ホラーゲームの作り方

この記事ではホラーゲームの作り方を解説します。

ゲームの方針を決める

まずはホラーゲームで表現したい怖さを選びます。表現したいものによって適切なフォーマットを選ぶのが作りやすいと思います。

例えば、“キャラクター” や “シナリオ” に焦点を当てる場合は、「ノベルゲーム」が良いです。例としては「弟切草」「かまいたちの夜」「ひぐらしのなく頃に」などです。ノベルゲームは長い文章を使って、細かい表現ができるので、人の内面や狂気に至るまでの過程、精神的な葛藤を描くことができます。

テキスト主体のノベルゲーム「ひぐらしのなく頃に」(出典:Steam)

“ゲームシステム” で怖さを表現する場合には「探索」型が良いです。例えば「バイオハザード」「クロックタワー」「青鬼」「コープスパーティ」などのマップを移動して探索するタイプのゲームです。

出典:Steam
  • “キャラクター” や “シナリオ” に焦点を当てる:ノベルゲーム
  • “ゲームシステム” で怖さを表現する:探索型ゲーム

もちろん、どちらかの形式に限定しなければならない……ということはなく、両立も可能です。

探索型には、プレイヤーを調査して操作する “マップ移動タイプ” と、コマンド選択で移動を行う “コマンド移動タイプ” の2つが考えられます。マップ移動タイプの方が移動の自由度が高く、リアルタイムのアクション要素を付与しやすいです。コマンド移動タイプは選択肢を選ぶことがゲームのコアとなり、また画面をクリックして探索を行うもので、素材が一枚絵で済むため、素材作成と実装難易度が比較的低くなります。また非リアルタイムとなるためじっくり考えるタイプのゲームとなります。

ポイントクリックタイプのホラーアドベンチャーゲーム「死印」(出典:Steam)
  • マップ移動タイプ:マップの実装コストが高い。アクション要素を付与しやすい
  • コマンド移動タイプ:実装コストが比較的低い。ターン性や画面をクリックするゲームになる

マップ移動タイプにはカメラをどう扱うかの問題があります。三人称視点としてカメラを固定するか、一人称視点とするか。

  • 三人称視点:わかりやすい操作性
  • 一人称視点:迫力がある。没入感が得られやすい

三人称視点は、視界が広くて敵との距離を取りやすいというゲーム性でのメリットがありますが、迫力の面で一人称視点に劣ります。一人称視点(3Dリアルタイムゲームの場合)は没入感を得られやすいメリットがありますが、状況把握が難しいので自分の周りだけミニマップ表示するなど、遊びやすくする工夫が必要になると思います。
一人称視点の良い例として、コマンド移動タイプの類型といえるかもしれませんが「Five Nights at Freddy’s」のように、視点をある程度固定させるのも良いかもしれません。(Five Nights at Freddy’s は基本的に移動はできず、監視カメラの切り替えやどの扉を閉めるのかという視点の切り替えのみ可能としています)

Five Nights at Freddy’s の監視カメラ切り替え (出典:Steam)

「バイオハザード」は、お化け屋敷のようなアトラクション型で、どこから襲ってくるかわからない敵そのものに怖さを感じることができます。この類型としては「サイレントデバッガーズ」「エネミーゼロ」のような “敵の場所を音で表現する” といったシステムも恐怖を表現するのに有効です。

また、敵と戦うゲームとする場合、回復アイテムや武器の弾薬、セーブ回数を制限し、リソースを「制限」することで “なんとか生き延びなければ” といったサバイバルホラー的なゲームシステムを構築することができます。

  • 敵を「倒す」ゲーム:敵を倒すためのリソースを制限することでサバイバル的なホラーになる
  • 敵から「逃げる」ゲーム:敵に見つからないようにするステルス、またはギミックで回避するパズル

あえて操作を不自由にする

アクション要素が強いゲームとする場合、操作方法をあえて不自由にすることで、より恐怖を増すことができます。例えば、バイオハザードは主人公キャラをラジコン操作で行います。これは、おそらくカメラを固定させる仕様にした際、画面によって操作方法の混乱を防ぐために採用されたのではないかと思います。
ただ結果として、ラジコン操作は直感的でないため、敵が突然出現したときに焦ってキャラクターをうまく操作できず、プレイヤーをよりパニック状態に陥らせることができました。
また操作性の悪さは、敵の攻撃回避にも影響を与えるので、ギリギリで回避することが難しく、プレイヤーに慎重にプレイさせる効果もあります。

ですが、2Dゲームでのキャラクターをラジコン操作にするのは、一般的にはあり得ないので「移動速度を遅くする」「ダッシュ移動に制限を持たせる」「攻撃開始までの発動フレームが長く存在する」「攻撃の射程範囲を短くする」など、操作キャラクターの機動性能や攻撃性能を控えめにした方が良いと思います。

またホラーにおけるシナリオの傾向として「か弱い人間を主人公にするとよい」というものがあります。屈強な兵士が怪異に怯える姿は想像しにくいですが「子供や女性、気の弱い人間、怪異が苦手な人間」はホラーの主人公向きです。例えば初代クロックタワーの主人公は若い女性で、シザーマンから走って逃げるときにたまに何もないところでつまづいて転ぶ、というシステムが用意されており、それにより敵から逃げる緊張感が高まります。これは操作を不自由にする(たまに転ぶ)ことで恐怖を増すための良い方法かもしれません。


ただ「青鬼」にて、倍速移動が高難易度や RTA をするプレイヤーに受け入れられたことを考えると、ゲームスピード全体を速くする仕様を盛り込んでおくと、幅広く遊ばれる可能性があります。

即死にするか。体力制にするか

プレイヤーのミスによるペナルティをどのように扱うか、という問題があります。
「プレイヤーのミス=即死」にするとゲームに緊張感が生まれます。また、即死ということは回復アイテムも必要ないので、わかりやすいゲームシステムとなります。ただ、即死がシビアと感じるプレイヤーには厳しいゲームとなるかもしれません。

それに対して、体力制にすると、ゲームっぽさが出てしまい没入感が少し失われますが、体力の低下で危機を演出できる効果があります。

ひとまず、ホラーゲームを作り慣れないうちは即死が良いと思います。理由としては体力制にすると、ゲームがうまいプレイヤーはダメージをあまり受けず、怖さを感じずゲームをクリアしてしまうかもしれません。逆に、難しくしすぎるとクリアできなくなってしまいます。
といったように、体力制を導入するとゲームバランスを取るのが難しくなる、また要素が増えて複雑なゲームとなってしまうので、”即死” にした方がお手軽かと思います。

初見殺しをするかどうか

ホラーゲームは死の恐怖を前面にフィーチャーしたゲームジャンルです。死の恐怖を最も表現できるゲームの要素は「ゲームオーバーになるかもしれない」というものです

とはいえ「唐突に死亡イベントを発生させていいのか」という問題があります。
例えば、鏡を調べると手が伸びてきて、プレイヤーを殺すイベントが発生するとします。これはプレイヤーをドキっとさせる効果はありますが、突然ゲームオーバーになるのは理不尽です。もしこのようなイベントを作るのであれば事前に「この鏡は危険だ」ということを感じさせる警告を出すべきです。もちろんあからさまに直接的な危険性を示すと恐怖感が出なくなるので「なんとなく危険かも…」という予兆で十分です。

基本的には「初見殺しはよくない」と考えておいた方が間違いありません。ゲームオーバーはプレイヤーが納得できないと、再びプレイさせる動機を奪いかねません。なので、即死でゲームオーバーにするには正当な理由を用意しておく必要があります。その手間を考えると “初見殺し” は限られた場所だけに使った方が良いと思います。

もし初見殺しを多くしたい場合、どこでもセーブできるようにしたり、ゲームオーバー後、素早くリトライで直前に場所に戻れるようするのも1つの方法です。
例えば「クロックタワー」は初見殺しの即死トラップが多いですが、ゲームオーバーになっても直前からリトライできる仕組みを用意しています。ただ、これはこれで、死亡に対するリスクが減少しているので、死んでもデメリットは少ないと気づいてしまい、恐怖感が減るかもしれません。

シンプルなゲーム性にする

ホラーゲームはシンプルなゲーム性にした方が、恐怖を演出しやすいです。ルールが複雑だと、ゲームに入り込みづらくなってしまうためです。

例えば「青鬼」は “かくれんぼ”、”鬼ごっこ” ですし、「Five Nights at Freddy’s」は、”だるまさんが転んだ” です。

子供のころの遊びはわかりやすい原始的な欲求であり、これをゲームシステムとして採用すると、世界に入りやすく恐怖を感じられるものになりそうです。

一貫性の原則を破る

通常のゲームは一貫したルールを守るのが基本となります。しかしホラーゲームはあえてこのルールを破ることでプレイヤーに驚きを与えることができます。

例えば、動かない石像。
それまで単なる背景オブジェクトと思っていたものが、ゲーム後半で突然動いてプレイヤーを驚かせる、というのもギミックとしては良いです。ただし、それによりプレイヤーを直ちに殺してはいけません。だまし討ちの初見殺しはユーザーを不快にさせるだけだからです。

探索・パズル要素

探索主体のゲームとする場合、プレイヤーに考えさせるためにパズル要素が入ることが多いです。というのも、敵と戦ったり、敵から逃げたりするだけでは、ゲームとして飽きられやすいからです。

暗号や図形パズルなど、ほどよく頭をつかう要素を入れるとゲームにメリハリが生まれます。ただできればストーリーやキャラクターを理解するためのヒントとなるキーワードを答えにしてその謎が存在する必然性を考慮した方が良いです。

物語の舞台や世界観・ストーリー

ホラーの舞台としては「人里離れた洋館」や「旧校舎」「だれも住んでいない家」「さびれた病院」「地下室」「廃墟」などの暗くてジメジメした閉鎖空間がよく使われます。そういった空間に迷い込んだ主人公たちが閉じ込められてしまう…というのがよくあるパターンです。
そういった場所はあまり日が当たらなくて常に薄暗い雰囲気になっていることが多いです。

そして、その場所には何らかの怪異が住んでいて、何らかの理由で主人公たちを追いかけ回します。その怪異は「不死身」だったり「強大な力」を持っていて、完全に倒すことができません。そのため、主人公たちはその場所から何とかして脱出しようとします。

ホラーものの結末としてよくあるのが、以下のパターンではないかと思います

  • 閉鎖空間の存在理由を破壊したため、その場所が崩壊し消滅した
  • 怪異を倒して平和が訪れた…ように見えたが実は生き残っていた
  • 怪異の存在を世間に公表にしようとしたが、証拠は何も残っていなかった
  • 怪異は主人公たちと契約を結び、共生する道を選んだ
  • 怪異(怨霊)は無念を晴らし、成仏して消滅した

また負の感情(憎しみ、怒り、恨み、妬み、悲しみなど)をテーマに入れると陰湿なホラーシナリオになります。悪質ないじめやパワハラによる自殺、弱みを握られ脅され続けた、将来有望なスポーツ選手が事故で身体能力を失って絶望、汚職のために利用されて口封じに殺された、浮気や不倫や失恋……、などなど。悪霊や怪異はそういった負の感情を媒体に発生しやすいとされています。

怖いサウンドを使う

怖さの演出としては、サウンドの使い方がとても重要です。
BGMは控えめにして、怖さを表現する不快なSEを使うと、お手軽に怖さを演出できます。またドアの開閉音をリバーブを深めにすると雰囲気が出ます。
メニューなどのシステムSEも怖さを感じる重めのものを使うとよいかと思います。

効果音作成の参考になる本

FLStudioの無料版を使って効果音を作る方法が紹介されており、効果音づくりの基本が学べる本となっています。

また、ホラー系ゲームで必須となる「生音」の効果音の作成法も紹介されていて、とても勉強になります。

既存の物語を借用する

物語や世界観を構築する場合は、空想上の怪物や、怪談、都市伝説などを借用すると恐怖のイメージが作りやすい気がします。

朝里樹先生の都市伝説に関する本はどれもしっかりまとまっていて、特に以下の本は怪異の入門用としておすすめです。

ただ、個人的には事典から入るよりも物語形式でストーリーを楽しみながら分析するのが良いと思っています。

遊べる環境はかなり制限されてしまうのですが、個人的に「日本一ソフトウェア」さんの「流行り神」シリーズがおすすめです。このシリーズでは実在(?)の都市伝説がモチーフにされていて、特に初代流行り神の「さとるくん」「カシマレイコ」の話の怖さはなかなかだと思っています。またこのシリーズはゲーム中に「都市伝説のデータベース」みたいなものが見られてとてもためになります。

ただし最新シリーズの「真・流行り神」は評判があまり良くないので注意が必要です。

もしくは小学生女子向けのホラーですが「ミラクルきょうふ!」が子供向けということもあってシンプルな物語構造となっているため、分類・分析しやすいと思います。

実写画像をホラー素材として使う

実写画像は明度を下げて、色相を青に近づけると、怖い画像になります。

左が加工前で、右が加工後です。本来なら暗くするのであれば照明を消した画像を用意した方が良いですが、細かいことを気にしない場合は、こういった加工もありではないかと思います。

ホラーゲームを作るのに参考になる記事

名作フリーゲーム制作者が考える「ゲームの作り方」のコツとは? 小麦畑主宰 oumi氏インタビュー

探索型ホラーゲームを作られている方のインタビュー記事です。ホラーに限らずゲーム製作に役立つ話があってとても勉強になります。例えば、マップには物語性を持たせた方が説得力のあるマップが作れる、といった話をされています。

ホラーゲーム制作のノウハウをシェアしよう!

「青鬼2016」に関わった方のホラーゲームの考察がとても参考になります。ルールをシンプルにすること、アイテムの使い方に頭を使う、死んだキャラがそのまま生き返るのはNG、など。

頭を使わせるアイテムの使い道

複数のアイテムを組み合わせる

別の場所から見ると使うことができる

一つのアイテムに複数の効果や使い道がある

意外な場面でアイテムが役に立つ、もしくはアイテムを入手できる

怖いホラーゲームとは ~恐怖でアクセス数増加大作戦~

簡単にホラーゲームを作る方法について考察された記事がまとめられています。「怖いBGM」と「怖い顔が迫ってくる」という2つのポイントにより怖いゲームが作れる、という仮定を元に作った「エレベーターの呪い」は確かに怖かったです。

怖さの本質は「怪奇現象が起こりそうだけれど、それがいつ起こるかわからない」という状態が続き、意外なタイミングで怪奇現象が起こった時に恐怖を感じる、としています。

[GDC 2019]解像度192×160ドットのレトロ調ホラーゲーム「FAITH」はなぜ恐いのか。開発者が語るセッションをレポート

こちらの記事では、低解像度、単色といったチープなグラフィックが逆に想像力を掻き立てられ「未知のものに対する怖さ」の演出に向いている、ということを主張しています。
あと、「ロトスコープ」という表現方法も、手軽に怖い映像が作れてとても良いと思いました。

もう1つ,アニメーション手法の1つ「ロトスコープ」を取り入れたこともポイントであるという。ようは写真や動画をPCに取り込み,画像編集ソフトを使って15fpsで動く手書き風のアニメーションを作ったというわけだ。

 トレイラー動画にも出てきたが,このアニメーションシーンは低解像度で色数も少ないグラフィックスによって,実に気持ち悪いものに仕上がっている。

ちなみに,アニメーションのもとになった実写の動画は,Smith氏自身がモデルとなって作ったものとのこと。いかにもインディーズゲームらしい手作り感といったところか。

  • [GDC 2019]解像度192×160ドットのレトロ調ホラーゲーム「FAITH」はなぜ恐いのか。開発者が語るセッションをレポート
  • 外遊び・集団遊び 57種類まとめ

    子供の遊びがまとまっています。ここからホラー向きのゲームシステムを考えてみるのも良いかもしれません。

    特に「鬼ごっこ」遊びはゲームに使いやすいと思います。個人的には、影ふみ、ひょうたん鬼、靴取り、魚捕りはよいゲームシステムだと思いました。

    参考になるホラーゲーム

    入手困難なものも含まれていますが、おすすめのホラーゲームを一通り紹介します。

    死印

    都市伝説やクトゥルフ神話などをベースに、グロテスク&エロティックなホラー作品となっています。もともとダンジョンRPGゲームにするつもりだったらしく、3DダンジョンRPGっぽい探索パートやゲーム性も面白いです。

    死印 (出典:Steam)

    流行り神 (初代)

    都市伝説をベースに怪奇現象を調査するゲームです。登場人物の相関関係を推理するパートは、パズルっぽい推理が楽しめて推理ゲームが好きな人にもおすすめです。

    かまいたちの夜 (初代)

    説明不要な気がしますが、サウンドノベルの黎明期を支えた名作ゲームです。選択肢によりストーリー展開が大きく変わり、なおかつ本格ミステリーの推理要素と連続惨殺事件の恐怖とのバランスがとても良くできたゲームです。

    クロックタワー (初代)

    ランダムで謎やストーリーが変化するという少し変わった探索ホラーゲームです。選んだ行動によってストーリーの結末が変化するマルチシナリオも当時としては斬新だったように思います。

    現在プレイは困難なゲームですが、シザーマンの恐怖をぜひとも味わってほしい……。PlayStationの実機か、PS Vita (PSアーカイブ) などで遊ぶことができます。