 性格 その他
四谷 こずえ 主人公 おとなしい・冷静
優柔不断
霊感がある。
言いたいことが
はっきりと言えない
自分に悩んでいる
岸寺 けいこ 主人公の友達 人見知りしない
怖がり・感情的
 
警備員さん 悪霊に真っ先に
殺される
→後に悪霊の手先に
オカルトは
全く信じない
 
悪霊 ラスボス    
教室の霊 協力者。
主人公に悪霊の弱点を
教えてくれる
   

キャラの性格を決めるときに便利な「性格類語辞典」の紹介

キャラの性格を決めるときには「性格類語辞典」という本がとても役に立っておすすめです。

例えば、キャラクターにポジティブな性格を持たせたい場合、「性格類語辞典 ポジティブ編」では性格を以下のように分類しています。

  • 愛国心が強い、愛情深い、遊び心がある、粋、ウィットに富む、影響力が強い、おおらか、おだやか、大人っぽい、お人好し、温和、外向的、賢い、型破り、活発、感覚的、勘が鋭い、感謝の心がある、感傷的、寛容気さく、几帳面、きちんとしている、奇抜、客観的、共感力が高い、協調性が高い、協力的、規律正しい、勤勉、クリエイティブ、気高い、決断力がある、謙虚、健全、賢明、倹約家、好奇心旺盛、公明正大、効率的、古風、幸せ、自信家、自然派、従順、柔軟、純真、正直、情熱的、上品、如才ない、思慮深い、芯が強い、慎重、スピリチュアル、正義感が強い、責任感が強い、積極的、世話好き、想像豊か、素朴、大胆、知的、注意深い、忠実、哲学的、天才肌、天真爛漫、独立独歩、内向的、情け深い、忍耐強い、熱血、熱心、粘り強い、派手、控えめ、秘密を守る、ひょうきん、太っ腹、プロフェッショナル、分析家、勉強家、冒険好き、奔放、魅力的、面倒見がいい、もてなし上手、優しい、野心家、勇敢、雄弁、誘惑的、用心深い、楽観的、理想家、利他的、臨機応変、礼儀正しい

ここから例えば「決断力がある」という性格を選ぶと、以下の説明があります。

「決断力がある」性格の分類 特徴
この性格になった要因 幼少期から責任のある仕事を任されていた
行動や態度 正しい知識や技能を持っており、
それに基づいた決断をする
この性格が表すセリフの例 「迷う必要などない。さっさと決めよう」
似た性格 決意、自信、短気、立腹、冷笑
ポジティブな面 自分の決断を信頼しており、自信家である。
行動を決めたら揺らがず責任感があり、
リーダーに向いている
ネガティブな面 自分の決断に固執しやすく考えを変えにくい。
間違いを認められない。
感情的で不合理な決断を嫌う傾向がある
衝突しやすい性格
(嫌いな性格)
防衛的、おおらか、気まぐれ、愚か、
忘れっぽい、だまされやすい、優柔不断、
無責任、怠け者、心配性
この性格を面白くするシナリオの例 優柔不断なパートナーと一緒に行動し、
決断を下さなければいけない
この性格のキャラが登場する作品例 映画『スタートレック』の
ジェームズ・T・カーク船長

上記の表は本の内容を簡単にまとめたものですが、実際はより詳しく書かれており、性格が持つ様々な情報を俯瞰・整理することができます。



出典:性格類語辞典 ポジティブ編 (出典:フィルムアート社)

3. シーンに合わせてセリフや情景描写、心の声を表現するテキストを書く

プロットで出来事の流れや関連する疑問点や矛盾を解決できたら、シーンやキャラのセリフなどのテキストを書いていきます。ここからは実際にユーザーがゲームプレイで読む文章となります。

プロットは書けてもここで手が止まってしまう場合は、以下のことを意識すると良いです。

  • 良い文章良いセリフを書こうとしない。無駄の多い冗長な会話や説明的な会話でも良いから、とにかく書き始めてみる
  • 書いてみて違和感があっても見直しはせずに、まずはシーンの終わりまで書き切る
  • どうしても書けない場合は、登場人物と雑談(シナリオに関係ない話でも何でも)をしてみる

無駄のないセリフや情景描写を考えるのは次の段階で良いので、まずは各シーンでのキャラの行動やセリフをざっくりで良いので決めていく、という作業をしていきます。

テキストを書くときの注意点

テキストを書くときの心構えとしては「読み手の負担を減らし、わかりやすい文章を心がける」ということです。細かいルールは各自の考え方によりますし、すべてを書き出すことは難しいですが、大まかには以下のルールがあります。

  • 三点リーダーは「1つ」でも良い:小説では三点リーダーを「偶数」にしなければならないルールがありますが、ゲームの場合は表示する文字数を少なくするのが良いので1つでも問題ありません
  • 感嘆符『?』疑問符『!』の後ろには空白を入れる:これは小説と同じで、空白を入れたほうが良いです
  • 適切な改行を入れて読みやすくする:行頭に記号文字が入ったりしないようにしたり、できる限り文節で改行が入るようにテキストを調整します
  • 心の声は主人公のみにする:心の声は一人称視点の描写方法ですが、主人公以外の心の声があると誰のセリフかわかりにくくなるので避けたほうが良いです。例外として、シーンが切り替わって主人公以外の視点になった場合には主人公以外の心の声を表現できます

ゲームジャンルごとのテキスト量について

テキストを書くときの注意点としてはゲームジャンルによってテキストで描写する情報や分量が異なるということです。

※テキストがうまく書けない場合、このルールは無視して良いです。書き方に制約を入れると手が進まなくなりやすいためです

 

ゲームジャンル 状況説明 セリフ
Action game (アクションゲーム) ほぼ不要 重要なセリフのみ。
セリフは短くまとめる
Adventure game (アドベンチャーゲーム) 必要に応じて書く 長くても良いが
できるだけ短くまとめる
Dating sim (恋愛ゲーム) 少なめ 主要なキャラとの会話は
長めに用意する
Visual novel (ノベルゲーム) 詳細に描く 大量に書く。
心の声もしっかり書く
アクションゲームのテキストは、ゲームプレイを阻害しないように「これを説明しないと理解できない」部分だけにします。セリフもできるだけ短縮して、冗長なセリフを極限まで圧縮する必要があります。極端な例として、アクションゲームのテキストは、ゲーム開始時の「オープニング」とゲームクリア時の「エンディング」のみで問題ありません

それに対してノベルゲームは、文章で繊細な情景描写を行い、茶番を含め冗長とも言えるほどのセリフ量でキャラクターへの感情移入を促すようにします

ゲームは映像や演出でテキストを省略できる

また、どのジャンルで作るとしても「背景画像」や「演出」「サウンド」などで省略可能なテキストは数多くあります。例えば、シーンの場面が「学校」だとして、背景画像が学校であれば情景描写は減らすことができます。他にも人が殴られるシーンでは、「殴られるSE」を再生して「痛そうな顔をした立ち絵」が揺れたりすれば、殴るアクションをテキストで描写せず「ぐはぁっ!」というセリフだけで説明できます。

4. ゲームプレイをしながらテキストを調整する

テキストが作成したら、ゲームに組み込んでゲームプレイしながら動作を確認していきます。実際にゲームプレイでのテキストを読むと様々な違和感が見つかります。

 

  • 読みにくいテキストになっている。文法が間違っている
  • 同じようなセリフの言い回しを繰り返している
  • 説明的なセリフになっている
  • 会話のテンポが悪い
  • 説明不足になっている
  • テキストの分量が冗長になっている

キャラとの会話が多いゲームの場合、セリフの内容をここで繰り返し調整するのも1つの方法です。個人的には、セリフに合わせて立ち絵や表情が変化すると、実際にキャラと会話している気がしてきて調整がやりやすいので、キャラクターの感情がわかるような表情差分を作っておくことをおすすめします。

また、先程テキスト量の注意点を説明しましたが、最終的にはゲームプレイに違和感がなければ分量は自由だと思います。

表情差分のパターンについて

キャラクターとの会話が少ない〜中程度であれば基本の「6つ」のパターンがあればOKです。

  • 通常(すまし顔)
  • 微笑み(少しうれしい)
  • 笑顔(とてもうれしい。たいてい目は閉じている)
  • 怒り
  • 悲しみ
  • 驚く

さらにゲームジャンルによって増やすことができます。

  • 何かを期待する(わくわく)
  • 恍惚、テンションMAX(笑顔のパワーアップ版)
  • 安心
  • 緊張・不安・心配
  • 激怒(怒りのパワーアップ版)
  • 動揺・ショック・衝撃
  • 恐れ(サスペンス・ホラーゲーム向け)
  • 嫌悪(サスペンス・ホラーゲーム向け)
  • 笑顔(目を開いた状態)
  • 寝ぼけ・眠り(眠るシーン、寝起きシーンがある場合)
  • ウィンク(キャラによる)
  • キス顔(恋愛ゲーム向け)
  • ぽやぽや(ぼんやり表現。キャラによる)
  • デフォルメ表現(>< など)

個人的には、基本パターン6つにそれぞれ2つのバリエーションを持たせ、+8の特殊な表情で、合計20パターンくらい用意すると表情には困らないのでは、と思っています。

表情差分の作り方

なお表情差分は「」「まゆげ」「」を変えるだけで多くのパターンを作り出せます

出典:立ち絵素材 わたおきば

こちらは「立ち絵素材 わたおきば」様からお借りした画像で、多彩な表情が8パターン用意されていますがパーツはいくつか使い回されています

このように表情差分は1から作り直す必要がなく、パーツの組み合わせで別の表情を作れるので、それなりに絵が描ければ量産は容易です。

表情に対するパーツの変化はおおよそ以下のとおりです。

表情 眉毛
通常 ニュートラ ニュートラ ニュートラ
微笑み ニュートラ ニュートラ 口角が上がる
驚く 縦に少し広がる 少し上に上がる 縦に長くなる
緊張・不安 目尻が中央に寄る 逆ハの字 閉じる
怒り ニュートラ 逆ハの字
(傾斜強め)
釣り上がる
悲しみ ハの字
目線が外れる
ハの字 力が緩む
笑顔 にっこり 少し上に上がる 口角が上がる
安心 目尻が下がる ニュートラ 力が緩む

必ずこのようになるとは限りませんが、表情の目安とすると良いと思います。

ストーリー作りの4ステップ

ここまではゲームシナリオを完成させるまでの流れを書きましたが、ここからはストーリー作りの方法についてより詳しく書いていきます。

■STEP 1. テーマ・コンセプトを決める

ゲームとストーリーを通してプレイヤーに感じてほしいことを決めます。

■STEP 2. 主要ジャンルを決める

ゲームシステムと相性の良いジャンルを選びます。

■STEP 3. キャラクター設定を決める

ストーリーを動かす主人公を決め、主人公をサポートしたり対立するキャラクターを決めます。

■STEP 4. ストーリー構成を決定する

序盤から中盤、そしてクライマックスを迎え、どのような結末となるかの構成を決めます。

1. テーマ・コンセプトを決める

ゲームとストーリーを通してプレイヤーに感じてほしいことを決めます。

  • シミュレーター:人見知りの主人公が、様々な人生を仮想体験して、他人に対する理解を深める
  • ホラーゲーム:人間の弱さと醜さが怪物を生み出してしまう恐怖を知る
  • 探索型:記憶喪失の少女が無人の廃墟を探索して、サイコメトリー能力で記憶を取り戻す旅をする
  • チャート型ノベルゲーム:時間巻き戻し能力を得た主人公が、バッドエンドを回避して真実を知る
  • 脱出ゲーム:過度な恋愛感情でモンスター化して暴走する恋人から逃げる
  • サバイバルアクション:パートナーを守りつつ命がけのサバイバルをして二人(友情・親子)の絆を深める
  • 探索型:ポストアポカリプス(人類が滅亡した世界)で自分たちが存在する意味を求めて廃墟を探索する
  • 探偵・推理ゲーム:デスゲームに勝ち残るために推理力で真の犯人の正体・真相を突き止める
  • 探索アクションアウトローな世界で生き残るために戦ったり組織間の抗争と仲間との絆を描く

ゲームシナリオの場合ゲームジャンル」とセットで考えることが大切です。というのもシナリオありきで、ゲームジャンルを後付けで考えるのは少し難易度が高いためです。

2. 主要ジャンルを決める

ゲームシステムと相性の良いジャンルを選びます。前のシナリオのテーマ・コンセプト段階である程度ジャンルが決まっていれば、それに合わせて肉付けをしていきます。

例えば探索系のゲームであれば、「廃墟」「洞窟」「不気味な洋館」「絶海の孤島」などを舞台にすると相性が良いです。ホラーゲームであれば、敵の扱いを「倒せないので逃げるしかない(=脱出ゲーム)」とするか「強いけれど倒せないこともない(=サバイバルホラー)」とするかを決めます。

3. キャラクター設定を決める

ストーリーを動かす主人公を決め、主人公をサポートしたり対立するキャラクターを決めます。

キャラクター作りでは、そのキャラクターの詳細な設定を決めていきます。

  • 名前、役割、年齢、性別、身長、体重、体格、服装や小物、生物学的な分類、家族構成、出身地、職業、経歴、口癖、性格、長所と短所、好きなものと嫌いなもの、趣味、特技、好きな異性のタイプ、尊敬する人、夢、欲求、学力、信仰心、思想、過去のトラウマコンプレックス弱点・欠点信念

特に重要なのは、ストーリー上でキャラクターの行動の動機づけとなる項目や、自身の成長に関連する項目です。

キャラクターは何らかの満たされない「欲求」や達成が困難な「信念」を抱えていますそれを阻害するのが「過去のトラウマ」であったり「コンプレックス」や「弱点・欠点です。これらの問題を解決したり、困難を乗り越えるのがストーリーの目的となります。

なお、主人公が抱えている問題は、対立する人物(ライバル)が別の形で歪んだ形で解決しているとストーリーに深みが得られます。

例えば「嫉妬」がテーマにある場合、嫉妬のポジティブな側面ネガティブな側面とその要因を考えます。

ポジティブ要素 粘り強さがある。行動力がある。
ネガティブ要素 独占欲が強い。他人をコントロールしたい。自己中心的。
自己評価が低い。ひとりになるのが怖い。失うことが怖い。
ライバルを妨害する。不安や憎しみの感情。対抗心が強い
嫉妬の要因 ・過去に悲痛な裏切りにあった
・不安がある
・何かを失うことを恐れている
共依存している
・優越的、競争的でなければならない

この分析を元にすると、ライバルとなるキャラは「何らかの支配者・権力者」であり「失うことが怖い」という弱さを隠すために、自分に歯向かうものを妬んで排除する行動をします。またそのライバルの過去には「過度な競争」にさらされ、もしくは「ひどい裏切りにあった」ことで苦痛を避けるための自己防衛として現在の性格が構築された、と読み解くこともできます。

というようにライバルは主人公の「」の部分を描くようにするのが良いです。

なおこの情報は「性格類語辞典 ネガティブ編」の「嫉妬深い」という分類を参考にしました。

キャラを立たせる2つの方法

ストーリーとは別に、キャラを魅力的にする(キャラを立たせる)方法は2つ存在します。

  • 1. 個性を極端にする
  • 2. ギャップ

例えば大食いのキャラにする場合、たくさん食べるという程度では普通なので、天井まで届くようなパンケーキタワーをぺろりと平らげる、など極端な個性をもたせます。

さらにゲームの場合は、ゲームシステムや攻略と結びつくような個性がおすすめです。例えばメタルギアソリッドの「リボルバー・オセロット」は天才的な拳銃使いですが、拳銃が好きで特にリロードの瞬間がたまらない、という少し特殊な設定があります。これによりリロードの瞬間を攻撃できる攻略が生まれています。

次に「ギャップ」です。例えば見た目が凶悪な不良高校生が捨て猫の世話をしたり、ツンツンした女の子がさり気なく見せる好意だったりするアレです。

ただゲームの場合は、恋愛ゲームでない限り単なるフレーバーではなく、ゲームシステムと連動させる必要があります。よくあるのがプレイヤーが使用できる特殊能力と相反する性格や特徴、欠点をもたせることです。

  • 記憶を読み取る能力を使うゲーム:記憶力が悪い
  • 時間操作能力を持つ:時間にルーズで遅刻しがち
  • 予知能力を持つ:目が見えない
  • 巨大な悪魔を使役する:本人は非力で身体も小さい

4. ストーリー構成を決定する

序盤から中盤、そしてクライマックスを迎え、どのような結末となるかの構成を決めます。

構成として有名なのが「起承転結」と「三幕構成」です。

起承転結とは

起承転結とは以下の構造を持つストーリーのことです。

そしてストーリーの進行に対するストーリーの盛り上がりを表現するグラフは以下のとおりです。

  • 「起」は手短に終わらせて「承」に進み、何らかの出来事を起こして飽きさせないようにする
  • 「承」はネガティブなことも起きるが、ストーリーが前に進んでいる印象を与える
  • 「転」のクライマックスはピークがすぎたら長引かせずに「結」に進む
  • 「結」でもストーリーの終わりの余韻を軽く感じられる程度の長さにする

大切なのは「転」のピークがどこにあるかを判断することです。これを間違えてしますと「結」までの流れが間延びしたり、途中で飽きてしまう危険があります。

よくやりがちなのが、ストーリーのピークとなるラスボス撃破後、ラスボスが何度も復活したり、別のトラブルが何度も起きたり、キャラクター同士の会話が長引きすぎてしまうようなケースです。

どうしても入れたい演出や会話が多くなってしまうと、「捨てるのがもったいない」とこのようなストーリーになりがちなので、取捨選択が重要となります。

三幕構成とは

三幕構成とは以下の構造を持つストーリー構成です。

単に「起承転結」の「承・転」を第二幕にまとめたものに見えますが、第二幕中盤の「ミッドポイント」という部分で主人公は何か大きな決断をすることでストーリーが大きく動く、というところに違いがあります。

ミッドポイントの考えを取り入れると、シナリオがキレイに引き締まるので、意識して取り入れることをオススメします。

ブレイク・スナイダー・ビート・シート (BS2)

ブレイク・スナイダー・ビート・シート (BS2) とは、三幕構成をより細かい単位に分けた構成です。

第1幕
  1. オープニング・イメージ:映画の第一印象を見せる。主人公の出発点
  2. テーマの提示:論点や主張の提示
  3. セットアップ:登場人物の紹介
  4. きっかけ:人生が変わる瞬間
  5. 悩みのとき:何かしらの疑問を抱く
  6. 第1ターニング・ポイント:何か大きな決心をする
第2幕
  1. サブプロット: 場面転換や息抜き
  2. お楽しみ:お約束を果たす場面
  3. ミッド・ポイント:主人公が絶好調、または絶不調となる
  4. 迫りくる悪い奴ら:悪役が総攻撃をしてくる
  5. すべてを失って:失意のどん底で希望の欠片もなくなる
  6. 心の暗闇:深く考え心の奥底を探る
  7. 第2ターニング・ポイント:解決策が見つかる
第3幕
  1. フィナーレ:悪い奴らが一掃される
  2. ファイナル・イメージ:本物の変化が起きる

ただこれを忠実に埋めていく…、というやり方よりもプロットを先に作り、ある程度完成した時点で BS2 を見て必要な部分を追加したり削ったりする、という使い方が良いと思います。

どうしてもシナリオが書けない場合

シナリオライターの助けを借りる

どうしてもテキストが書けなくて行き詰まってしまう場合には、シナリオライターさんの力を借りるのも1つの方法です。

 

例えば、ココナラでは「ゲームシナリオの仕事を募集されている方」がいらっしゃいます。例えば、サービスの検索欄から「ゲームシナリオ」で検索することで、何人か見つかると思います。

ココナラにて「ゲームシナリオ」で検索

もしプロットまでできていれば、それを渡すことでシナリオを作っていただけます。かかる費用としては、小規模なゲームでおおよそ 2〜3万円ほどですが、一人で頑張って作り続けて完成しないことは避けられて、どのように形にしていくのかがわかるので勉強にもなっておすすめです。

参考

 

今回の記事を書くにあたって以下の本を参考にしました。この本では「ストーリーの作り方」「プロットの書き方」などがより詳しく書かれているのでおすすめです。

それと、ノベルゲームを2つほと作った方が、その製作工程を事細かに説明した本があります。ノベルゲームを作りたい方は参考になるかもしれません。

 

「恐怖の哲学 ホラーで人間を読む」に学ぶホラーの作り方

「恐怖の哲学 ホラーで人間を読む」という本を読んだのですが、ホラーゲームを作るのに役立ちそうな知識が詰まっていたので、個人的にまとめてみました

まとめといいつつも、独自の解釈を入れている部分もありますので、興味のある方はこの本を実際に読んでみることをおすすめします。

1. 恐怖の「3つ」の要素

恐怖はおおよそ3つの要素からできている。

1. 自分に害をなす可能性をもつ対象を認知すること

2. いわゆる恐怖感、怖さを感じているときのあの感じ

3. 危害低減行動を促すシグナル

引用:第1章 恐怖の原型としての「アラコワイキャー体験」p23

恐怖を生み出す体験を作り出すには、3つの要素が必要としています。

  1. 怖いと思う対象を認知すること(怖いものを怖いと認識できる)
  2. それが怖いものであることを実感する(恐怖感がどんどん高まる)
  3. 怖いものに対して思わず(怖さを減らそうとする)具体的なリアクションをとってしまう

例えば、①ひと目見て「怖いもの」と認識できなければ、それは恐怖の対象にはなりにくく、②見た目は怖いけど、怖いと思わなければ恐怖の対象ではなく、③怖いけれどリアクションが淡白な場合は、あまり怖さを感じていない(ように感じさせる)可能性があります。

ということで、怖さを作り出すときに、これら3つの要素を満たしているかどうかをチェックすることで、それが本当に怖いのかどうかを検証する指針になるのでは……と思いました。

2. 怖くないものを恐怖と錯覚させる方法

恐怖の認知には「志向性」がある

哲学用語を無理やり使うなら、恐怖は志向性をもつ、ということになる。恐怖には向かう先がある、と言ってもよいし、恐怖はつねに何かについての恐怖だと言ってもよい。

(中略)

志向性をもつ、ということは間違いがありうるということでもある。

引用:第1章 恐怖の原型としての「アラコワイキャー体験」p30, p32

「志向性」というのは、人の意識には対象が存在する、ということです。そして「恐怖」というやや抽象的な対象にはその感情を生み出す複数の背景が存在するため、本当は怖くないものに対しても「恐怖」を持つことがある……としています。

具体的には、

  • 「小さな木」「カカシ」「人形」などを人と勘違いする
  • 「鏡に映った自分」を幽霊と誤認する
  • 「古い家のキィキィと軋む音」を、悲鳴や叫び声と聞き間違える

こういった「怖いものと勘違いさせる」系の演出は、驚かせるためのフェイク・前フリとして活用できるメリットがあるのではないか、と思いました。

対象を認知できない映像を見せて怖さを感じさせる方法

エクソシスト』が鳴り物入りで封切られたとき、私は中学生だった。アメリカでは観ていたおばあさんがショック死したとか、そういう噂に十分さらされてから、観客は観に行くわけだ。そうすると、怖さ刺激に対して注意が鋭敏になっている。あるいは注意を研ぎ澄まそうとする。これがホラーを観るための「構え」になる。そうすると、ちょっとした刺激で怖がる人が出てくる。

私が観に行ったとき、このような体験があった。画面が切り替わった際に、母親役のエレン・バーステインのスカーフをかぶった後頭部が大写しになった。このショットで、会場のあちこちから悲鳴があがった。突然、映像が切り替わるので、一瞬何が写っているのかわからなくなる。観客はそれを、ホラー映画というごっこ遊びの規則に則って「何か恐ろしいもの」と見たわけだ。

引用:第6章 なぜわれわれは存在しないとわかっているものを怖がることができるのか? p281

うまく段取りができれば、実際には怖くないのに、ホラー映画の文法上「間違って怖く感じてしまう」ということを演出できる、ということです

  1. 事前に「怖いものが出るぞ」という期待感を観客に植え付ける
  2. 何かよくわからない映像を突如見せる

という手順を踏むことで、怖くないものを怖く見せる…、というフェイクを作ることができそうです。

何だかよくわからない映像」は、例のように「不自然なクローズアップ」や「ピントのずれた(ぼやけた)映像」など、対象をうまくごまかす色々な映像方法がありそうです。

3. 恐怖が引き起こす「6つ」の行動

人が恐怖を感じたときの行動として、「6つ」のパターンがあるとしています。

No 種別 リアクション 理由
1 凍結 動きがピタっと止まる 状況・対象を注意深く観察するため
2 逃避 対象から離れるように
逃げ出す
脅威から距離を取ることで
安全を確保するため
3 攻撃 対象に危害を加える 敵を無力化する、
または敵を逃走させるため
4 服従/宥め 対価を支払って
見逃してもらう
敵に従うことで相手からの攻撃を抑制する。
または敵を落ち着かせて攻撃性を減らす
(危害を加えないことを約束する、など)
5 おびえ 死んだふりをする 捕食者は獲物の動きに反応して
危害を加えることが多いため、
獲物が動かなくなると興味を失う。
あるいは死んだと思うと油断するので、
逃げるチャンスが生まれる
6 気絶 気を失う。
腰を抜かして
動けなくなる
自分が無力であるとアピールすることで、
相手は攻撃を止める可能性がある
恐怖が引き起こす「6つ」の行動

恐怖演出に対して、登場人物がどのようにリアクションするか、これらのパターンを意識して組み合わせることで、恐怖のリアクションがワンパターンになるのを避けられそうです。

性格 リアクション
人に威張っていて性格が悪い 自分だけが助かる方法で即座に逃走する (2. 逃避)
味方を差し出してでも自分が助かろうとする(4. 服従)
怖いものが死ぬほど苦手 腰が抜けて動かなくなる (5. おびえ)
真っ先に気絶する(6. 気絶)
冷静で頭の良いキャラ 動きを止めて状況を観察する。敵に見つからないようにする。
安全な逃げ場を探す(1. 凍結)
血の気が多いキャラ その場にある武器で恐怖の対象を攻撃する(3. 攻撃)
キャラクターごとのリアクション例

もちろん、キャラは1つのリアクションだけするのではなく、複数のパターンを組み合わせても良いです。

4. 「恐怖の表情」が怖さを伝えるもっとも効果的な演出

ところで、登場人物が怖がっていることを観客に知らせるもう1つの方法があり、それは恐怖の最後の特徴と関係している。つまり、登場人物が恐怖の表情を浮かべることだ。実はこれが最も雄弁なのである

(中略)

恐怖の場合、その特徴はさらに顕著だ。眉を上げ、目を見開くと同時に眉間を寄せ、口を横にひきつらせる、あるいは歪める。要するに、ムンク「叫び」の顔を真似する

引用:第1章 恐怖の原型としての「アラコワイキャー体験」p70, p71

これを読んだときに真っ先に思いついたのが「クロックタワー」でシザーマンが初登場したときの演出です。

クロックタワー任天堂 Virtual Console のページより引用

浴室のカーテンから怪物である「シザーマン」が登場するシーンなのですが、ここで最も怖いのが「左下」に表示される主人公「ジェニファー」のリアクションです。

カーテンを開くと中には友人の「ローザ」が殺害され吊るされている死体があるのですが、浴槽の中から大きなハサミが突如出現し、シザーマンが姿を見せます。それに対しジェニファーは、恐怖の表情を浮かべ目のアップになる演出が入るのですが、正直なところシザーマンの登場よりもそのジェニファーのリアクションの方が怖い、との評判です。

目のアップはホラーでは定番の演出なので、それをうまく使っている良い例ですね。また恐怖の表情を見せられるのが一番怖い、ということを改めて実感しました。

5. ホラーをギャグにしない方法

「恐怖」を感じさせるには事前の準備が必要

ホラーを成立させるためには恐怖の対象を見せる、「リアクション」で恐怖の表情を見せる、というのが大切なのですが、やりすぎると「ギャグ」になります。

先程のクロックタワーの恐怖シーンの画像も、クロックタワーを遊んだことがない人には「変な画像=ギャグ」に見えたかもしれません

クロックタワーを遊んだ人であれば、このシーンに入る前に

  1. この不気味な館では何か奇妙なことが行われていた(気持ち悪い痕跡がいくつかある)
  2. そして、どうも異形の生物がこの屋敷にいて、やばいことをしている伏線がチラチラ見つかる
  3. 浴室に入ると、シャワーが使われていたのか湯気があり視界が悪く、浴槽のカーテンを開くと、そこには殺されたローザが……

といった、怖がらせるための綿密な伏線が用意されており、それらがシザーマンの登場で恐怖の頂点に達するように計算されて構成されています。

なので、それらの前提を理解していない状態で、怖いシーンを見せられても「怖い」とは思いにくいです。

ということで、怖さを爆発させるシーンのインパクトも重要ですが、その恐怖シーンを見せる前の段取りもとても重要なのではないかと思っています。

お笑いでも、面白いコントをする方は、オチに持っていくまでの状況説明がわかりやすいです。それと同じことがホラーにも言えるのかもしれません。

また、リアクションが大げさすぎる場合も「怖い」というよりも「ギャグ」になってしまいます

不適切な対象に不適切に強い恐怖を抱く人物は、はたから見るとむしろ滑稽になってしまうからかもしれない。

(中略)

登場人物が観客以上に怖がっていては、しらけるばかりだ

引用:第3章 これが恐怖のモデルだ! p131

なので、リアクションをうまくコントロールすることが「怖い」ホラーを作るためには必要なのかもしれません。

「恐怖」のリアクションをあえてしない(隠す)ことで「恐怖」を演出する

怖いものが出る」→「悲鳴を上げる」というパターン繰り返しだとだんだん見ている方が慣れて、怖くなくなります

そこで、あえて「怖がらない」キャラを登場させる方法があります。

例えば、建物の外には怪物が大量に徘徊しているのですが、登場人物にはそれを知らせず、周りの絶望的な状況を観客にのみ説明します。

「もし登場人物がこれを知ったらどうなるのだろう……?」

と想像させることで「恐怖」を感じさせる方法となるようです。

どちらかといえば、サスペンス的な手法と思いますが、場合によってはこの方法も有効となりそうです。

登場人物は無邪気で怖がらず、観客が怖いと想像することをさせる

赤ん坊が暖炉の中に手を突っ込もうになっているのを見たとき、われわれは驚愕と恐怖を感じる

(中略)

正確には、赤ん坊が暖炉に対して感じるべき恐れを代わりに感じている、と言うのが良いだろう

引用:第6章 なぜわれわれは存在しないとわかっているものを怖がることができるのか? p289

観客に「ここは製作者が怖がらせようとしているのだな」と思われてしまうと、興ざめしてしまいます。それを巧妙に隠す手法の1つとして、無邪気に怖いこと(観客がやってほしくないこと)をさせる、という方法があります。

これもサスペンス的な手法で「その行動の結果がある程度見えている」からこその怖さではないかと思います。

6. ホラー作品の落とし所

うずまき (伊藤潤二)』は、最初はホラーとして始まるが、次第にホラーとは呼べない何かになっていく。街全体がうずまきに支配されることによって、舞台じたいがノーマルな世界ではなくなってしまうからだ。

(中略)

『うずまき』の後半は怪奇譚であるがホラーではない。

引用:第4章 まずは「ホラー」を定義しちゃおう p168

ホラー作品は最初から最後までホラー要素だけで突き進むのは難しいのかな、と個人的には思っています。

引用のとおり、うずまきは前半はホラー、後半は不思議な話、というように少し変化を加えています。

他にもミステリーにする、ドキュメンタリーにする、主人公の成長物語にする、などなど別ジャンルに切り替えることで、ホラーとして良い着地点を見つけられそうな気がしています。(ライトなホラー好きとしては)

7. 怖い怪物を作る方法

「気持ち悪い」を入れることで恐怖を増大させる

怪物はどこか「気持ち悪く」なければならない。『エイリアン』の怪物は

(中略)

おぞましく、嫌悪すべきものにするために、この怪物はベトベトいることになっている。怪物はつねに透明な腐食性の粘液を滴らせている。恐ろしいというだけではなく、それ以前にとにかく近づきたくない、触りたくないような造形にする必要がある

引用:第4章 まずは「ホラー」を定義しちゃおう p174

エイリアンでの怪物は「凶暴」で「強く」「気持ち悪い」生物として描かれています。


 

よく闇を背負ったアンチヒーローとして「凶悪」な見た目で「凶暴」な性格なキャラクターが描かれることがあります。それでもカッコいいヒーローとなる条件は「生理的嫌悪感」が排除されているのではないのかな……と個人的には考えています。

エイリアンはその凶暴さに加えて「気持ち悪さ」が含まれていることで、凶悪な敵としてのイメージが成立しているのではないかと思います。

生理的嫌悪感とは何か……ですが、おおよそ以下のものでしょうか

  • 不潔、腐臭・悪臭がする、汚物、粘液を滴らせている、病原菌を持っていそう
  • 異常な性癖を持っている(ペドフィリアカニバリズムなど)
  • 下品、マナーが悪い

怖い怪物をデザインする場合には、意図的にこれらの嫌悪感をもたらす要素を取り入れた方が良いのかもしれません

「意図不明」なヤツがもっともコワイ

他者の心の理解とは、他者を自分か多数派と同様な「ノーマル」な者として理解することを含んでいる。

そうすると、こうした「他者の心の理解」の通用しない存在は、われわれにとって潜在的な脅威になる

(中略)

『エイリアン』に描かれた出来事より以前の話を描いた続編である『プロメテウス』には、われわれ人間を自分に似せて創造しておきながら、なぜか人類を滅亡させようとする謎の宇宙人が登場する。こいつらが、実に何を考えているのかわからない。なぜわれわれを創ったのかも、消し去ろうとしたのかも最後までわからない。おまけになんだか凶暴だ

引用:第5章 なぜわれわれはかくも多彩なものを怖がることができるのか? p241

人は理解できないものに対して恐怖を覚えます。例えば意見の異なる相手に対して攻撃的になるのも「理解できない」という恐怖感から引き起こされるものなのかもしれません。

ホラーの場合も「なぜ自分に対して危害を加えるのかわからない」ということが恐怖を引き起こします。そしてストーリーが進むと、その場所で過去に起きた出来事が怪物の動機であることが判明し、少しずつ怖さがなくなる…気がしています(怖さに慣れる、というのもありそうですが)

  • いきなり激怒したり泣き出したり、高笑いを始めるなど、感情の流れが読めない
  • 目に入った人間を理由なく殺しまくる殺戮マシーン

ミステリー作品では、たいていの場合は「犯人に被害者を殺す動機がある」という復讐劇であるパターンが多いですが、とにかく怖さを重視する作品では「殺すことを目的とする(特殊な性的趣向など)」という、動機を理解・共感できないものすることがよくある気がします。

特徴的な「パーツ」と「音」を作る

モンスターに特徴的なパーツとそれに付随する音をつけることで、部分的にそれを見せるだけでも怖さが連想できるようになる(例:エルム街の悪夢でバスタブのお湯の中からフレディの右手が出てくる)

作品 モンスター 特徴的なパーツ 特徴的な音
悪魔のいけにえ レザーフェイス チェーンソー 「チュィィィィン」
エルム街の悪夢 フレディ・クルーガー 右手の金属製の鋭い爪 「キーキー」
(爪でガラスをこする)
クロックタワー シザーマン 大きなハサミ 「チャキィィン」

病原体の恐怖を描くには

現代人にとって最も切実な恐怖の対象となる「怪物」は、病原体だろう。

(中略)

ホラーにするには病原体の恐怖を可視化する必要がある。手っ取り早いのは、病原体に感染した人が怪物化することだ。

引用:第5章 なぜわれわれはかくも多彩なものを怖がることができるのか? p197

病原体は身近な恐怖ですが、目に見えないと怖さを認識しづらいです。(最近はコロナウィルスの影響で理解されやすいかもしれません)

フィクションとして恐怖を可視化するには「怪物化」するのが最も楽な方法となります。例えばウィルス感染による「ゾンビ化」です。

8. 「死」よりも「痛み」や「苦しみ」の方が怖い

「痛み」や「苦しみ」を表現する

死を恐れるのは実はとても難しく、抽象的な表象を駆使したかなりの知的努力を要することなのだ。多くの人々が恐れているのは、死ではなく、死にまつわるさまざまな怖いことである。死に至る過程での苦しみや苦しみ、もしかしたら地獄に落ちてそこで味わうかもしれない未来永劫続く苦しみ、残されて困窮した家族の経験するだろう苦しさ、そういったものを想像して恐れている。これらを「死の恐怖」と間違って呼んでいるだけだ

引用:第5章 なぜわれわれはかくも多彩なものを怖がることができるのか? p203

人は死という抽象的な概念よりも、具体的な「痛み」「苦しみ」を恐怖としてイメージしやすい、とのことです。

ではエンタメとしてホラーを描く場合にどうすればよいのかというと、登場人物が傷ついたときにそれを痛がる表現をリアルに表現することかな…と思っています。

引用:バイオハザード (カプコン)

バイオハザードがなぜ怖いのかな…ということを考えてみると、主人公がゾンビにガブガブと噛まれたり、ダメージが蓄積すると足を引きずったりと、「痛み」がリアルに表現されていることかな、と思いました。「痛みで叫ぶ」「泣き叫ぶ」や「激しい流血」「嘔吐」などの表現も「痛み」の表現の一種なのかもしれません。

痛がる表現をリアルにしすぎると「痛さがつらくて見てられない」、あまりにも残虐表現を強烈(人体切断や臓器を露出させるなど)にする「グロすぎる」となってしまうので加減が必要ですが、怖さの1つのベクトルとして、理解しておくのは良いかもしれません。

「自分を失う」苦しみの怖さを描く

エクソシスト』で印象的な場面は、すっかり悪魔と化してしまったかに見える少女が、皮膚に「助けて」という形の発疹を浮かびあがらせることで、内部では悪魔による乗っ取りに少女が抵抗していることが示されている

引用:第5章 なぜわれわれはかくも多彩なものを怖がることができるのか? p245

怖さを表現する方法として、「自分を失う」苦しさを描く方法があります。

これを読んで思い出したのが、漫画「幽遊白書」の巻原定男です。このキャラは相手を食べることで能力を吸収する、という能力を持っているのですが、戸愚呂兄を食べたときには吸収するどころか人格を乗っ取られてしまいました。

以下、そのシーンのセリフです

巻原が戸愚呂兄を食べるシーンの回想

戸愚呂兄「くくくく…。こいつにとって予想外だったのは、オレがゴキブリ以上にしぶといってことだな」

戸愚呂兄「自分が乗っ取られていることに気づいてからの、こいつとの "共同生活" は楽しかったぜ」

戸愚呂兄「こいつの恐怖が…狂っていく様子が手にとるように、わかるのさ」

引用:幽遊白書 第137〜138話 (アニメは84話)

当時、アニメで見たとき、巻原が自分を失うことで苦しんでいる様子がリアルに描かれていて、なんとも言えない恐怖を感じたことを覚えています。(漫画だと数コマなので、アニメ版の方が怖いかもしれません)

9. 「視野を狭く」することでシリアルキラーの視点を表現できる

 

ホラーの怪物は、なぜかマスクを付けていたり、物陰からこっそり覗き見をしていたりと「視野が狭い」ことが多いです。そこで視野を狭くすると犯人の視点のように見せることができます。

例えば以下のような画像があります

これに対して、視野を目の形にして狭くしてみました。

最初の画像よりも犯人(異常者)の視点っぽくなったような気がします。

他にも「覗き見 猫」でGoogle検索すると、かわいいはずの猫が怖いものに見えてきます。

覗き見 猫」でGoogle検索

物陰からチラリと覗く構図はホラーの定番なので、怖さを演出するときに使えそうですね

10. 「密室」の絶望感が怖さを作る

ホラーでは、絶望的状況の典型は逃げ道のなさとして表象される。『悪魔のいけにえ』では、チェンソーをもって迫ってくるレザーフェイス自体も、そりゃ十分に怖いのだが、私を飯田橋のお堀端で嘔吐させるまでに怖がらせたのは、最後まで生き残った学生が何度逃げても引き戻されるところだ。

引用:第5章 なぜわれわれはかくも多彩なものを怖がることができるのか? p237

ホラーの舞台設定として重要なのは、「密室」という外部から隔離された閉鎖空間を作り出す…、ということにあるとしています。

これは脚本術として有名な「SAVE THE CATの法則」にも「家のなかのモンスター」というジャンルを作るための基本ルールとして定義されています。

このジャンルには、2つの構成要素がある。1つはモンスター、もう1つは家だ。さらにモンスターを殺したがっている人間を加えると、どこの国でも誰にでも通じる話、言い換えれば<原始人にだってわかる>ストーリーになる。

(中略)

このジャンルの根底にあるのは「危ない!……奴に食われるな!」という、誰にでもわかる単純で原始的なルールなのである。

(中略)

基本ルールは、いたって単純だ。まず<家>は逃げ場のない空間であること。たとえば海岸沿いの町、宇宙船のなか、恐竜の走り回る未来のディズニーランド、家庭など。そこで犯罪が起き──たいていの原因は人間の貪欲さ(金銭欲や物欲など)にある──その結果モンスターが生まれる。モンスターは罪を犯した奴に復讐しようとし、罪に気づいた人間は大目に見る。

(中略)

悪い例を見てみようジェフ・ダニエルズジョン・グッドマン主演の『アラクノフォビア』(90)だ。モンスターはちっこい毒グモで、正直大して怖くない。だって踏んじゃえば死んじゃうんだから。それに<家>もない! ラクノフォビアの住人は、いやになったら<おあいそ!>と言って、グレイハウンドバスに乗り町を出ればいいのだ

引用:SAVE THE CATの法則 p56

ホラーからは離れますが、SAVE THE CATの法則について、以下の記事でおすすめポイントを書いています。

悪魔のいけにえ』の怖いポイントとしては、絶望的な閉鎖空間が描かれているところです。

  • 鋼鉄製の引き戸が突如開き、凄まじい力で中に引きずり込む。その手際がとてもスピーディで「あ…、これ、逃げるの無理だ」と思わせられる
  • 閉じ込められた部屋は密室。唯一の扉も鋼鉄製で壊したり開くことはできない。部屋内にある拷問器具がこれからの惨劇を想像させる
  • なんとかして、密室から逃げ出したもののレザーフェイスの家族に捕まり、連れ戻される。敵には仲間がいて逃げることが絶望的であることを思い知らされる

この本で扱われたホラー作品

この本で扱われたホラー作品をいくつか抜粋しておきます

おすすめホラームービー10選

この本の著者によるおすすめのホラームービーは以下の10本となるようです

シナリオの書き方を学ぶのにオススメな本

このページでは、ストーリーのあるゲームシナリオを書くために役立つ本を紹介します。

私自身ゲームシナリオを書きたくて、様々な本を買った(30冊くらいは買っていそう…)のですが、そのなかでも自分にとって特に役に立ったものを厳選して紹介したいと思います。

すごくおすすめな本3選

おすすめしたい本はたくさんあるのですが、その中でも最もおすすめしたい本を3つに絞って紹介します。

ちなみにオススメする本はすべて「映画の脚本術」「海外の映画が多く取り上げられている」ため、海外の映画をあまり見ない人にとっては興味が持ちづらい可能性があります。

Amazon Prime」のようなサービスを使うと、一部の映画が無料で見れておすすめです。

SAVE THE CAT の法則(おすすめ度:★★★)

シナリオの書き方がよくわからない…」「書いてみたけれど今ひとつ盛り上がりに欠ける…」とお悩みの方におすすめの本です。
対象としては初心者〜中級者向け、といったところでしょうか。

映画の脚本を作るために必要な知識を学ぶ本ですが、ゲームシナリオも映画と共通する部分が多いので、とても参考になります。

インパクトのあるログラインや主人公の作り方から始まって、「ブレイク・スナイダー・ビート・シート」というある程度の面白さが保証される構成の作り方がとても勉強になります。

第1幕
  1. オープニング・イメージ:映画の第一印象を見せる。主人公の出発点
  2. テーマの提示:論点や主張の提示
  3. セットアップ:登場人物の紹介
  4. きっかけ:人生が変わる瞬間
  5. 悩みのとき:何かしらの疑問を抱く
  6. 第1ターニング・ポイント:何か大きな決心をする
第2幕
  1. サブプロット: 場面転換や息抜き
  2. お楽しみ:お約束を果たす場面
  3. ミッド・ポイント:主人公が絶好調、または絶不調となる
  4. 迫りくる悪い奴ら:悪役が総攻撃をしてくる
  5. すべてを失って:失意のどん底で希望の欠片もなくなる
  6. 心の暗闇:深く考え心の奥底を探る
  7. 第2ターニング・ポイント:解決策が見つかる
第3幕
  1. フィナーレ:悪い奴らが一掃される
  2. ファイナル・イメージ:本物の変化が起きる

三幕構成を理解している前提で話しますが、やはり重要なのは第1幕の終盤に「主人公が大きな決心」を行い、第2幕の終盤に「抱えている問題の解決策が見つかる」ことです。

これがうまく決まると、お話がとても引き締まります。

他の要素も「必ずこの要素を入れなければならない…」というわけではないですが、ある程度意識して取り入れるようにすると、ストーリーの盛り上がりを自然に作りやすくなります。

個人的に好きなのが、第2幕の「5. すべてを失って」です。これは「主人公の死」のメタファーで、本当に死ぬ必要はなく「死んでしまうかと思う」くらいのもので良いです。この経験により、主人公にパラダイム・シフト(誤った考え方を捨てて新しい自分に生まれ変わること)を起こして、その後の問題解決への流れがスムーズとなるような気がしています。

もちろん、「何を重視したいのか」はシナリオ作家の自由ですので、この本から、自分が何を重視して書きたいのか、というものが得られると良いですね

この本で取り上げられている映画

この本で高い頻度で取り上げられている映画をまとめてみました

 

「感情」から書く脚本術(おすすめ度:★★★)

こちらは 「SAVE THE CAT の法則」と比べると、やや高度な内容となっています。

対象者としては「中級者〜上級者向け」といったところでしょうか。

というのも、これを読んで面白い話を書く、面白い話のテンプレが見つかる…というよりは、作ったシナリオが面白いかどうか、話を膨らませるヒントはないのか、という「チェックシートとして使う」「ヒントを得る」といった使い方がメインとなるかと思います。

例えば、魅力的なキャラクターの造形を行うためには、以下の5つの質問に答える必要がある、としています

  1. 主役は誰か?
  2. そのキャラクターは何を求めているのか?
  3. なぜそれを求めているのか?
  4. それを得ることに失敗するとどうなるのか?
  5. それを得ることでどう変わるのか?

これらの質問は、シナリオライターの頭の中に何もない状態、例えば明確な主人公やキャラクターが存在しない場合は、おそらく答えることが難しいと思います。

ですので、実際にキャラクターを作ってみて、それを動かしてみて、行動原理に違和感がある場合に、これらの質問をしてみるとより明確なキャラクターイメージを作り出すことができる、といった補助的な使い方になると思います。

また作品のテーマについても、「テーマをキャラクターの口(セリフ)から説教して伝える」のではなく、「テーマはストーリーの背後で観客の目に見えないところで動いているもの」……という理論(テーマは言葉で説明するものではなく、感じてもらうもの)がわかったところで面白い話が作れるわけではなりません。

やはり実際に作ってみて、「このセリフは説教臭くて、観客の鼻につくな…」という部分を別の方法に置き換えたり、試行錯誤することで身についていくもの、となります。

それとこの本で私の好きなのが「サスペンス」についての話です。サスペンスの定義を厳密に定義するのは難しいですが、個人的には「緊張感を持って観客がストーリーを見ている状況」と考えています。

 

この本では、そのサスペンスを成立させるための3つの条件を提示しています。

 

  1. キャラクターの行く末が気になる
  2. 危機的状況が間近に迫っている(危険を回避できない)
  3. 危機的状況を解決できないかもしれない(危険回避の不確実性)

サスペンスというと「危機的状況の設定」が重要と思われがちですが、結局は「1. キャラクターの行く末が気になる」が存在しない(=キャラクターに感情移入できない)と、「このキャラがどうなろうと、どうでもいい」と考えられて、サスペンスが成立しなくなる…、という考えが、個人的には大きな発見でした。

その他、シナリオを書くためのヒントが数多くあり「シナリオをもっと面白くさせたい」と考えている方にはとてもおすすめな本です。

それと個人的に「羊たちの沈黙」が好きで、この本では、レクター博士クラリスの会話シーンがいかに優れているのかを分析した部分があってとても楽しめた、ということもあります。

興味のある映画が取り上げられている部分があれば、そこから読んでみるのも良いかもしれませんね。

この本で取り上げられている映画

この本で高い頻度で取り上げられている映画をまとめてみました

ストーリーの解剖学(おすすめ度:★★)

こちらは「感情から書く脚本術」をさらに詳細で深堀りした内容の本です。

対象者は「中級者から上級者」向けです。

ページ数が600ページ超えで、シナリオを書くための辞書…といっても過言ではない本です。他の本と同様に「ログライン(この本ではプレミスと定義している)」「構成」「キャラクター」「テーマ」「世界観」「シーン」「ダイアログ(会話)」と多岐にわたる項目について書かれています。

この本だけおすすめ度が低いですが、実は絶版となっていて少し価格がお高めとなっているためです。(Kindleでも変えますが、個人的にこういった教本は、付箋をつけたり、蛍光ペンなどで書き込みを行うと理解がスムーズにできるため、物理媒体の本がおすすめです)

こんな感じで付箋をつけたり書き込んでいます

個人的に勉強になったのが、主人公とライバルの関係性の作り方ですね。例えばこの本では「ダブル・リバース」という手法を提示しています。通常、物語は主人公の成長のみを描くことが多く、ライバルは成長することがない(成長しないということで対立構造が生まれている)のですが、ライバルにも弱点と欠陥を与えて、それを克服する機会を与える、というものです。

ダブル・リバースを取り入れるメリットとしては、二人の成長を描くことで、話の解像度が上がり、それにより観客が得られるメリットが増えることです。また主人公だけの視点ではなく、ライバル側の視点も得ることで、より客観的に物語を俯瞰できることです。

例えば、漫画「タコピーの原罪」では、いじめられっ子のしずかの視点だけではなく、いじめる側のまりなの視点を描くことで、双方が抱えている問題が浮き彫りになり、話に深みを与えていました。

といった感じで、この本ならではの切り口もあるので、興味があればおすすめです。

この本で取り上げられている映画

この本で高い頻度で取り上げられている映画をまとめてみました

その他、この本はホメロス作品やユリシーズ、など文学作品が多く取り上げられています

その他おすすめの本

マンガで夢を叶えるための“おもしろい”の伝え方

個人的に役立ったのですが、シナリオの書き方…という程ではないので、興味があればおすすめです。

主に漫画におけるキャラクターの動かし方に関する話が中心で、何かの前フリ・問いかけに対する「リアクション」を作ることで、キャラクターを魅力的なものにする、という手法が紹介されています。

これで「リアクション」の仕組みを理解した後、この本の作者であるヒロユキ先生の他の漫画を読んでみると、その構造が理解できるので、合わせて読んでみると良いのかと思います。

キャラクターからつくる物語創作再入門

この本はシナリオで最も重要な「キャラクター」の作り方について書かれたものです。

「キャラクターアーク」というキャラクターが物語の中でどのように変化するのが良いのか…、ということを丸々一冊使用して解説しています。

この本ではアークの本質を以下の3ステップと定義しています

  1. 主人公がある状態で登場する
  2. 主人公が物語のなかで何かを学ぶ
  3. 主人公が前より良い状態になる

とてもシンプルなステップですが、これを実現するためにするべきことは多いです。

そこでこの本では、物語の構成の中で、主人公がどのように変化していくべきかを事細かに説明しています。

物語は主人公を成長させること」ということを理解していても、どうやってそれを実現したらよいかわからない…という人におすすめできる本なのではないかと思っています

ノベルゲームのシナリオの書き方(初心者向け)

この記事では、 Visual novel (ノベルゲーム) を作りたいけれどもシナリオがなかなか書けない…という人のために、最初のステップとしてどのようにシナリオを書いていくのが良いのかを書いていきます。

なお注意点として、ここで紹介している方法は、あくまで私がシナリオを作れるようになったものなので、1つの参考例としていただければと思います。

シンプルな構成のストーリーにする

シナリオを書きなれないうちは、シンプルな構成のシナリオやテーマ、ジャンルを選ぶのが良いと思います。
ここで言うシンプルな構成とは以下のものです。

  • 直線的に進む話にする
  • 重厚な世界設定などはなく、シンプルでわかりやすい世界観にする
  • シリアスよりもコメディを選ぶ
  • キャラクター同士が、あまり相互に関わり合わない話にする
  • 状況説明や伏線などがあまり必要でないジャンルにする
  • 結末をハッピーエンドにする

直線的に進む話にする

「直線的に話が進む」というのは、ゲームシステムで言えば「選択肢による分岐」が存在しないものです。

「分岐」はそれが存在する数だけストーリーが必要になりシナリオの分量が増え、いわゆる Multi ending (マルチエンド) の話を作る必要があります。また分岐した話の整合性、分岐した話が十分に魅力的になるかどうかなど、求められる技量がどうしても大きくなりがちです。

ですので、まずは分岐が存在しないシナリオを考えるのが良いです。

もし分岐を入れたい場合は、枝分かれした分岐がすぐに合流するものや、バッドエンドで分岐をすぐに終わらせる、正解の選択肢を選ぶまで先に進めなくくする、あたりが良いのかなと思います。

シンプルな世界観にする

これは作りたいものによりますが、あまり世界設定を作るのが得意でない場合は、「現代もの」か「王道ファンタジー」にして、世界観の説明をあまりしなくても伝わるものが良いと思います。

また舞台を「学校」や「王道ファンタジー」にすると人気のテーマであるため、背景素材が多くて素材を作る手間が削減できる、というメリットもあります。

シリアスよりもコメディを選ぶ

「シリアス」とは、「真面目」「本格的」「重大で深刻な」ということを意味します。

シリアスな話とは、例えば「社会に対する問題提起」「キャラクターの複雑な内面の問題を解決する」「人生で最も大切なものとは?」といったものでしょうか。こういった「シリアスな題材」のお話を作ろうとすると、どうしても世界設定やテーマ、キャラクターに対する深い作り込みが必要となります。そして、そのあたりが浅いとリアリティに欠け、どうしても嘘っぽく見えてしまいます。また、重たいテーマは受け手に「難しそうだな……」と敬遠されやすく、そのあたり親しみを持って楽しんでもらえる工夫が必要……などなど、考えることが多いです。

それに対してコメディであれば、茶番やパロディネタ、テンプレ的な世界観でもある程度は許容されやすく、作りたい話にもよりますがシリアスよりは比較的作りやすいような気がしています。

またコメディ路線を選ぶことによって、例えば世界観が統一されていないイラスト(パロディ・いらすとや・実写を混在させるなど)を含めてしまっても「そういうものなんだな…」と妙に納得されてしまいます。そのため「素材を作成する手間」を大幅に削減することもできます。

ということで、表現したいものにもよりますが、まずはコメディの軽いノリでお話作りをしてみると、気負わずに作れておすすめなのではないかと思います。

キャラクター同士が、あまり相互に関わり合わないものにする

これはキャラクターをどれだけ動かせるかにもよりますが、慣れないうちはプレイヤーが操作する主人公と話をするキャラクター(ヒロインなど)の二人だけの会話で進む話が楽です。

複雑な人間関係を構築する場合には、キャラクターの行動原理をその人数分だけでなく、関わる人に対しても作る必要がありますので、最初はあまり相互に関わらない話にしたほうが良いかと思います。

ただそうなると、ストーリーが二人の関係性のみとなってすぐに話が収束してしまいゲームとしてのボリュームが少なくなる、という問題が発生します。二人だけで話を展開させることもできますが、その場合にはお互いのキャラクターの過去や環境、行動原理などを深堀りして納得が得られる話にする必要があり、結構難易度の高いストーリーとなってしまいます。

なので初心者には二人だけの会話で長い話を作るのは、避けたほうが良いかなと思っています(実際に私もそういった話を作ろうとして挫折したことが多々あります)

この問題の解決方法としては、例えば最初に関係性を持つキャラクターを選び、選択したキャラクターとの会話を進めていく「オムニバス形式」の話にするの良いと思います。

私が最初に作ったノベルゲームがまさにこの「オムニバス形式」で、最初にヒロインを選択してミニゲームをクリアするとそのヒロインとの会話が始まる、というものにしました。

ヒロインの数だけ立ち絵や表情差分を作るのがやや大変ですが、ストーリーの作成難易度が下がるので、最初に作るシナリオとしてはオススメです。

複雑な伏線がなくても楽しめる話にする

複雑な伏線があるジャンルと言えば「ミステリー」ですね。ミステリーを作るためには、ネタばらしをするフェーズで、プレイヤーを驚かせる必要がありますが、それをするには綿密な伏線を用意するなど、とてもロジカルな作り方となります。

それに対して「 Dating sim (恋愛ゲーム) =ラブコメ」なら、キャラクター中心に話を進めていけば、おおよそ破綻せず話を終わらせることができるので比較的作りやすいのかな…と思っています(それが売れるゲームになるのかは別として)

何が作りたいにもよりますが、作りやすいジャンルを選んだほうが良いのかなと思っています。

結末をどのようにするのか

ブコメを作る前提となりますが、ブコメの場合は基本的に「ハッピーエンド」がおすすめです。ハッピーエンドを選ぶ理由としては「わかりやすく」「シンプルな構成」にしやすいためです。

それに対して、バッドエンド系はどうしても楽しめる話にしにくく、そして「意外性が求められる」ので構成が難しくなりがちです。

ただ、恋愛もののハッピーエンドは基本的に「二人が気持ちを確かめて終わり」というものです。初めて作る話としてはそれだけで十分(後述する「キャラのリアクション」を面白くすれば)と思いますが、もし平坦な話にしたくない場合は、二人の間に「障害」を配置して、それを乗り越えるという目標を作ることでメリハリのあるストーリーが作れるようになります。

二人の間に「恋愛の障害」が存在するラブコメにしたい場合は、以下の4つの類型を使用します。

  • 1. 介護系主人公は「傷ついたヒロイン」を助ける。ヒロインは感謝するが、それにより主人公は「何らかの迫害」を受ける。それを見てヒロインは助けてくれた「恩返し」に主人公を逆に助け、二人は結ばれる
  • 2. 犬猿の仲系主人公とヒロインは「犬猿の仲だが、何らかの理由で共同生活を迫られる。その生活の中で主人公とヒロインはお互いを理解するが、ヒロインが「何らかのピンチ」に巻き込まれてしまう。主人公はヒロインを助けることで「自分の正直な気持ち」に気がつき二人は結ばれる
  • 3. スパイ系:「ヒロインは主人公のことを好き」だが、実はヒロインは悪の組織が送り込んだ「刺客だった。ヒロインは恋心と使命との板挟みになるが主人公との愛を選ぶことを決意する。だが気持ちを伝える前に主人公に正体がバレてしまう。すべてを理解した主人公は「悪の親玉を倒し」なんやかんやでヒロインと結ばれる。
  • 4. 罪人系主人公は過去にヒロインをひどく傷つけたため、その罪を背負っていた。主人公は罪滅ぼしのためにヒロインを助け続けることで、逆にヒロインから愛されるようになる。しかし主人公は罪の意識を捨てられずヒロインから離れるが、過去の罪は仕組まれたものだと知り、黒幕の正体を暴く。そしてヒロインと結ばれる。

1は鶴の恩返し」のハッピーエンド版とも言えるストーリーだと思います。例では「迫害」という表現を使いましたが、友達から冷やかされてしまい、それが恥ずかしくて素直になれない、といった軽いものでも良いと思います。ヒロインが人外や地球外生物主人公のところに「居候するもこの類型に近いと思いますが、居候系は 2 や 3 と組み合わされることもよくあります。

2はツンデレ系ヒロインの王道的なストーリーで、ライトノベルでよく見られる「毒舌系ヒロイン」によく使われるパターンです。ライトノベルにおける共同生活は「同じ部活」「生徒会」に入れられる…などでしょうか。ヒロインのピンチの例としては「テストが赤点」「隠しごとがバレそうになる」「友達の信頼を失う」「大事なものが見つからない」「誘拐」「毒親」「ストーカー被害」などなど…。3と組み合わせて、対立する立場の二人が共同生活をさせられる…という例も考えられます。

3は「立場の違い」が障害となっているパターンです。最初から主人公のことを好きでも良いですし、主人公との対立を続けることで好きになっていく、という流れもありです。この類型は「敵対する理由となる信念」が強いほどヒロインの心にジレンマが生まれてストーリーが盛り上がります。

4はややトリッキーでややダークな話なので、最初に作るストーリーとしては難しいかもしれませんが、ミステリー的な話にもできますし、お話作りに自信が出てきたら試してみても良さそうです。

なお、ここで紹介した類型は「ストーリー作家のネタ帳 イベント編1」から拝借しました。

この本では、これらの類型をどのように扱うのかがより詳しく書かれているので、興味があればおすすめです。

キャラクター中心に話を作っていく

シナリオの方針は「シンプル」なものが良い、という話をしたところで次にキャラクターについて説明します。個人的にはお話を作る前に、まずはキャラクターを作るのが良い、と考えています。

なぜキャラクターから作る必要があるのか

シナリオの本を読むと、三幕構成やプロットポイント、ターニングポイントなどシナリオ構成の話が出てきますが、シナリオを書けない人は、まずは「キャラクターのリアクション」をしっかり描こう、と私は考えています。

「構成」もシナリオを作る上ではとても重要なのですが、まずは「キャラクター」に興味を持ってもらえないと、話に関心を持ってもらえないからです。
というのも、例えキャラクターが生きるか死ぬかの状況になったとしても、そのキャラクターに興味がなければ、プレイヤーは「どうでもいい」と考えてしまいます

なので、まずはキャラクターを中心に話を作ってみるのが良いのかなと思います。

キャラクターを中心としたストーリーの作り方

ということで、私のオススメは「キャラクターを中心としたストーリー」です。
ではそういった話をどうやって作るのか…ということですが、私の場合は以下の本でそれを学びました。

この本ではキャラクターの反応(リアクション)を中心に4コママンガを描いていく…という方法を紹介しています。

画像
出展:
マンガで夢を叶えるための“おもしろい”の伝え方(1)

2コマで状況を説明し、そのリアクションをどうするかを描くことでキャラクターを理解していきます。
しっくりくるリアクションが描ければキャラクターの方向性が定まってきます。それを繰り返す(リアクションのパターンをいくつか描いていく)ことで、キャラクターが「シナリオの都合で動くのではなく、キャラクター自身が「意志を持って動くことが少しずつできるようになります(いわゆるご都合主義の展開を減らせるようになります)。

この方法は、「ワンピース」の尾田栄一郎先生も似たことをしているようです。うろ覚えの話ですが、尾田先生の場合は、キャラクターの落書きをしながらキャラクターに話しかけてその反応を考えながらキャラクターを作っていくとのことです。

なお絵が描ければこの方法が使えますが、描けない場合はどうするのか…ということですが、コミPo! というマンガ作成ツールや、World Makerというネーム作成ツールを使っても良いかと思います。

「表情パターン」と「セリフ」を組み合わせることで「キャラと会話」する

私の場合は、表情パターンぐらいの絵であればひとまず描けるので、これを使ってティラノビルダーなどで会話を入れてみて、キャラクターのイメージを掴むという方法をしています。

 

表情パターン」と「セリフ」を組み合わせることで、キャラクターと会話しているような気になれるので、漫画は描けないけど表情パターンくらいなら描ける…のであればオススメです。

もちろん表情パターンの素材を使ってみても良いと思います。例えば「立ち絵素材 わたおきば」さんの素材はバリエーションが多くクオリティが高いので、絵が描けない場合はこれがおすすめです。

キャラは「設定」から作らないほうが良い

「リアクション」からキャラクターを作るというのは「キャラクターがどのように動くのか?」というところから作る手法となります。

しかし、キャラクターの作り方の本などを読むと、「性格」「身体的特徴」「職業」「家族構成」「目標」「能力」「交友関係」「学歴」といった設定中心でキャラクターを作る方法が多く紹介されています。なぜこういった方法が多く紹介されているのかというと「教えやすい」「キャラを作るとっかかりとして入りやすい」「パターンの類型が多くページ数が稼げる」ためであると個人的には考えています。

 

また「キャラにギャップをもたせる」とか「キャラに弱点をもたせる」など、キャラ作りのテクニック的な方法も確かに有効なのですが、キャラクターを実際に物語で動かすには、そのキャラクターがどのように動くのかが重要で、設定をいくら積み上げても行動原理そのものは生まれません。特に設定中心でのキャラ作りの大きな問題としては、キャラへの理解が不足しているため「ストーリーの都合でキャラの行動原理を変えてしまう」というミスを犯してしまいがちな点です。これをやってしまうと、読者のキャラへの興味が大きく削がれてしまうことになります。

📌キャラ作りに慣れたら「設定」から作るのも良い

「設定」から作ることは否定しません。

特にお話作りに慣れた人であれば、大喜利のように「お題」が先にあって、そこから必要な部分を後付けで作ることも可能です。これは「成功」「失敗」の経験値が多くある人ほど、正しく動かすための手法や要素、やってはいけないことを直感的に理解しており、手順に関係なく柔軟にキャラやストーリーを作ることができるためです。

キャラの行動を空想しながらキャラを作る

先ほど尾田栄一郎先生は「キャラと会話しながらキャラを掘り下げる」という話をしましたが、まるで実在する友達のように会話をしたり、質問をしてみたりすることで、キャラを理解するのも1つの方法です。

例えばベストセラー小説「万能鑑定士Qの事件簿」で知られる松岡圭祐先生も、自身のノウハウを惜しげなく書いた「小説家になって億を稼ごう」で、12人の登場人物の行動を脳内で空想する…という創作法を書かれています。

貴方の好きな俳優を7人選び、顔写真をネットからダウンロードしましょう。男女比は4対3としますが、男女のどちらをひとり多くするかは貴方の自由です。主人公の性別も同様です。これら俳優たちは、貴方の脳内で登場人物を演じるメインキャストになります。

(中略)

この段階では、それぞれの登場人物がどう絡むか、相関関係などは考えず、また何が起きるのかも予想せず、ただ貴方好みの登場人物ばかりを作り出してください。今後『想造(そうぞう)』段階と執筆の長い期間、ずっと脳内でつきあうことになるのですから、貴方にとって非常に気に入る存在にしてください。

(中略)

メインの7人が貼り出されたら、さらに5人、サブの登場人物を作り出します。

(中略)

次に登場人物たちがどこで動き回るのか、舞台を設定します。風景写真を3ヵ所、やはりネットからダウンロードし、12人の登場人物の下に貼り付けます。

(中略)

12人の登場人物と3ヵ所の風景が貼られた部屋で、しばし寝起きして過ごします。部屋にいる間はそれらを眺め、登場人物たちの動きを空想します。

小説家になって億を稼ごう - 第二章 人々に愛される物語の『想造』とは

松岡圭祐先生の手法も、キャラの見た目となる画像や趣味といった「基本的な設定」は用意するものの、自由にキャラを動かして行動原理を少しずつ見つけていく、という手法となっています。

それに対して、リアクションから作る方法は「より具体的な状況」を用意し、それに対するキャラの行動を引き出すことでキャラクターを作る方法なのではないか、と思っています。


ということで、まずは魅力あるキャラクターを作れるようになることが最優先ですが、シナリオの構成を学ぶ本としては以下のものがオススメです。(「キャラクター」が作れるようになっても「構成」が甘いとストーリーに深みがなくなるので、最終的にはどちらも重要です)

2022.8.14 追記:ホラーという選択肢もあり

個人的にはラブコメが最初は作りやすいかな、と思っていますが、 Dating sim (恋愛ゲーム) があまり好きでない方におすすめなのが、Horror game (ホラーゲーム) です。ホラーゲームなら恋愛要素は不要で、 Jump scare (ジャンプスケア・ホラーゲーム) のように「びっくりする怖い演出」が作れれば、後はその怪異が存在する理由を考えて Closed circle (閉鎖空間) に主人公を放り込めばストーリーが完成します。

そして、ラブコメでは難しかった「バッドエンド系」もホラーの場合は比較的やりやすかったりします。

ホラーゲームのよくある舞台設定 (閉鎖空間) は以下のものでしょうか。

  • 大雨の中、行きずりの旅館に止まったものの、その旅館では過去に凄惨な事件があり…?
  • 親友がある事件の調査中に行方不明となり、消息を失ったとされる古びた館に侵入するが…?
  • 学校でウワサになっている殺人鬼が住んでいるという館に侵入してみるが…?
  • 主人公は好奇心で、廃墟となった家にある呪いのアイテムに手を出してしまい…?

ホラーものの結末としては、以下のものがよくあります。

  • ハッピーエンド系:怪異には悲しい過去があって、主人公は怪異を救済することで成仏できた
  • ハッピーエンド系:怪異の正体は昔死んだ兄弟で、主人公のピンチを救って消滅した
  • バッドエンド系:怪異に主人公の身体は乗っ取られ、主人公は新たな獲物を探してさまようことになる…
  • 未解決エンド系:怪異を倒したと思ったら、まだ生きていて別の犠牲者を探していた。…次はあなたかもしれない…

ホラー要素については以下の記事で解説していますので、興味があれば読んでみても良いかなと思います。

妥協も大切

最後に、シナリオを作り慣れていない人がシナリオを完成させるための重要な考え方です。

シナリオを作って、それをゲームに組み込んで実際に形にしてみると、設定やシナリオの矛盾点やキャラクターの行動原理におかしな点が数多く見つかります。

可能な限りそれを直すのが良いですが、あまりにも何回もそれをするのは大変ですし、ストーリーの大筋を変えなければならないような修正をすると、ゲームが完成しない恐れがあります。

そのため、ある程度の段階で作り直しを考えるよりも「どうすれば、ダメージを減らせるのか(違和感のある粗い部分が目立たなくなる修正となるのか)」という消極的な解決方法で完成に近づけていくのが良いのではないかと思います。

私は今までノベルゲームは2本ほど作りましたが、どちらも今見ると矛盾点や気になる点が多く存在しています。ただ完成させて人の評価を得ないとわからない部分も多く、また完成させることで少しずつステップを進めることができました。

ということで、「こんな完成度では人に見せるのは恥ずかしい」という気持ちもよくわかりますが、どこかでそれをかなぐり捨てる覚悟が必要になるのではないか…、などと思っています。

関連記事

シナリオを書くのにおすすめな本は以下のページのまとめておきました

「SAVE THE CATの法則」や「『感情』から書く脚本術」など、おすすめのシナリオ本の紹介記事となります。

追記: 2023.5.10 (初心者向け・ゲームシナリオの書き方)

ゲームシナリオの書き方についてより具体的な方法をまとめてみました。

小さなゲームにおける物語の作り方

今回は小さなゲームで物語をどのように表現するのかを考えてみました。

参考にしたのはこちらの記事です。

Candy Crush シリーズで知られる、King社による講演内容となります。

小さなゲームにおける物語の作り方

小さなゲームに物語は必要か?

私の印象では、なんとなく小さなゲームには物語や世界観は必要ないと思っていました。
ですが、先ほどの記事によると、意外とそうでもないようです。

しかし,Candy Crushシリーズのプレイヤーは実は物語を求めている。KingのシニアナラティブデザイナーであるStephanie Prue氏が2016年に行った講演で具体的な数字が示されており,「ゲーム内においてストーリーを伝える画面をスキップするのは,全プレイヤーの50%」という調査結果が出ている。つまり,プレイヤーの半分は物語を読んでいることになる。

 

 このことは直近の調査からも垣間見えており,「Candy Crush Friends Sagaを改良するとしたら,どこを改良しますか?」という問いに対して,要望の3位にあたる13%が「キャラクターとその役割を紹介する」,そして12%(同5位)が「もっとストーリー要素を加える」と回答している。合計すると43%のプレイヤーが,作品の世界観やキャラクター性にまつわる要望を持っていることになる。

物語や世界観は50%の人が求めていませんが、逆にいうと50%の人はあったほうが良いと考えています。
なので、そういった要素を切り捨てるという選択もありですが、物語を入れることでさらに遊ぶ人を増やすことが可能かもしれない、というデータが出ています。

ただ、小さいゲームでは長々と壮大なストーリーをテキストで見せることができない、としています。というのも、ほとんどの人がテキストの内容を覚えていいない、という調査結果になったためです。

小さいゲームで物語を感じさせる4つの方法

これを踏まえて King社では以下の方法で、物語を感じさせる工夫をしているとのことです。

  • 1. コンテキスト:ゲームと物語の関連性がある
  • 2. どこからでも入れる:前後の会話シーンを見逃しても理解できる話にする
  • 3. 一貫性:典型的なキャラクター、シナリオを採用する
  • 4. 魅力的にする:共感できる個性のキャラクター、ワクワクするシナリオ

「1. コンテキスト」はゲーム内容と物語の関連性がしっかりと存在していることです。例えば、お菓子を集めるゲームである場合、主人公がお菓子好きという設定があるかもしれません。またお菓子を楽しそうに食べるアニメーションを用意する、という演出が必要になるかもしれません。

「2. どこからでも入れる」というのは、わかりやすくストーリーを伝えるようにすることだと思います。例えばある会話イベントを見逃すと、それ以降の話が理解できなくなるのは良くない、ということです。またキャラクター同士に複雑な相関関係を持たせたり、時間軸の移動があるなどの複雑な構造のストーリーも、パッと理解するのは難しいので、避けたほうが良いかもしれません。

「3. 一貫性」というのは、物語の用語の表記ゆれをなくしたり、キャラクターの性格をテンプレを抑えた典型的な行動やリアクションにすることかな、と思います。物語を作る場合、キャラクターの意外な一面を見せたくて性格にブレを出してしまうと、みている側が混乱するので避けたほうが良い、とのことです。

「4. 魅力的にする」というのは当然のことですね……。テンプレを抑えつつも、どこかに独自の性格や信念を持たせて、共感を得るものを用意する必要があるとのことです。

個人的に考えた小さなゲームでの物語表現

これらを踏まえて、小さなゲームでの物語をどのように表現するかを考えてみました。

  • 1. 登場人物を少なくする。狭い世界(閉鎖空間)に閉じ込める
  • 2. しゃべらないキャラを用意する
  • 3. チュートリアルキャラを用意する

小さなゲームでは壮大なストーリーや、多くのキャラクターを描き切ることができません。なので、登場人物を最小限に絞って狭い世界に閉じ込めるのが良いのではないかと思いました。

また、「テキストを読まない」という調査結果から考えると、長々とおしゃべりするキャラクターは嫌われそうな気がします。それであれば、しゃべらずに意思疎通ができるキャラクター(動物など)を適度に配置したほうが良いのかもしれません。

以下は少し極論ですが、そもそも「テキストを読まない」というのは、ゲームとは直接関係ない会話を見せられるのでスキップされることが多いような気がします(例えば、対戦型落ちものゲームでの、ゲーム開始前の茶番劇など)。これが「ゲームシステムを解説する」というチュートリアルキャラであれば、しっかり読んでもらいやすいです。そのため、ゲームの説明をするためのキャラクターを配置して、その中で個性を出していくのが良いのかもしれません。
ちなみにチュートリアルキャラは「プレイヤーに色々教えてくれる頼もしい存在」です。そのため、チュートリアルキャラが殺されるようなことがあると、プレイヤーはなんとかして敵を倒したいと思わせることができます。(例:逆転裁判の「綾里 千尋」など)
これは設定で「親・兄弟を殺された」という説明的なものよりよっぽどゲームに入り込むことができます。なので、チュートリアルキャラは積極的にひどい目に合わせたほうが良いのかもしれません。( "殺す" のが世界観的にハードすぎる場合は、"誘拐される" くらいで良いかもしれません)

プレイヤーの邪魔をせずにストーリーを伝える方法

ゲームプレイに直接会話イベントを入れると、くどくて堅苦しい印象を受ける場合があります。その場合は間接的に伝えるようにすると、プレイヤーの邪魔をせずにストーリを伝えることができます。

記録で語る

ゲーム内で手に入るアイテムやメモ書きなどでストーリーを伝えます。
例えば、「日記」「手紙」「写真」「壁の落書き」「留守電電話」「ビデオ」「音声ファイル」「電子テキスト」などの小道具や記録媒体です。

背景のアートで語る

ステージクリア型のアクションゲームやシューティングゲームでよく使われる手法です。例えば、滅亡した世界を荒廃した背景のアートで語る、時間の変化を背景で、朝から昼、夜へと変化されることで伝える、などです。

盗み聞きさせる

主人公が会話に加わると興ざめする場合は、他のキャラクター同士の会話をプレイヤーに聞かせるという方法もあります。

Kindle Unlimitedで読めるゲーム開発に役立つ本

今回は電子書籍が読み放題になるサービス Kindle Unlimited で読めるゲーム開発に役立つ本についてまとめてみました。

 

📌Kindle Unlimited は定期的に割引キャンペーンを行います

Kindle Unlimited は定期的に割引キャンペーンを行っているので、その期間だけ契約するのがおすすめです。

 

📌Kindle Unlimited の対象本は入れ替わります

Kindle Unlimited の対象となる本は配信する人・会社の都合で入れ替わります。そのため、ここで紹介した本が Unlimited の対象かどうかは以下のマークで判断できます。

なお、ここで紹介した Kindle本は基本的に Kindle Cloud Reader (Webブラウザ) では読めない本がほとんどなので、Kindle アプリ をインストールする必要があります。

ゲーム開発初心者向け

0から副業でゲームアプリの個人開発をやってみたい初心者が、プログラミング言語の学習を始める前に読むべき超入門書

こちらはゲームを作ったことがない、ゲームプログラムをしたことがない、ゲームで稼ぐにはどうすればよいのか、といった初歩的な疑問に対する答えがまとまっている本です。

また「500円の価値がない」というレビューにもある通り、確かにネットで調べればわかる情報が多いです。ただ Kindle Unlimited を利用すると実質無料で読めますし、ネットで調べる手間を削減できるので、右も左もわからないゲーム開発初心者には良い本ではないかと思いました。

ゲーム開発を勉強するにあたって必要な情報がまとまっており、おすすめのツールや本が紹介されているので、「ゲームを作りたいけれど何をすればわからない」という人にオススメです。

これからゲームアプリを 作ろうと思っている人へ 伝えたいこと: 「ただなんとなく・・・」ゲームアプリ制作に興味を持った方へ

Hyper-Casual game (ハイパーカジュアルゲーム) を中心に100本以上のゲームを作り、最高月収120万円を達成した著者によるゲーム開発初心者にむけた本となります。

この本では、GameSalad というプログラムコードなしで作れる開発環境を紹介しており、初心者でも入りやすくゲーム開発のきっかけとして良い本だと思いました。

なお「本当に月収100万円もあるのかな…?」と疑問に思って作者さんのアプリを調べてみたのですが、こちらのアプリの開発者のようで、10万〜100万DLを達成しており、たしかにこれだけダウンロードされていれば、それだけの収入がありそう…と思いました。

ゲームプログラム

ゲームを作りながら楽しく学べるPythonプログラミング

Pythonの基礎をゲームを作りながら学べる本です。Pythonは文法がわかりやすく覚えやすいので、プログラム初心者にオススメの言語なのですが、メインとして使わなくても開発を補助するツールとしても使える(データコンバートの自動化など)ので、UnityやUnreal Engineなど他の開発環境を使用していても覚えておいた方が良いと思っています。

また、Unreal Engine のエディタ拡張のスクリプト言語としても Python が採用されています。

この本の前半では Python の文法とプログラムの基礎を学び、後半で実際にパズルやシューティングゲームを作りながらゲームづくりの基礎を学べる本となっています。

出典:ゲームを作りながら楽しく学べるPythonプログラミング

ただ注意点として、Pygame を使っており、macOS環境だと環境構築がやや難しいです。Windows環境を使用していれば問題なく構築できると思います。

Unityの寺子屋 定番スマホゲーム開発入門

Unityを使っているなら役に立つ本だと思います。

全くの初心者にはやや少し難しいかもしれませんが、「 Incremental game (放置系ゲーム) 」「 Cookie Clicker (クッキークリッカー) 」「 2D Platformer (プラットフォーマー) 」の作り方を解説した本です。

出典:Unityの寺子屋 定番スマホゲーム開発入門

特に「放置系ゲーム」「クリッカー系ゲーム」はスマートフォン向けのゲームとして人気が高く収益性が高い(継続率が高い)ことで知られていますので、ゲームで生計を立てていきたいと考えている人には良い題材ではないかと思います。

[Unite]個人ゲームアプリ開発者はいかにして生きていくのか? 「和尚」が語るゲーム作家の生き方指南
出典:[Unite]個人ゲームアプリ開発者はいかにして生きていくのか? 「和尚」が語るゲーム作家の生き方指南
ゲームタイプ 1DLあたりの収益 補足
脱出ゲーム 3〜12円 リプレイバリューが低い
(繰り返しプレイされない)
ので収益率は低め
カジュアルゲーム 5〜25円  
放置ゲーム 8〜42円  
クリッカー 10〜50円 アプリ内課金を組み合わせれば
1DLあたり100円を超えることもある

Unity入門の森シリーズ

初心者向けのUnityのチュートリアル記事を書かれている「Unity入門の森」の方の Kindle本です。

とても丁寧に説明されている良い本なのですが、Webサイトにもほぼ同じ内容の記事を書かれているので、個人的な感想としてはKindle本よりもWebサイトの方が見やすいような気がしました。

プランニング(業界・チーム開発)

プランナー一年生のためのゲーム仕様書の書き方

ゲーム開発会社の「サクセス」のプランナー向けの社内教育用資料をまとめた本となります。

内容としては「ゲームの仕様書」の書き方で、プログラマーにゲームの仕様を共有するための資料をどうやって作成するかが書かれており、かなり実践的な本となっており、業界を目指している方は読んでおいて損はないと思います。

ゲームプランナーのチーム運営例: ~ゲーム性以前の問題を発生させないために~ ゲームプランナーの参考例シリーズ

ゲーム業界歴20年以上のキャリアを持つプランナーの方の本となります。

こちらはゲーム開発における「プロジェクトマネジメント」についての本で、炎上するプロジェクトのあるあるがよくまとまっていて、私もマネジメント経験があるので読んでいて胃が痛くなる本でした。

それだけリアリティがあり、マネジメントを任されたときにどういった立ち回りをするべきなのか、どういう準備をすればよいのかがまとまっていて、管理職に就きたい方にはおすすめの本だと思います。

この方は他にも「ゲームプランナーのドキュメント作成例<基本編> ゲームプランナーの参考例シリーズ」「ゲームプランナーのミーティング実践例 ゲームプランナーの参考例シリーズ」という本を書かれおり、どちらも実践的な内容でおすすめです。

ゲーム企画職の歩き方 - ゲーム開発会社に就職してからの手引き

ゲーム開発全般

ゲーム開発者の地図: 20年の個人開発から学んだこと

ゲーム開発を20年以上続けており、RPGを作るエディターとして人気の高い「WOLF RPGエディター」の開発者でもある SmokingWOLF さんのゲーム開発ノウハウをまとめた本です。

ゲーム開発者全員におすすめできる本ですが、特にRPGを作成している方にはRPG特有のパラメータ調整方法や魅力的なキャラクター作りの方法は参考になると思います。

2022.8.6 追記:RPGゲームデザイン奮闘記 ー5つのネイトの作り方 ー

「ねこどらソフト」による、5属性がころころ変化するRPG「5つのネイト」が完成するまでの経緯をまとめた本です。

この本の著者は、RPGを初めて作ってみたということもあり、色々な紆余曲折があって、そのあたりを包み隠さず書かれていて、RPGを作ったことがない方にはとても参考になると思います。

また、5つのネイトを遊んでみるとわかるのですが、ボス戦ごとに遊ばせ方がどんどん変化して、手作りの良さが感じられるゲームとなっていて、ボス戦での専用ギミックの作り込みとバリエーションが多く、バトル中心で進むゲームを作りたい方におすすめなのではないかと思います。

自作ゲーライフ: 個人スマフォゲームアプリのマネタイズ本

スマートフォン向けのゲームを作っている個人ゲーム開発者向けのマネタイズ(収益化する方法)について書かれた本です。実際にゲーム開発で生活できており、収益率の高いアプリや人気のあるアプリを作られている方なので説得力があります。

また、マネタイズやプロモーションだけでなく、ゲームを完成させるための方法や、開発の悩み解決法、はたまた食事について書かれているのが面白いです。

経験ゼロでも作れるフリーホラーゲーム。制作の流れ・ストーリーの構成・ギミックに必要な3要素。20分で読めるシリーズ

📌Unlimited 対象から外れました

2023.1.7 追記:こちらとても良い本なのですが、Unlimited 対象から外れてしまったようです

最近はホラーっぽいゲームを作っているので参考になるかな…と思って読んでみたのですが、なかなかよい本でした。内容としては初歩的なストーリー作成や企画、謎解き、分岐やギミックについて、テンプレとなる分類がされており、ホラーゲームを作り慣れていなければ参考になるかと思います。

例えば、ホラーゲームのシチュエーションとしては、以下の3つが典型的なパターンとして提示されています。

  • 1. モンスターからの逃亡:未知の化け物や猛獣、人間の業より生まれた怪物、快楽殺人者から逃げる
  • 2. 環境からの脱出:沈みかけている船、毒ガスが満ちていく閉鎖空間、命がけのゲームからの脱出
  • 3. 過去に触れる:過去の忌まわしい出来事の真相を知ってしまい主人公に危機が迫る

またそれぞれのパターンについての作成のコツが書かれており、参考になります。他にもギミックの作り方の注意点など、たしかにそれに注意しないと良くない作りになるなぁ……と勉強になりました。

個人的には最後の「ホラーゲームでやってはいけないこと」が参考になりました。

  • "予兆"以外のびっくり系イベントは多用しない:「 Jump scare (ジャンプスケア・ホラーゲーム) =びっくり系イベント」を多用すると飽きられる
  • 宗教を否定しない:否定的な主張があると炎上の可能性がある
  • 死は控えめに:死亡エンドが多いと怖さがなくなる。BAD ENDが多いと難しいゲームになる

一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門

こちらはホラーゲームのような「創作系」ではなく、現実にあった「実話系」の語り方の本ですが、創作系ホラーを作る場合にも怖さにリアリティを持たせるためにとても役に立ちます

ハイパーカジュアルゲーム入門: アプリリリースまでの考え方

Hyper-Casual game (ハイパーカジュアルゲーム) の基本について書かれた本です。ざっくりとハイパーカジュアルゲームについて知りたい、という方には参考になると思います。

以下の記事で参考にさせてもらいました。

ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ

📌Unlimited 対象から外れました

2023.1.7 追記:こちらとても良い本なのですが、Unlimited 対象から外れてしまったようです

前半部分は、ゲームの企画書を作る上で基本となる構成要素、企画が成立するまでのプロセス、オンラインゲームの運営方法などについて書かれています。

前半部分はどちらかと言えば、ゲーム業界に入りたい人向けの内容であると感じました。

そして、後半部分は実際にリリースされたゲームの企画がどうやって通ったのか、制作の過程はどのようなものだったか、どうやって売り出して運用したのか、といったことが書かれています。
取り上げられたタイトルは「ファンタシースターオンライン」「ダービースタリオンマスターズ」「魔界戦記ディスガイア」「CIRCLE of SAVIORS」「ソードアート・オンラインモリーデフラグ」「ダンガンロンパシリーズ」「Strange Telephone」「GUILTY GEAR Xrd REV 2」といった有名どころのタイトルばかりで読み応えがあったです。

個人的には、斜陽となっているアドベンチャーというジャンルを新しい切り口で売り出した「ダンガンロンパ」、独自の世界観と設定で話題になった「Strange Telephone」の制作過程についての記事は興味深かったです。

このプレゼンテーションが転機になりました。企画書を何度も作り直したとしても、アドベンチャーゲームというジャンルでは通らない。そう判断し、新しいジャンルを考えることからリスタートしました。話し合いを進める中で閃いたのが、アクション要素を入れること。そこで思いついたのが "ハイスピード推理アクション" という言葉です。そこからは、アドベンチャーゲームではなく、ハイスピード推理アクションと言い切るにはどうすればよいのかを考えながら、ゲーム内容を詰めていきました

ダンガンロンパ:アドベンチャーではなくハイスピード推理アクション

グラフィックがいまいちだと、ダウンロード数が伸びないですね。特に日本のユーザーの場合は顕著です。ゲーム内容がよいからといってグラフィックスをおろそかにしてしまうと、ダウンロード数が落ちてしまう今ヒットしているゲームを見ると、グラフィックスに、オリジナリティやクオリティが高いものが多いですね。特にゲームアプリのアイコンには気をつけないといけないと思っています。ほかにはないような独特のアイコンのデザインだと、端末に入れておくだけでもよいというファンもいます。ほかと差別化できるようなデザインのアイコンの付いたアプリは強いです。

Strange Telephone:ゲームにおけるグラフィックスの重要性

当たり前ですが、グラフィックで手を抜いてはダメですね。ストアでのスクリーンショットが、他のゲームよりも見劣りしてしまうとなかなか興味を持ってもらえないのではないかと思います。

2022.11.23 追記:ゲームデザイン力を育てる50の講義

ゲームデザイン初心者向けに書かれた本で、ゲームとして成立させるための基本となるスコアシステムやドットイート、アーケードゲームといった、シンプルなアイデアを中心したゲームデザインについて書かれた本です。

参考としているゲームのいくつかが90年代のニッチなゲームで、考え方が少し古いのが気になりますが、初心者向けとしては悪くないように思いました。

開発者インタビュー

石井ぜんじ「ゲームクリエイター」インタビュー集 ゲームに人生を捧げた男たち

カプコンの「岡本吉起」さん、元SNKの「足立靖」さん、ハムスターの「濱田愉」さん、Game in えびせんの「えび店長」さん、レイジングループの「amphibian」さん、千里の棋譜の「宮下英尚」さん、AIのスペシャリスト「三宅陽一郎」さん、プロ棋士でありコンピュータ将棋に詳しい「西尾明」さんのインタビュー本となります。

これらの方々に興味があるかどうかにもよりますが、興味があればゲームの作り方や考え方が学べるよい本だと思います。

イラスト関連

360°どんな角度もカンペキマスター! マンガキャラデッサン入門

こちらはキャラクターデッサンの基礎から学ぶことができる、お絵描き初心者向けの本です。とても説明が丁寧で最初に手に取る本としてもおすすめです。

プロ絵師の技を完全マスター キャラ塗り上達術 決定版

個人的に役に立った本です。キャラの塗り方のパターンがいくつかあって、私自身この本の塗り方を参考にしています。

ただこちらは定期的に見る資料となるので、私の場合はお金を払って購入しました。

絵の上達方法について、キャラクターイラストであれば、この本以外にもKindle Unlimited で読める本は多いので、これらをとりあえずダウンロードしてみて、好みのイラストなら模写してみる……という勉強法が良さそうです。

プロ絵師の技を完全マスター 魅せる背景 上達術 決定版

こちらは背景の塗りついての本となります。

月刊MdN 2014年 10月号(特集:イラスト表現の物理学 爆発+液体+炎+煙+魔法を描く)

参考になるデザインがたくさんある MdN のエフェクト特集です。

この号では、マンガやアニメ的なエフェクトのイラストの作りかたの特集があり、参考になります。この特集だけを目当てにすると高く感じますが、Kindle Unlimited なら読み放題で読めるので、そのあたりを気にせずに読めるのがとても良いです。

シナリオ

初心者でも完成させる 個人でのノベルゲーム制作の流れ: ノベルゲーム「Psychology King」を個人でゲーム開発したときの流れを実際の資料付きで解説

初心者でも必ず完成できるストーリーの作り方: この1冊でストーリーが生み出せるようになる、小説の書き方シリーズ第二弾! 基礎から応用まで!小説の書き方シリーズ

インディーズ小説家マニュアル」で初心者向けの小説の書き方やストーリーの作り方を解説されていて、その集大成となる本となります。

出典:我那覇アキラ

平易な文章で、できるだけお手軽にストーリーを作る様々な方法を数多く提示されていて「ストーリーが書きたいけど何をしたらいいかわからない…」という方にオススメの本となります。

大どんでん返し創作法: 面白い物語を作るには ストーリーデザインの方法論

物語の結末で読者をあっと驚かせる「どんでん返し」の 10パターンの方法と、その作り方を解説した本となります。

インパクトを与えるストーリー作りをしたい方には、その手法と物語構造を学べておすすめとなります。

ストーリー作家のネタ帳 イベント編1―キャラクターの王道プロット15種

個人的にシナリオ作成の参考にしまくっている「ストーリー作家のネタ帳」シリーズ。

他にもシナリオのパターンを分類されている方は多いですが、個人的にはこのシリーズが一番ではないかと思っています。

感情から書く脚本術

📌Unlimited 対象から外れました

2023.1.7 追記:こちらとても良い本なのですが、Unlimited 対象から外れてしまったようです

こちらはシナリオを作る上で知っておくべきことが数多く書かれた本です。個人的には「中級者〜上級者」向けの内容で、ある程度のお話を作れる人が「自分に足りないものは何か?」を知ることができるチェックリストのような本です。

個人的には、知りたいことを調べる「辞書」のような本だと思っていますので紙媒体の方が良いですが、Kindle版も持ち運びしやすいメリットがあるので補助的な資料として使っています。

この本は個人的にもかなりおすすめで、以下の記事でこの本を紹介していま

キャラクターからつくる物語創作再入門

こちらは魅力的なキャラクターの作り方について書かれた本です。ただ最近流行りの「属性」を組み合わせるタイプではなく「ストーリー」の中でキャラクターがどのように変化するのかを中心に書かれたものです。

そういったストーリーがどのように分類され、キャラの変化をどのように描けばいいのかが学べる本です。

資料

二次元世界に強くなる 現代オタクの基礎知識

アカシックレコード」や「ワルプルギスの夜」、「永久機関」や「タイムリープ」などオタク心をくすぐるキーワードについての資料となっており、ゲームアイデアやシナリオ作成に役立つ本ではないかと思います。

ただ説明は浅く広く、といった感じなので、あくまで用語集といった使い方でより詳しく調べる場合は Wikipedia などを参考にしたほうが良さそうです。

ホラーゲームの作り方

この記事では Horror game (ホラーゲーム) の作り方を解説します。

ゲームの方針を決める

まずはホラーゲームで表現したい怖さを選びます。表現したいものによって適切なフォーマットを選ぶのが作りやすいと思います。

「キャラクター・シナリオ」を中心にする

例えば、"キャラクター" や "シナリオ" に焦点を当てる (シナリオを考えるのが得意な) 場合は、「Visual novel (ノベルゲーム)」が良いです。ノベルゲームの例としては「弟切草」「かまいたちの夜」「ひぐらしのなく頃に」「流行り神」などです。ノベルゲームは長い文章を使って、細かい表現ができるので、人の内面や狂気に至るまでの過程、精神的な葛藤を描くことができます。

テキスト主体のノベルゲーム「ひぐらしのなく頃に」(出典:Steam)

「ゲームシステム」で怖さを表現する

"ゲームシステム" で怖さを表現する場合には「探索」型が良いです。例えば「バイオハザード」「クロックタワー」「青鬼」「コープスパーティ」などのマップを移動して探索するタイプのゲームです。こちらはノベルゲームと異なりアクション要素があるので、 Action-adventure game (アクション・アドベンチャーゲーム) と呼ばれるジャンルとなります。

出典:Steam

「キャラクター・シナリオ型」か「ゲームシステム型」か?

  • "キャラクター" や "シナリオ" に焦点を当てる:ノベルゲーム
  • "ゲームシステム" で怖さを表現する:探索型ゲーム

もちろん、どちらかの形式に限定しなければならない…ということはなく、両立も可能です。

例えば、RPGツクールで作られたホラーゲームは基本的に上から見下ろし視点の探索タイプですが、ゲームシステムとキャラクター・シナリオの面白さが両立しているものも多いです。(「青鬼」「Ib」「ゆめにっき」「魔女の家」など)

探索タイプのさらなる細分化

探索型には、プレイヤーを調査して操作する "マップ移動タイプ" と、コマンド選択で移動を行う "コマンド移動タイプ" の2つが考えられます。マップ移動タイプの方が移動の自由度が高く、リアルタイムのアクション要素を付与しやすいです。コマンド移動タイプは選択肢を選ぶことがゲームのコアとなり、また Point-and-click adventure games (ポイントアンドクリックゲーム) と呼ばれる画面をクリックするシステムで探索を行います。この方式は基本的に非リアルタイムとなるためじっくり考えるタイプのゲームとなります。

ポイントクリックタイプのホラーアドベンチャーゲーム「死印」(出典:Steam)
  • マップ移動タイプ:マップの実装コストが高い。アクション要素を付与しやすい
  • コマンド移動タイプ:実装コストが比較的低い。ターン性や画面をクリックするゲームになる

マップ移動タイプにはカメラをどう扱うかの問題があります。三人称視点としてカメラを固定するか、一人称視点とするか。

  • 三人称視点:わかりやすい操作性
  • 一人称視点:迫力がある。没入感が得られやすい

三人称視点は、視界が広くて敵との距離を取りやすいというゲーム性でのメリットがありますが、迫力の面で一人称視点に劣ります。一人称視点(3Dリアルタイムゲームの場合)は没入感を得られやすいメリットがありますが、状況把握が難しいので自分の周りだけミニマップ表示するなど、遊びやすくする工夫が必要になると思います。
一人称視点の良い例として、コマンド移動タイプの類型といえるかもしれませんが「Five Nights at Freddy's」のように、視点をある程度固定させるのも良いかもしれません。(Five Nights at Freddy's は基本的に移動はできず、監視カメラの切り替えやどの扉を閉めるのかという視点の切り替えのみ可能としています)

Five Nights at Freddy's の監視カメラ切り替え (出典:Steam)

バイオハザード」は、お化け屋敷のようなアトラクション型で、どこから襲ってくるかわからない敵そのものに怖さを感じることができます。この類型としては「サイレントデバッガーズ」「エネミーゼロ」のような "敵の場所を音で表現する" といったシステムも恐怖を表現するのに有効です。

また、敵と戦うゲームとする場合、回復アイテムや武器の弾薬やセーブ回数が制限され、限られたリソースで "生き延びる" ことを目的とする Survival horror (サバイバルホラー) ゲームとなります。それに対して"敵から逃げる"、または隠れることを目的とする場合は Stealth game (ステルスゲーム) となります。

  • 敵を「倒す」ゲーム:敵を倒すためのリソースを制限することでサバイバルホラーゲームとなる
  • 敵から「逃げる」ゲーム:敵に見つからないようにするステルス、またはギミックで回避するパズル

この2つの要素はどちらかに絞る必要はなく、例えば「普通の敵は倒せるけれども、強靭な追跡者は倒すことができない」といったように、メカニクスを両立させることも可能です。

ホラーゲームの分類まとめ

ということで、ホラーゲームをざっくりと分類してみました。 Linear progression (リニア進行) と Nonlinear progression (非リニア進行) という分類ですが、ここではマルチエンドのありなしで分類しています。

あえて操作を不自由にする

アクション要素が強いゲームとする場合、操作方法をあえて不自由にすることで、より恐怖を増すことができます。例えば、バイオハザードは主人公キャラをラジコン操作で行います。これは、おそらくカメラを固定させる仕様にした際、画面によって操作方法の混乱を防ぐために採用されたのではないかと思います。
ただ結果として、ラジコン操作は直感的でないため、敵が突然出現したときに焦ってキャラクターをうまく操作できず、プレイヤーをよりパニック状態に陥らせることができました。
また操作性の悪さは、敵の攻撃回避にも影響を与えるので、ギリギリで回避することが難しく、プレイヤーに慎重にプレイさせる効果もあります。

ですが、2Dゲームでのキャラクターをラジコン操作にするのは、一般的にはあり得ないので「移動速度を遅くする」「ダッシュ移動に制限を持たせる」「攻撃開始までの発動フレームが長く存在する」「攻撃の射程範囲を短くする」など、操作キャラクターの機動性能や攻撃性能を控えめにした方が良いと思います。

視界を暗くする

人は暗い場所を怖がります。そこで明かりのない暗い場所を舞台とし視界を狭くすることで、恐怖感を煽ることができます。

できれば、背景をあらかじめ暗くしたり、暗くするフィルターを適用して、明るいライトで照らして探索させるシステムにすると雰囲気が出て良いと思います。ただ暗くしすぎると遊びにくくなるので注意が必要です。

不自由な操作をプレイヤーに許容させるには?

不自由な操作性は、通常のゲームであれば評価を下げる要素です。ホラーゲームだからそういうもの…としても良いですが「キャラ設定」でごまかす方法があります。ホラーにおけるシナリオの傾向として「か弱い人間を主人公にするとよい」というものがあります。屈強な兵士が怪異に怯える姿は想像しにくいですが子供や女性、気の弱い人間、怪異が苦手な人間」はホラーの主人公向きです。例えばクロックタワー(1995)の主人公は若い女性で、シザーマンから走って逃げるときにたまに何もないところでつまづいて転ぶ、というシステムが用意されており、それにより敵から逃げる緊張感が高まります。

クロックタワーの主人公の女性は、動作が緩慢だったり、突然転んだりと不自由な操作を強いられますが、キャラ性として許容させている1つの例かもしれない…と思って紹介しました。

📌配信向けに上級者向け要素を入れる

少し余談ですが、青鬼」にて、倍速移動が採用されたことで高難易度プレイや RTA をするプレイヤーに受け入れられたことを考えると、上級者向けにゲームスピード全体を速くする仕様も場合によってはありなのかもしれません。

即死にするか。体力制にするか

プレイヤーのミスによるペナルティをどのように扱うか、という問題があります。
「プレイヤーのミス=即死」にするとゲームに緊張感が生まれます。また、即死ということは回復アイテムも必要ないので、わかりやすいゲームシステムとなります。ただ、即死がシビアと感じるプレイヤーには厳しいゲームとなるかもしれません。

それに対して、体力制にすると、ゲームっぽさが出てしまい没入感が少し失われますが、体力の低下で危機を演出できる効果があります。

どちらが良いかは以下の基準で考えると良いと思います。

  • 即死制:敵のバリエーションは少ない。謎解きや怪異のインパクトを重視する
  • 体力制:敵のバリエーションが多い。恐ろしい敵と戦って生き延びることが目的の Survival horror (サバイバルホラー)

初見殺しをするかどうか

ホラーゲームは死の恐怖を前面にフィーチャーしたゲームジャンルです。死の恐怖を最も表現できるゲームの要素は『「ゲームオーバーになるかもしれない…」とプレイヤーに思わせることです

とはいえ「唐突に死亡イベントを発生させていいのか」という問題があります。
例えば、鏡を調べると手が伸びてきて、プレイヤーを殺すイベントが発生するとします。これはプレイヤーをドキっとさせる効果はありますが、突然ゲームオーバーになるのは理不尽です。もしこのようなイベントを作るのであれば事前に「この鏡は危険だ」ということを感じさせる警告を出すべきです。もちろんあからさまに直接的な危険性を示すと恐怖感が出なくなるので「なんとなく危険かも…」という予兆で十分です。

基本的には「初見殺しはよくない」と考えておいた方が間違いありません。ゲームオーバーはプレイヤーが納得できないと、再びプレイさせる動機を奪いかねません。またゲームオーバーはストーリーへの没頭感を失わせるデメリットもあります。そのため、即死でゲームオーバーにするには正当な理由を用意しておく必要があります。その手間を考えると "初見殺し" は限られた場所だけに使った方が良いと思います。

もし初見殺しを多くしたい場合、どこでもセーブできるようにしたり、ゲームオーバー後、素早くリトライで直前に場所に戻れるようするのも1つの方法です。
例えば「クロックタワー(1995)」は初見殺しの即死トラップが多いですが、ゲームオーバーになっても直前からリトライできる仕組みを用意しています。ただ、これはこれで、死亡に対するリスクが減少しているので、死んでもデメリットは少ないと気づいてしまい、恐怖感が減るかもしれません。

シンプルなゲーム性にする

ホラーゲームはシンプルなゲーム性にした方が、恐怖を演出しやすいです。ルールが複雑だと、ゲームに入り込みづらくなってしまうためです。

例えば「青鬼」は "かくれんぼ"、"ごっこ" ですし、「Five Nights at Freddy's」は、"だるまさんが転んだ" です。

子供のころの遊びはわかりやすい原始的な欲求であり、これをゲームシステムとして採用すると、世界に入りやすく恐怖を感じられるものになりそうです。

一貫性の原則を破る

通常のゲームは一貫したルールを守るのが基本となります。しかしホラーゲームはあえてこのルールを破ることでプレイヤーに驚きを与えることができます。

例えば、動かない石像。
それまで単なる背景オブジェクトと思っていたものが、ゲーム後半で突然動いてプレイヤーを驚かせる、というのもギミックとしては良いです。ただし、それによりプレイヤーを直ちに殺してはいけません。だまし討ちの初見殺しはユーザーを不快にさせるだけだからです。

探索・パズル要素

探索主体のゲームとする場合、プレイヤーに考えさせるためにパズル要素が入ることが多いです。というのも、敵と戦ったり、敵から逃げたりするだけでは、ゲームとして飽きられやすいからです。

暗号や図形パズルなど、ほどよく頭をつかう要素を入れるとゲームにメリハリが生まれます。ただできればストーリーやキャラクターを理解するためのヒントとなるキーワードを答えにしてその謎が存在する必然性を考慮した方が良いです。

謎解きやパズル要素のあるゲームシステムにおけるUIや作り方については、以下の記事が参考になるかもしれません。

物語の舞台や世界観・ストーリー

ホラーの舞台としては「人里離れた洋館」や「旧校舎」「だれも住んでいない家」「廃病院」「地下室」「廃墟」「誰も利用していない遊園地などのレジャー施設」などの暗くてジメジメした Closed circle (閉鎖空間) がよく使われます。

もともと多くの人々が生活をしていたり訪れていた空間が「無人」であると、なんとも言えない怖さがあります。また多くの人の感情が交差する場所には、何らかの因縁が溜まりやすい、という理由もあります。

負の感情(憎しみ怒り恨み妬み悲しみなど)をテーマに入れると陰湿なホラーシナリオになります。「家族」がテーマであれば幼児虐待や引きこもり、「職場」や「学校」がテーマであれば悪質ないじめやパワハラによる自殺、弱みを握られ脅され続けた、将来有望なスポーツ選手が事故で身体能力を失って絶望、私利私欲や汚職のために利用されて口封じに殺された、浮気や不倫や失恋……、などなど。悪霊や怪異はそういった負の感情を媒体に発生しやすいとされています。

そういった、いわくつきの空間に迷い込んだ主人公たちが閉じ込められてしまう…というのがよくあるパターンで、あまり日が当たらなくて誰も訪れないような常に薄暗い雰囲気になっていることが多いです。

そして、その場所には何らかの怪異が住んでいて、何らかの理由で主人公たちに執着したり追いかけ回します。その怪異は「不死身」だったり「強大な力」を持っていて、完全に倒すことができません。そのため、主人公たちはその場所から何とかして脱出しようとします。

ホラーの結末の例

ホラーものの結末としてよくあるのが、以下のパターンではないかと思います

  • 解決・ハッピーエンド系
    • 怪異(怨霊)は無念を晴らし、成仏して消滅した
    • 閉鎖空間の存在理由を破壊したため、その場所が崩壊し消滅した
    • 怪異は主人公たちと契約を結び、共生する道を選んだ
  • 未解決・不穏系
    • 怪異を倒して平和が訪れた…ように見えたが実は生き残っていた(身内に取り付いていた、など)
    • 怪異を倒して平和が訪れた…ように見えたが背後には巨大な組織が存在し、新たなる実験を進めようとしていた
    • 怪異の存在を世間に公表にしようとしたが、証拠は何も残っていなかった
    • 主人公たちは呪いから解放されたが、呪いは伝染病のように世界を侵食しつつある…
  • バッドエンド・デッドエンド系
    • 邪神が復活を遂げてしまい、世界には狂気が溢れと闇が訪れる…
    • 主人公は怪異に身体を乗っ取られてしまう。そして新たなる獲物を探してその場所でさまよい続ける…

作りたい話にもよりますが、ホラーの話としておすすめは「未解決・不穏系」です。結末をぼやかしてスッキリさせないことで、モヤモヤした怖さが残ります

怖いサウンドを使う

怖さの演出としては、サウンドの使い方がとても重要です。
BGMは控えめにして、怖さを表現する不快なSEを使うと、お手軽に怖さを演出できます。またドアの開閉音をリバーブを深めにすると雰囲気が出ます。
メニューなどのシステムSEも怖さを感じる重めのものを使うとよいかと思います。

効果音作成の参考になる本

FLStudioの無料版を使って効果音を作る方法が紹介されており、効果音づくりの基本が学べる本となっています。

また、ホラー系ゲームで必須となる「生音」の効果音の作成法も紹介されていて、とても勉強になります。

リアルな効果音を使う

リアルな効果音の作り方としては生音を使ったり、有償の素材を使うことですが、それをやると結構なお金と時間がかかります。

個人的にコスパが良いと思ったのが、GameSynthという効果音作成ツールです。

GameSynth

モジュラーを組み合わせることで無限に効果音が作れるツールなのですが、プリセットも数多く用意されており、リアルなドアの開閉音や足音が標準で用意されており、とてもホラー向きな効果音作成ツールなのではないかと思います。

ただ定価が結構いいお値段 (4万円近い) なので、夏や冬あたりの行われる半額セールを狙うのが良いかと思います。

既存の物語を借用する

物語や世界観を構築する場合は、空想上の怪物や、怪談、都市伝説などを借用すると恐怖のイメージが作りやすい気がします。

朝里樹先生の都市伝説に関する本はどれもしっかりまとまっていて、特に以下の本は怪異の入門用としておすすめです。

ただ、個人的には事典から入るよりも物語形式でストーリーを楽しみながら分析するのが良いと思っています。

遊べる環境はかなり制限されてしまうのですが、個人的に「日本一ソフトウェア」の「流行り神」シリーズがおすすめです。

■2023.8.8 追記:なんとSwitchに初代流行り神が移植されていました…! 以下のリンクは全部入りの商品ですが、ダウンロード版であれば個別に購入することも可能となっています。

このシリーズでは実在(?)の都市伝説がモチーフにされていて、特に初代流行り神の「さとるくん」「カシマレイコ」の話の怖さはなかなかだと思っています。またこのシリーズはゲーム中に「都市伝説のデータベース」みたいなものが見られてとてもためになります。

最新シリーズの「真・流行り神1」は都市伝説の怖さやキャラクターの良さが感じられないゲームなので、あまりおすすめできません。ただ「真・流行り神2」以降は、初代「流行り神」を彷彿させる怖さや、味のあるキャラクターなど、とても良い内容だったのでおすすめです。

もしくは小学生女子向けのホラーですが「ミラクルきょうふ!」。子供向けということもあってシンプルな物語構造となっているため、分類・分析しやすいと思います。

実写画像をホラー素材として使う

実写画像は明度を下げて、色相を青に近づけると、怖い画像になります。

左が加工前で、右が加工後です。本来なら暗くするのであれば照明を消した画像を用意した方が良いですが、細かいことを気にしない場合は、こういった加工もありではないかと思います。

Photoshopのニューラルフィルターで加工する

Photoshopを使う前提となりますが、ニューラルフィルターで加工するとホラーっぽいリアルな絵、配色に加工しやすいのでオススメです。

ホラーゲームを作るのに参考になるかもしれない記事

名作フリーゲーム制作者が考える「ゲームの作り方」のコツとは? 小麦畑主宰 oumi氏インタビュー

探索型ホラーゲームを作られている方のインタビュー記事です。ホラーに限らずゲーム製作に役立つ話があってとても勉強になります。例えば、マップには物語性を持たせた方が説得力のあるマップが作れる、といった話をされています。

ホラーゲーム制作のノウハウをシェアしよう!

青鬼2016」に関わった方のホラーゲームの考察がとても参考になります。ルールをシンプルにすること、アイテムの使い方に頭を使う、死んだキャラがそのまま生き返るのはNG、など。

頭を使わせるアイテムの使い道
  • 複数のアイテムを組み合わせる
  • 別の場所から見ると使うことができる
  • 一つのアイテムに複数の効果や使い道がある
  • 意外な場面でアイテムが役に立つ、もしくはアイテムを入手できる

怖いホラーゲームとは ~恐怖でアクセス数増加大作戦~

簡単にホラーゲームを作る方法について考察された記事がまとめられています。「怖いBGM」と「怖い顔が迫ってくる」という2つのポイントにより怖いゲームが作れる、という仮定を元に作った「エレベーターの呪い」は確かに怖かったです。

怖さの本質は「怪奇現象が起こりそうだけれど、それがいつ起こるかわからない」という状態が続き、意外なタイミングで怪奇現象が起こった時に恐怖を感じる、としています。

GDC 2019]解像度192×160ドットのレトロ調ホラーゲーム「FAITH」はなぜ恐いのか。開発者が語るセッションをレポート

こちらの記事では、低解像度、単色といったチープなグラフィックが逆に想像力を掻き立てられ「未知のものに対する怖さ」の演出に向いている、ということを主張しています。
あと、「ロトスコープ」という表現方法も、手軽に怖い映像が作れてとても良いと思いました。

もう1つ,アニメーション手法の1つ「ロトスコープ」を取り入れたこともポイントであるという。ようは写真や動画をPCに取り込み,画像編集ソフトを使って15fpsで動く手書き風のアニメーションを作ったというわけだ。

 トレイラー動画にも出てきたが,このアニメーションシーンは低解像度で色数も少ないグラフィックスによって,実に気持ち悪いものに仕上がっている。

ちなみに,アニメーションのもとになった実写の動画は,Smith氏自身がモデルとなって作ったものとのこと。いかにもインディーズゲームらしい手作り感といったところか。

外遊び・集団遊び 57種類まとめ

子供の遊びがまとまっています。ここからホラー向きのゲームシステムを考えてみるのも良いかもしれません。

特に「鬼ごっこ」遊びはゲームに使いやすいと思います。個人的には、影ふみ、ひょうたん鬼、靴取り、魚捕りはよいゲームシステムだと思いました。

参考になるかもしれないホラーゲーム

入手困難なものも含まれていますが、おすすめのホラーゲームを一通り紹介します。

死印

都市伝説やクトゥルフ神話などをベースに、グロテスク&エロティックなホラー作品となっています。もともとダンジョンRPGゲームにするつもりだったらしく、3DダンジョンRPGっぽい探索パートやゲーム性も面白いです。

 

死印 (出典:Steam)

死印の開発・販売元である「EXPERIENCE」は最近ホラーを主力製品にしようとしているのか、他にもホラー作品を発売していて、こちらもおすすめです。

流行り神

これは怪奇現象を調査するゲームです。

都市伝説のデータベースがあったり、都市伝説をモチーフにした話が満載で、都市伝説を知るためにはとてもよいゲームだと思います。

また登場人物の相関関係を推理するパートは、パズルっぽい推理が楽しめて推理ゲームが好きな人にもおすすめです。

真・流行り神(2以降)

真・流行り神は「1」は今ひとつですが、「2」以降はとても良い内容なのでおすすめです。

かまいたちの夜 (初代)

説明不要な気がしますが、サウンドノベルの黎明期を支えた名作ゲームです。選択肢によりストーリー展開が大きく変わり、なおかつ本格ミステリーの推理要素と連続惨殺事件の恐怖とのバランスがとても良くできたゲームです。

クロックタワー (1995)

ランダムで謎やストーリーが変化するという少し変わった探索ホラーゲームです。選んだ行動によってストーリーの結末が変化するマルチシナリオも当時としては斬新だったように思います。

現在プレイは困難なゲームですが、シザーマンの恐怖をぜひとも味わってほしい……。PlayStationの実機か、PS Vita (PSアーカイブ) などで遊ぶことができます。

ドキドキ文芸部!

少し変わり種のホラーゲームとして「ドキドキ文芸部!」を紹介しておきます。

見た目は恋愛ビジュアルノベルゲームで、ホラーと評価することはややネタバレとなりますが、人の心の内面に迫る描写やシチュエーションには、精神的なダメージを与えられ背筋が凍りました。

ジャンルとしては、 Psychological horror game (サイコホラーゲーム) と呼ばれるもので、精神的・心理的なダメージを与えてくるホラーゲームです。 Dating sim (恋愛ゲーム) の要素があったりショッキングなシーンも多いので、人を選ぶ内容ですが、少し変わったホラーを体験してみたい方にはとても参考になるかと思います。

参考になる映画

あまりホラー映画には詳しくないですが、個人的に参考になった映画を紹介します。

悪魔のいけにえ (1974)

サイコな殺人鬼を登場させるなら、殺人鬼「レザーフェイス」はとても参考になると思います。不気味なお面をつけてチェーンソーを振り回す姿はまさに狂気の殺人鬼! レザーフェイスは人間を殺すことに全く躊躇がなく、殺した後も、まるで魚を食料にするかのように、鉄のフックに吊るしたり、冷蔵庫に保管していたりします。

特に、狂気を感じさせる「ディナーシーン」はすごく秀逸ですので、イカれた殺人鬼を出すのであれば、一度は見ておいた方が良いのかなと思います

エクソシスト (1973)

こちらは悪魔に侵食される少女を描いたホラー作品です。悪魔に身体を乗っ取られることで「スパイダーウォーク」で階段を降りるシーン、「首が180度回転」するシーンなど、とにかくインパクトのあるホラー映像が観られるのが特徴です。

少しずつ精神を侵食される描写は、スプラッタホラーとはまた違った、精神的にゾクゾクくる独特なホラー感が得られますね。

シャイニング (1980)

個人的にあまり怖さは感じなかったのですが、スタンリー・キューブリック監督の独特の解釈によるホラー表現は、一度観ることをおすすめしたいです。

原作ではヒューマンドラマ的なストーリーでしたが、映画ではそういったものを排除して、ひたすら狂った男から逃げまとう奥さんとその子供、という得体のしれない怖さを描いていた印象です。

有名な「Here's Johnny!」のシーン、とシンメトリー構図で描かれる「双子の少女のシーン」は今見ても異様な不気味さを持っているので、これだけでも見てもらいたいですね…!

リング

Jホラーの金字塔ともいえる「リング」。映画の内容は知らなくても、呪いのビデオを再生するとテレビから出てくる「貞子」を知っている人は多いのではないかと思います。

ややネタバレですが、実は貞子が人間を襲っているシーンを明確に描写しているのは、最後あたりのシーンとなるのですよね…。そこまでは、噂や伝聞だけで貞子の怖さを表現していて、そのあたりの構成も素晴らしいと思います。

海外のスプラッター的なホラーではなく、得体のしれない身に迫るような恐怖を描きたい人には参考になるかも知れません。

面白いB級ホラー映画が分かる本

ホラー映画を6年かけて「2000本」以上観た著者による、優れたB級ホラー映画365本のガイドです。(意図的に駄作ホラーも12本含まれています)。

アジアンホラー(日本、韓国、タイなどのホラー映画)から、スラッシャー映画、モンスターホラー、ヴァンパイア映画、ゾンビ映画など幅広いホラーを紹介されていて、ホラーの本質を理解するのに役立つと思います。

参考になるかもしれない動画

ホラー系 YouTubeチャンネル

最近は YouTube で怖い怪談を聞いたり、テレビ番組のような心霊スポット巡りを見れるので、すごく参考になります

  • 雨穴 - YouTube:謎の覆面作家「雨穴」氏によるちょっとした違和感がホラーにつながる絶妙な構成が素晴らしい動画をアップロードしています。おすすめは「【不動産ミステリー】変な家
  • 島田秀平のお怪談巡り:ホラーゲームとは異なりますが実話系怪談が好きな人におすすめです
  • ヤミツキテレビ:怪談朗読チャンネルで、有名な怪談や効果音の演出がとても良く「創作系ホラー」なので、ホラーゲームを作るときの参考としてかなりおすすめです
  • ゾゾゾ:心霊スポットを巡るチャンネルですが、番組の構成が絶妙でホラーゲーム作りの参考になります
  • デニスの怖いYouTube:こちらも心霊スポットを巡るチャンネルです

関連記事

ホラー要素を作るときの考え方について、参考になる本を見つけたので、個人的にまとめた記事を書きました