Tiled Map Editorの使い方

このページでは高機能なレベルエディタである Tiled Map Editor の使い方を紹介します。

目次

Tiled Map Editorの仕組み  

Tiled Map Editorが扱うデータ構造

Tiled Map Editorが扱うデータ(*.tmx)のデータ構造は以下のとおりです。

TMX
  +-- version : バージョン番号
  +-- orientation : 向き
  +-- width : 幅
  +-- height : 高さ
  +-- tilewidth : チップの幅
  +-- tileheight : チップの高さ
  +-- property : プロパティ
  |     +-- name : キー
  |     +-- value : 値
  |
  +-- tileset : タイルセット
  |     +-- firstgid : 開始チップID
  |     +-- name : 名前
  |     +-- tilewidth : チップの幅
  |     +-- tileheight : チップの高さ
  |     +-- image
  |           +-- source : タイル画像のファイル名
  |           +-- width : 画像の幅
  |           +-- height : 画像の高さ
  |
  +-- layer : レイヤー
  |     +-- name : レイヤー名
  |     +-- width : レイヤーの幅
  |     +-- height : レイヤーの高さ
  |     +-- properties
  |     |     +-- property
  |     |           +-- name : キー
  |     |           +-- value : 値
  |     |
  |     +-- data
  |           +-- encoding : データの種類(base64 / csv)
  |           +-- データ値
  |
  +-- objectgroup : オブジェクトグループ
        +-- color : 透過色
        +-- name : 名前
        +-- width : オブジェクトレイヤーの幅
        +-- height : オブジェクトレイヤーの高さ
        +-- opacity : 透過値(0.0~1.0)
        +-- object : オブジェクト
              +-- name : 名前
              +-- type : 種別
              +-- gid : チップID
              +-- x : X座標
              +-- y : Y座標

上記は全体の構造ですが、重要な部分に絞ると以下のようにシンプルなものです。

TMX
  +-- tileset : タイルセット
  +-- layer : レイヤー
  +-- objectgroup : オブジェクトグループ
        +-- object : オブジェクト

それぞれにプロパティとして、キーと値のペアを持つデータを指定することができます。

タイルセット  

タイルセットとは、配置するチップのセットです。タイルセットは複数存在することができます。

レイヤー  

レイヤーとは、配置したチップ情報の集まりです。データとしては、チップIDの単なる配列となります。 レイヤーには主に背景チップを配置します。理由はレイヤーの1つのタイルにはチップIDしか情報を持たせられないためです。 ただし、ゲームオブジェクトがID情報だけで事足りる場合には、レイヤーに乗せてしまったほうが、TiledMapEditor上での編集が楽になります。

オブジェクトグループ  

オブジェクトグループとは、オブジェクトの集まりです。オブジェクトはレイヤーのチップとは異なり、複雑な情報を持たせられます。そのためゲームオブジェクトはこちらの情報を元に生成するのが、一般的な処理となります。

オブジェクト  

オブジェクトには、XY座標・チップIDに加えて、名前と種類を設定することができます。

使いこなし方法 

日本語化する

もし日本語化されていない場合はメニューから「Tiled > Preferense」を選びます。

そして、Interface から「Japanese」を選ぶと日本語化されます。

基本的な使用手順

新規マップの作成

「新しいマップ…」を選んでマップを作成します。

次にマップの種類を選択します。

  • 種類:□型タイル(RPGツクールのようなマップ)、◇型タイル(クォータービュー)
  • タイルの出力形式:タイルのデータフォーマット。通常は CSV(カンマ区切り)が読み込みやすいと思います。
  • マップの大きさ:並べるタイルの数を指定します
  • タイルの大きさ:マップチップの大きさ。通常は 32×32 が良いと思います

tmxファイルの保存

作成するtmxをいったん保存します。

マップが作成されました。

なおマップの情報は左側のプロパティから変更可能です。マップを広すぎたり狭すぎる場合には、「タイルの幅」「タイルの高さ」から修正できます。

タイルセットの作成

次にタイルセットを作成します。タイルセットとはマップに配置する「地面」、「木」や「岩」などの画像です。

タイルセットを作成するには、右下にある「新しいタイルセット…」を選びます。

タイルセットの設定を行います。

  • 名前:タイルセットの名前を指定します
  • マップに埋め込みタイル情報を別のマップデータでも流用したい場合はここにチェックを入れます
  • 画像 > パス:タイルセットに使用するマップチップ画像を指定します
  • タイルの幅・高さ:タイルセットの画像サイズを指定します

この記事ではマップチップ画像は「ぴぽや倉庫」さんからお借りしたものを使っています。

タイルセットの画像が設定できると、このようにマップチップ画像が表示されます。

次に地面のチップを配置したいので、レイヤー の「タイルレイヤー1」と表示されている部分をダブルクリックして「地面」に名称を変更します。

そうしたら、地面のチップを選びバケツツールを選択して、地面で塗りつぶします。

タイルの配置ツールについて、主に使うものを説明すると以下の5つあります。

  • スタンプツール:選択しているタイルを1つだけ配置する
  • バケツツール:選択しているタイルで塗りつぶす
  • 消しゴムツール:配置したタイルを消去する
  • 範囲選択ツール:まとめて選択して移動や消去、コピーができる(解除する場合はメニューから「編集 > すべて選択解除)
  • 自動選択ツール:隣り合っている同じタイルをまとめて選択する(解除する場合はメニューから「編集 > すべて選択解除)

障害物レイヤーを作成

続けて地面の上に配置する障害物レイヤーを作成します。「レイヤー」ウィンドウで右クリックして、「新規 > タイルレイヤー」でタイルレイヤーを追加します。

次に障害物レイヤーを選択、スタンプツールでタイルからチップを配置していきます。

ショートカットキー

よく使うショートカットキーをまとめておきました。マウス操作も混ざっています。

分類項目キー
ツール選択スタンプツールB
消しゴムE
バケツF
範囲選択R
編集元に戻すCmd+Z
やり直すCmd+Shift+Z
スタンプ直線を引くShift+左クリック
円を描くCmd+Shift+左クリック
スタンプを垂直方向にフリップY
スタンプを時計回りに回転Z
スタンプを反時計回りに回転Shift+Z
チップ変更スポイト(マウスの下にあるチップを選択)ビュー上で右クリック
指定の範囲を複製マウス右ドラッグ
チップ番号のストアCmd+1〜9
ストアに保存しているチップ番号に変更1〜9
範囲選択削除Delete / Backspace
切り取りCmd+X
コピーCmd+C
貼り付けCmd+V
選択解除Cmd+Shift+A
表示拡大Cmd+「+」/ Cmd+ホイール上 / ミニマップ上でホイール上
縮小Cmd+「-」/ Cmd+ホイール下 / ミニマップ上でホイール下
拡大リセットCmd+0
ビューのスクロールSpace+マウス移動 / マウスホイールクリック+マウス移動 / ミニマップ上でクリックorドラッグ / カーソルキー
その他F5コマンドの実行

より詳細なショートカットキーは以下のリンクを参考にしてください。

ミニマップ  

横長のマップを編集したい場合  

横スクロールのゲームでマップを作る場合は、ミニマップの配置を下に置くと良いです。

ミニマップをマウス左ドラッグすることでスクロールできるので、作業効率がアップします。

タイルセット  

チップ番号のストア  

チップを選択してCmd+1〜9を押すと、選択中のチップ番号がストアに保存されます。そして1〜9を押すことで対応する数字に保存したチップ番号に変更されます。

複数のタイルを組み合わせたスタンプの作成  

タイルセットを左ドラッグします。

すると複数のタイルを選択できます。

作成済みのチップの配置情報を複製する  

スタンプツールを選択肢、複製したい領域をマウス右ボタンドラッグします。

すると指定した領域が複製できます。

範囲選択  

まとめて削除する  

まとめて削除する場合、消しゴムで1つ1つ消すのは大変です。 そこで、選択範囲ツールを選択肢てマウス左ドラッグで範囲選択します。

その状態でCmd+X(またはDeleteキー / Backspaceキー)すると、まとめて消すことができます。

まとめて移動する  

範囲選択ツールで選択した後、Cmd+Xで切り取り、Cmd+Vで複製モードに入り、左クリック貼り付けることで、まとめて移動することができます。

まとめて複製する  

範囲選択ツールで選択した後、Cmd+Cでコピーして、Cmd+Vで複製モードに入り、左クリックで貼り付けます。

複製モードの解除  

別のチップを選択したり、右クリックでスポイトすることで解除できます。

選択範囲の追加  

左ドラッグで選択した状態で、さらにShift+左ドラッグします。

すると、選択範囲を追加できます。

選択範囲を削る  

すでに選択した範囲を、Cmd+左ドラッグします。

するとドラッグした範囲が削られます。

コマンド  

Tiledからゲームを起動する  

Project.xmlが存在する場所に以下のシェルスクリプトを配置します。(ファイル名は「exec.sh」とします)

#!/bin/sh

cd `dirname $0`
lime test neko

そして、サイコロアイコンの左側にある小さな三角ボタンをおして、コマンドの編集を選択します。

コマンド編集画面が表示されるので、配置したスクリプトのパスをフルパスで指定します。

すると歯車アイコンをクリックすることでゲームが起動できます。またはF5から起動することもできます。

Windowsの場合は以下のバッチファイルを用意します

:: ドライブ変更
cd /d %~d0
:: カレントディレクトリ変更
cd %~dp0

:: 実行
lime test neko

実行ツールで以下のようにバッチファイルがあるパスを指定すれば、実行できます。

自動マッピングのやりかた 

自動マッピングとは  

自動マッピングとは、配置したマップのタイルを入力として、特定のルールを元に、タイルレイヤーを自動生成する方法です。これにより以下のメリットが得られます

  • 作業の効率化: 少ない時間で定型的な作業を完了できます。これにより作業時間を減らし、作業速度をアップすることができます
  • 入力ミスの削減: 自動化により入力ミスを減らします。適切にルール設定ができていればエラーは発生しません

自動マッピングの仕組み 

  1. 元となるデータを「main.tmx」とします。ここにObjectsレイヤーを作成します
  2. 次にrules.txtを作成します。ここにはルールファイルを定義します
    1. 例では、「rule1.tmx」「rule2.tmx」を参照する設定をしています
  3. rule1.tmx、rule2.tmxにルールの定義を設定します
    1. このときレイヤー名に気をつけます
    2. 入力情報となるレイヤーには「input_もとのレイヤー名」
    3. 出力情報には「output_出力レイヤー名」とします
  4. rules.txt / rule1.tmx / rule2.tmx が適切に設定されていれば、「main.tmx」のメインメニューから「マップ > 自動マップ」を選ぶと、「Collision」レイヤーが自動生成されます

基本 

素材のダウンロード  

まずは素材として、こちらの map.png をダウンロードします。

map.png

main.tmxの作成  

元となるマップデータを作成します。Tiled Map Editorを起動して、新規作成します。

マップの大きさは「8×8」、タイルの大きさは「32px」とします。 続けて、タイルレイヤーを追加します。

「Background」「Objects」の2つのタイルレイヤーを作成します。Backgroundには通行可能なタイル、Objectsには通行できないタイルを配置します。 タイルセットにはダウンロードした「map.png」を設定します(マップ > 新しいタイルセット)。

そうしたら、Backgroundレイヤーに草原を配置します。

次に、Objectsレイヤーに木を配置します。

自動マッピングテキスト(rules.txt)の作成  

テキストエディタを開いて、以下のように記述します。

rule1.tmx

記述できたら、main.tmxを保存したフォルダと同一のところに、ファイル名を「rules.txt」として保存します。

自動マッピングルール(rule1.tmx)の作成  

Tile Map Editor から新規作成を選んで、ルールを作成します。 マップサイズはいくつでも構いませんが、わかりやすくするために「1×1」にしておきます。

そして、ルール用のレイヤーを作成します。

  • input_Objects: 入力レイヤー
  • output_Collision: 出力するコリジョンのレイヤー

タイルセットにはダウンロードした「map.png」を設定します(マップ > 新しいタイルセット)。

では、ルールを作成します。 「input_Objects」レイヤーを選択して、木を配置します。

これにより、Objectsレイヤーに「木が配置されていたら〜」という条件を指定できます。 次に、「output_Collision」レイヤーに、バッテンマークのコリジョンを配置します。

これにより、「Collisionレイヤーにはバッテンマークを配置する」という出力を指定できます。

では、ファイル名を「rule1.tmx」として、main.tmx / rules.txt と同一のフォルダに保存します。

自動マッピングの実行  

main.tmxを開いて、メインメニューから「マップ > 自動マップ」を選びます。

しかし、エラーメッセージが表示されてしまいます。

これはrule1.tmxに、入力/出力とする領域(region)が設定されていないためです。

Regionの設定  

領域(region)とは、有効な入力となる範囲や出力を行う範囲の設定です。

では、再び、rule1.tmxを開きます。そして、Region用のタイルセットを追加します。 タイルセットはこちらの「rules.png」をダウンロードして使います。

「RI」とは、「regions_input」の頭文字を取ったものです。「RO」は「regions_output」です。

メインメニューから「マップ > 新しいタイルセット…」を選び、画像の「パス」に「rules.png」を指定します。 タイルセットを追加できたら、レイヤーを追加します。

「regions_input」「regions_output」を追加しました。 次に、「regions_input」レイヤーを選んで、「RI」タイルを配置します。

続けて、「regions_output」レイヤーに「RO」タイルを配置します。

そうしたらrule1.tmxを保存します。

再び自動マッピングを実行  

main.tmxを開いて、メインメニューから「マップ > 自動マップ」を選びます。すると、自動マッピングが実行され、Collisionレイヤーが追加されます。

完成データ  

今回の自動マッピングの完成データ一式はこちらにあります。うまく行かない場合は、こちらの設定と比較しながら違いを確かめていきます。

Regionの仕組みを理解する  

Regionの仕組みを理解するために、rule1.tmx を修正してみます。rule1.tmx を開いて、「マップ > マップサイズを変更…」を選びマップサイズを変更します。

マップサイズを「3×3」に変更します。

変更したら、まずは「input_Objects」レイヤーだけを可視化して、中央にだけ木を配置します。

次に、「output_Collision」レイヤーに、コリジョン(バッテン)をすべての場所に配置します。

木の周りにもコリジョンを配置するようにしました。 続けて、「regions_input」レイヤーを選び、「RI」タイルを中央に配置します。

最後に、「regions_output」レイヤーを選び、「RO」タイルをすべての場所に配置します。

では保存して、main.tmx を開き、自動マッピングを実行してみます。

木の周りにもコリジョンが自動配置されました。このようにRegionの範囲を広げると、そのぶんだけ対象を広くすることができます。 ……ただ右上だけはうまく配置されていませんね。原因は不明ですが、木の位置を下にずらすとうまく配置されるので、配置を工夫しなければならないのかもしれません。

オートタイル  

RPGツクール や WOLF RPGエディターで採用されている、オートタイルを実現する方法を説明します。 ここでは、足場の右側に何もなかったら、そのタイルは右端用のタイルとする、という自動マッピングを行います。

このように配置したタイルを……、

自動でこうなるようにします。

素材のダウンロード  

オートタイルを作成するために、素材画像をダウンロードします。

素材の内容は、以下の3つの画像です。

base.png: オートタイルの元となる画像
tileset.png: オートタイルで出力する画像
rules.png: Region定義用の画像

main.tmxの作成  

Tiledを起動して、8×8のサイズで新規作成します。

  1. レイヤー名を Base に変更します
  2. タイルセットとして、base.png / tileset.png を読み込みます
  3. baseタイルセットから以下のようにタイルを配置します

ファイル名を main.tmx として保存しておきます。

rules.txtの作成  

テキストエディタから以下のように記述して、rules.txtというファイル名で保存します。

rule1.tmx

rules.txt は、main.tmxと同一のフォルダに配置します。

rule1.tmxの作成  

ルールを作成します。 Tiledを起動して、5×5のサイズで新規作成します。

作成できたら、rules.png / base.png / tileset.png のタイルセットを作成します

regisons_inputレイヤーの作成  

regions_input レイヤーを作成します。「タイル・レイヤー1」が自動で作成されているので、それをリネームします。 そして rules タイルを以下のように配置します。

タイルはこのように配置しました。

inputnot_Baseレイヤーの作成  

続けて、inputnot_Base レイヤーを作成します。

タイルは左から4番目に配置しました。 この「inputnot_Base」レイヤーがオートタイルのルール作る上で重要な部分です。inputnot_*という名前を指定することで、入力レイヤーに指定のタイルが「存在しなかったら」という条件を定義できます。

regions_outputレイヤーの作成  

出力用のRegionレイヤーを指定します。regions_output レイヤーを作成して、baseタイルのROタイルを配置します。

output_Backgroundレイヤーの作成  

出力するタイルレイヤーを指定します。output_Background レイヤーを作成して、tilesetタイルを以下のように配置します。

rule1.tmxとして保存  

これでルールの作成は完了です。ファイル名を rule1.tmx で保存します。

main.tmx を開く  

main.tmx を開いて、メインメニューから「マップ > 自動マップ」を選びます。 すると、Backgroundレイヤーに tilesetタイルが自動でタイリングされました。

なお、ここでは右側だけをオートタイルする方法を紹介しましたが、左側のルールも定義すれば、両端が自動でタイリングされるようになります。なお、自動マッピングのルールは左上から順に行われるので、優先順位の高いルールは後になるように定義します。

完成データ  

今回作成したデータは以下のリンクからダウンロードできます。

うまく設定できない場合は、このデータと比較してみてください。

参考