Feedback loops (フィードバックループ)
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フィードバックループとは、ある行動に対する結果やそれにより得られた情報 (出力) をもとに、それ以降の行動をさらに改良・改善していくプロセス (入力) を継続的に繰り返すこと。 たとえば「PDCAサイクル」も、このフィードバックループの一種と言える。
ゲームデザインにおけるフィードバックループ
ゲームデザインにおけるフィードバックループとは、プレイヤーの行動の結果となる「成功」「失敗」が、将来の成功や失敗に影響する、と言い換えることができる。フィードバックループには「正のフィードバックループ (Positive feedback loops)」と「負のフィードバック (Negative feedback loops)」がある。
正のフィードバックループ
正のフィードバックループとは、ゲームを不安定・不均衡な状態へと導き、ゲームを進行させたり終了させるもの。
パラメータがインフレ化することで、ゲームを先に進める力が生み出される。例えば、敵を倒してレベルアップするとより強力なスキルを手に入れる。またはお金が手に入って装備品を強化する。これによりプレイヤーが有利となりゲームの均衡が崩れる。そしていずれラスボスを倒せるほどにプレイヤーは強くなる。
より大きな「正のフィードバックループ」を持つ例としては「コンボシステム」だ。ミスをせずに攻撃を当てたり敵を倒すことでより大きな報酬を得られる。金持ちが複利でその資産を大きく積み上げるように、雪だるま式に「成功」が「成功」を呼ぶという構造になっている。
「正の」という言葉のイメージだと「プラス方向」のみと考えられがちだが、「マイナス方向」への下落(負のスパイラル)も「正のフィードバックループ」の効果となる。
例えばファイアーエムブレムやXCOMのようにユニットの死亡が永続的にそのユニットを失うようなケース。キャラロストにより戦術的な選択肢が少なくなり「失敗」がさらなる「失敗」を呼ぶ、というのも正のフィードバックループである。
負のフィードバックループ
それに対して、ゲームを安定・均衡させ、ゲームプレイを停滞させるのが「負のフィードバックループ」。
わかりやすいのが、マリオカートでの順位に対する負のフィードバックループ。
- 順位が下がると強力なアイテム(キラー、サンダー)が手に入り、それにより順位を上げることができる
- 順位が上がるほど手に入るアイテムは弱くなり、特に1位はトゲゾーこうらで狙われやすくなる
フィードバックループが存在しないゲーム
ゲームジャンルによっては、意図的にフィードバックループを除外しているゲームがある。
例えば、 Fighting game (格闘ゲーム) ではラウンド終了時にステータスはリセットされる(一部のゲームでは例外あり)。また一般的な JRPG では一時的なバフやデバフは次回の戦闘に引き継がれない。ステージクリア型の Puzzle platform game (パズルプラットフォーマー) では獲得した特殊能力が次のステージに引き継がれないことがある。
フィードバックループの効果
正のフィードバックループの効果
・ゲームを先にすすめることでプレイヤーに達成感を与える
・勝ち始めたときにゲームの均衡 (パワーバランス) を崩し、勝負の決着をつける力が働く
→勝負が硬直状態や長期戦になることを防ぐ
・勝ち続けることでパラメータがインフレし、プレイヤーに高揚感を与える(JRPGのレベルアップ)
・失敗を繰り返し負の循環に陥る場合は絶望感を与える
・陣地を確保することで、より大きな報酬やゲームを有利にすすめるアドバンテージを得られる
→陣地を安全に移動できる、復活できる拠点が増える、など
ただし、正のフィードバックループは、負けがこむ(圧勝している相手に追いつけない、死の循環に陥る)場合にプレイヤーを「イライラ」させストレスを与えやすいデメリットがある。
XCOMでは、ユニットが死亡すると復活できず(キャラロスト→ Permadeath (恒久的な死) )、さらにそのミッションをやり直せないため弱いユニットで戦いを継続しなければならない。
つまり、ミスで死なせてしまうと虚弱な新人ユニット参加させなければならず、十分に成長させられないまま死なせてしまい、さらなる新人を投入しなければならない「負の循環」に陥ることとなる。
また、ミスをしなかった場合、ユニットの体力や能力が強化され続け、ゲームをゴリ押しで進められるほど強くなってしまい、これはこれで手応えのない作業感のあるゲームとなってしまう問題もある。
ただ、これらの問題にまったく対策しなかったわけではなく、新人の出撃を強制する低レベルミッションや毎回同じメンバーで全員出撃させることを防ぐ分隊ミッションが用意された。
デビルメイクライでは、ハイスコアを獲得するとより多くのレッドオーブが手に入り、強い武器や回復アイテムが購入可能となる。これは正のフィードバックループである。
しかし、上級者によってはキャラクターの強化という手助けはゲームを簡単にしてしまう。そして苦戦しているプレイヤーは、必要なアイテムが買えなくなってしまう。
PyreはXCOMと似たゲームシステムを採用している
- ユニットは勝つとレベルアップして強くなる
- 一度終了したバトルをやり直してユニットを強化することができない
- 同じユニットを使い続けることで、さらなる強化が可能である
だが、Pyreでは「正のフィードバックループ」と「負のフィードバックループ」を組み合わせることで、インフレと負の連鎖の問題を解消している
- 勝ったほうが良いが、負けたとしても多少の経験値を得ることができる
- XCOMと異なり、 Permadeath (恒久的な死) がない
- 「釈放システム」により強くなりすぎたキャラを使い続ける問題を解決した
- キャラクターが一定の強さ(階級)に達成すると釈放しないといけない
- しかし、物語でキャラクターに感情移入させ、手放す理由を作り上げた
- 勝利がキャラクターの精神的成長を促し、優れたドラマをプレイヤーの手で作ることとなる
- 有能で手放したくないキャラを物語の進行上、手放すことに躊躇しなくさせている
- 試合中、得点を入れたキャラは次に点が入るまで参加できない
- 失点したチームは相手に対して優位性が得られる
- 強キャラだけで試合に勝つことはできないようになっている
- ドンキーコング: 収集アイテムの「KONG文字」は、上級ステージを開放するための条件となっている
- Celeste: 収集アイテムはより上級プレイをしないと獲得できないようになっていて、上級ステージの開放条件となっている
負のフィードバックループの効果
・均衡させる力が働くことで、勝ちすぎたり、負けが決定的になることを防ぐ効果がある
→「反撃」や「逆転」が生まれやすく、全員が楽しく遊べるパーティゲームに向いている(大富豪の「革命」など)
・プレイヤーが強化に対して、より強い敵が出現させてゲームバランスを取る
・死亡時に状態をリセットするだけにすることで、死のペナルティを減らす
ただし、負のフィードバックループは、ゲームのプレイスキルとは無関係な部分で抑え込まれるため上手いプレイヤーに「不公平感」を与えるデメリットが有る。また正しくプレイしているはずの上手いプレイヤーを罰するため、勝負に対する「曖昧な印象」を残す。「反撃」や「逆転」が可能となる負のフィードバックループはパーティゲームとして盛り上がりやすいメリットはあるが、その反面、競技性が低くなる。
成功し続けると難易度が上がり、失敗すると難易度が下がる「可変難易度システム」は負のフィードバックループである。
このシステムは、プレイヤースキルとゲームバランスが拮抗し、常に緊張感がある状態でゲームできるためプレイヤーは「ゾーン状態」に入れる没頭感を与える。
その反面、上級者に「ミスをしろ」と罰を与えようとしている。
参考
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