概要
シェフィとは、ひつじを1000匹に増やすことを目的とした1人用アナログカードゲーム (デジタル移植版も存在する)。ゲームデザイナーはステッパーズ・ストップのポーン氏。
ゲームルール
勝利条件・敗北条件
勝利条件は以下の通り
- 最初は1匹しかいないひつじを1000匹まで増やすと勝利となる
- 山札がなくなるごとに敵ひつじは 10倍ずつに増える。そして敵ひつじが 1000匹 になる(3回山札がなくなる)と敗北となる
- また、自分のひつじが0匹になっても敗北となる
ひつじカードについて
ひつじカードは [1] [3] [10] [30] [100] [300] [1000] がそれぞれ7枚存在し、初期状態はそれぞれ「ひつじ山」として配置され、[1] のみ 1枚を「フィールド」に配置する(初期状態はひつじが1匹のみ)。
後述するイベントカードの「増殖系」カードを使用して、ひつじを増やしたり、「統率カード」によりランクアップさせることができる。
ただし、フィールドに配置可能なひつじは「7枚」までで、それより多くフィールドに配置することはできない。
盤面の説明
- ひつじ山:ひつじ山札。増殖した場合はフィールドにひつじを移動させ、減少した場合はフィールドからひつじ山に戻す
- フィールド:所持しているひつじの数。ここからひつじが存在しなくなると敗北となる
- 敵ひつじカード:初期状態は1匹。山札がなくなるごとに10倍され、1000匹 (3回山札がなくなる) と敗北となる
- 山札:イベントカードが裏向きで配置された山札。手札が5枚に満たない場合はここからカードを引く
- 手札:使用可能なイベントカード。ここからカードをプレイするとカードは捨札に移動する
- 捨て場:プレイしたカードを置く場所。山札と手札がなくなると、これをシャッフルして山札に戻す
- 追放カード置き場:追放されたカードを置く場所。ここに入ると二度とプレイされなくなる
イベントカードの種類
イベントカードの種類は、ひつじを増やす「増殖系」、ひつじを減らす「減少系」、減少系カードを除去する「対策系」、その他山札操作や能力を複製する「特殊系」が存在する。
カード名 | 効果 | 枚数 | 補足 |
---|---|---|---|
産めよ | ひつじカード1枚をコピーする | 3 | ひつじカードが7枚以上 場にある場合は空振り |
増やせよ | [3] を得る | 1 | ひつじカードが7枚以上 場にある場合は空振り |
地に満ちよ | [1] を好きなだけ得る | 1 | ひつじカードが7枚以上 場にある場合は空振り |
統率 | ひつじカードを何枚か選び、 数を足して1枚にする (合計値以内のひつじカードを1枚に置き換える)。 | 2 | [1]が3枚あれば [3] にできる。 [1] が1枚、[3] が3枚あれば [10] にできる |
繁栄 | ひつじカード1枚を選ぶ。 その1ランク下のカードを3枚得る | 1 | |
黄金の蹄 | 最大でないひつじカードを好きなだけ選び、 それぞれ1ランクアップする。 | 1 |
カード名 | 効果 | 枚数 | 危険度 | 補足 |
---|---|---|---|---|
過密 | ひつじカードを 2枚以下になるまで手放す | 1 | 2枚以下なら 損失ゼロ | |
落石 | ひつじカード1枚を手放す | 1 | ||
メテオ | ひつじカード3枚を手放す | 1 | プレイ後は 追放される | |
疫病 | ひつじカード1種類すべてを 手放す | 1 | ||
暴落 | ひつじカードを枚数が 半分になるまで手放す | 1 | 奇数の場合は 残り枚数は 切り上げ | |
嵐 | ひつじカード2枚を手放す | 1 | ||
狼 | 最大のひつじカード 1枚を、 1ランクダウンする | 1 | ||
落雷 | 最大のひつじカード 1枚を手放す | 1 | ||
シェフィ オン | ひつじカード 7枚を手放す | 1 | 除去できない と敗北 |
※危険度が高いほど、「対策ひつじ」で除去したほうが良い
※危険度が低いほど「増やせよ [3]」「地に満ちよ [1]」で増やした “低ランクひつじ” を犠牲にして回避する
対策・特殊系
カード名 | 効果 | 枚数 | 補足 |
---|---|---|---|
牧羊犬 | 手札1枚を捨てる | 1 | 除去 |
対策ひつじ | 手札1枚を追放する | 1 | 永続除去 |
霊感 | 山札を見て好きなカード1枚を手札にし、残りをよく切る | 1 | 山札操作 |
万能ひつじ | 手札1枚を選び、それと同じ効果を持つカードとして使う | 1 | コピー能力 |
追加ルール
より高難易度のミッションに挑む追加ルールが、冒険企画局のページ「Shephy – post loves – 」に公開されている。
タイトル | 難易度 | ルール |
---|---|---|
1. 暗黒時代 | ・ゲーム開始前に「対策ひつじ」を取り除く。 ・ゲーム開始前に「落石」「落雷」「嵐」「メテオ」 を取り除く。 ・残ったマイナスのイベントカード (「疫病」「過密」「暴落」「狼」「シェフィオン」) はすべて「疫病」として扱う。 ・1000ひつじを手に入れたら勝利。 | |
2. 魔界 | ・ゲーム開始前に、ゲームで使うイベントカードを選ぶ。 ・ただしその中で、 マイナスでないイベントカードの枚数より2少ない枚数、 マイナスのイベントカードを入れなくてはならない。 ・たとえばマイナスでないイベントカードを 10枚選んだら、 マイナスのイベントカードは8枚入れなくてはならない。 ・マイナスのイベントカードとは、 「落石」「狼」「落雷」「嵐」「メテオ」「疫病」 「シェフィオン」「過密」「暴落」である。 ・マイナスでないイベントカードとは、 それ以外の13枚である。 ・選ばなかったイベントカードはゲームから取り除く。 ・1000ひつじを手に入れたら勝利。 | |
3. トリ アージ | ・ゲーム開始前に 「増やせよ」「地に満ちよ」「統率(2枚とも)」 「黄金の蹄」を取り除く。 ・1000ひつじ×1枚から始めて、 2ラウンド以内に1ひつじ×1枚にしたら勝利。 | |
4. The One | ・最初の1ひつじを保ったまま 1000ひつじを手に入れたら勝利。 | |
5. 理解 | ・手札を22枚とする。つまり山は無い。 ・2ラウンド終了時、1000ひつじを持っていたら勝利。 | |
6. サクリ ファイス | ・「疫病」を以下のように読み替える: 「ジンギスカン」ひつじカード一種類を すべて追放する。 追放されたひつじカードは場に出せなくなる。 ・3ラウンド終了時、以下を両方満たしていたら勝利 :「1000ひつじを持っている」 「ひつじカードを13枚以上追放した」 | |
7. 虹 | ・3ラウンド終了時に 「1」「3」「10」「30」「100」「300」「1000」 を揃えていたらクリア。 |
考察
ラウンドごとに変化するカードの特性
このゲームの特色としては、「ラウンド」ごとにカードの役割が変化していくことにある。(ラウンドの意味としては、ここでは捨札のシャッフルを区切りとする)。
例えば最初の1ラウンドでは、増殖系カードの「産めよ」「増やせよ」「地に満ちよ」「統率」が重要となり、それらで正のフィードバックを作れるかどうかが求められる。そのためそれ以外の増殖系カードは有効に機能しにくい。また減少系では「暴落」や「落雷」も大した被害にはならない。
しかし、2ラウンドや3ラウンドでは、「増やせよ」「地に満ちよ」は低ランクひつじしか増やせないため、減少系カードの被害を防ぐといった消極的な用途となる。そして1ラウンドでは活躍できなかった増殖系カード「繁栄」や「黄金の蹄」など発的にひつじを増やせるかが攻略の鍵となる。そして、それに対する負のフィードバックとして「暴落」「嵐」「狼」「落雷」が猛威を振るうこととなる。
ひつじのアップグレードと7枚までという制約
このゲームでの特徴となる “ひつじカード” には「数 (ランク)」と「枚数」という2つのベクトルが存在する。「枚数」を増やさないと「数 (ランク)」を上昇できない (ランクアップには3〜4枚の同ランクカードが必要) のだが、フィールドに配置可能な最大枚数は「7枚」までという制約が存在し、それが負のフィードバックとしてうまく機能している。
- ひつじカードの枚数を増やしすぎると「増殖系」カードが機能しなくなる(上限に達しているので増やせない)
- ひつじカードの枚数を増やしすぎると「過密」「疫病」「暴落」などの「枚数の減少系」カードで大幅に減らされるリスクがある
また、アップグレードして「数」を増やすと、それはそれでランクダウン系カード「狼」「落雷」の餌食にされてしまう。
それと細かい話だけれども、「3の倍数」ひつじはランクアップに4枚必要となることがあるため、「10の倍数」ひつじよりもやや価値が高くなる…という工夫もあるような気がする。
「産めよ」が3枚、「統率」が2枚ある理由
シェフィは様々な固有能力のカードがそれぞれ1枚ずつとなっているが、「産めよ」「統率」だけが複数枚存在する。
この2枚のカードは機能としては普通なのだが、ゲームの目的を達成するために安定して役立つカード(全ラウンドで有用)であるため、複数枚存在することでゲームバランスをうまく調整できていると考えられる。
「産めよ」の方が多い理由としては、ゲーム中にランクアップよりもひつじを増やす方が多く、使用機会が多くなるためなのかもしれない。
特殊カード「霊感」「万能ひつじ」が選択肢を増やす
シェフィのゲームプレイは、常に減少系カードの恐怖にさらされた窮屈な側面を持つ。それをうまく打開しているのが2つの特殊カード「霊感」「万能ひつじ」の存在であると思う。
「霊感」は山札を見て好きなカードを得ることができる。これはとても強力なカードであるとともに、プレイヤーに無数の選択肢を与えることとなる。
- 増殖系カードでひつじの枚数を増やすか?
- 「統率」でひつじをランクアップ(枚数圧縮)するか?
- 犠牲となるひつじを産み出すか?
- 対策カードで減少系カードを除去するか?
手札やフィールドの状況を把握し、プレイヤーが考える最適な選択を選ぶ (主体的な選択をする) こととなり、減少系カードを受け身で対応するのとは異なったプレイフィールを得ることができる
「万能ひつじ」は手札から好きなカードの能力をコピーして使用することができる。「霊感」と比べると対象は手札のみなので選択肢は限られるが、「対策ひつじ」など強力なカードを1ラウンド内で2回使用することができるので、被害を大幅に減らすことができる。
また「霊感」は手札プレイする順番を変えるだけだが、「万能ひつじ」は全ラウンドの流れを決定する選択となるので、よりダイナミックなプレイフィールを得ることなる。
感想
以下は考察というよりもただの感想
序盤に引きが悪くて [10] まで増やせないと、たいてい勝てなくなる気がする。3ラウンドトータルでのペース配分を理解しないと勝ち目がないのは少し厳しいかもしれない。
ただこれはソリティアでミニマムなゲームであるので、この問題は仕方ないのかもしれない。
減少系のカードが手札にも加わるため、手札の枚数が圧迫される。また取るべき行動が減少系のカードを優先的に処理するというネガティブな行動に制限されてしまう。そのため取るべき戦略がほぼ決まってしまい作業感が強くなってしまう。
シェフィに対する批判として、「運」で勝負が決まってしまうというものがよく見られるが、そういった多くの場合は受け身で行動しなければならないという構造が根本の問題にあるのかもしれない。(特に「追加ルールのポストラヴズ」でその傾向が顕著に感じられる)
ひつじは爆発的に増えると言うよりも、カードの効果に従って順当に増えるだけなので、指数的なインフレ感がなく、ひつじが増えていく高揚感が弱いように感じた。
ただし前述したように、ひつじカード増加のフィードバックループは非常に良く調整されているので、これはこれで良いのかもしれない。
捕食される動物である弱い存在のひつじが、外敵の脅威や災害にさらされて受け身で行動するのはホラー的な「恐怖」を表現するのに向いているのかもしれない。