「How To Combine Video Game Genres (ゲームジャンルをどうやって組み合わせるのか?)」という動画が参考になったので、個人的にまとめてみました。
目次
ゲームジャンルを組み合わせる方法
ジャンルを組み合わせると新しいゲームが生まれる?
『アイデアのつくり方』の著者「ジェームス・W・ヤング」は以下のように述べています。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。
アイデアのつくり方
新しいアイデアというのは、何もないところから生まれるのではなく、既存のアイデアの新しい組み合わせでしかないとのことです。
なお、「アイデアの作り方」の内容をゲーム作りに活用する方法については以下のページに書いています。
ゲームアイデア発想法「新しい組み合わせでしかない」とは実際にそのとおりで、デジタルゲーム黎明期に登場した新しいジャンルも、アナログゲームをデジタル化したものだったり、既存の遊びを簡略化や複雑化することで生まれました。そしてそれらの遊びも何らかのルーツが存在します。
最近のインディーゲームの人気ジャンル Roguelike (ローグライクゲーム) も、伝統的に採用していた RPG要素や Turn-based (ターン制) を排除することで、新しいゲームジャンルを生み出しました。
以下、ローグライクに新しい要素を組み合わせて成功したゲームの一覧です。
ゲームタイトル | 組み合わせたジャンル |
---|---|
Spelunky | 2D Platformer (プラットフォーマー) |
Binding of Issac | Action-adventure game (アクション・アドベンチャーゲーム) |
FTL | RTS (Real-Time Strategy) |
Crypt of the NecroDancer | Rhythm game (リズムゲーム) |
Slay the Spire | Deck-building game (デッキ構築型ゲーム) |
では、ゲームジャンルをとにかく組み合わせれば良い…というわけではありません。
例えば、敵の攻撃が激しいアクションゲームと、何分も考えないと解けないようなパズルゲームを組み合わせても、じっくり考える時間がなくて難易度が高すぎるゲームとなってうまくいきません。他にも、即死要素の多いアクションゲームに、RPG的な成長要素を入れてHPが増えるとしたら、即死要素が失われゲームとして成立しなくなってしまいます。
ということで、単に「組み合わせ」を行うだけではを面白いゲームにはならない、といえます。
では「どういった組み合わせをすればいいのか」ということについてですが、Spelunky がなぜ成功したのかについて考えるとそのヒントが得られます。
Spelunky がうまく行った理由の1つとして、2Dプラットフォーマーで表現したいものと、ローグライクの利点をうまく組み合わせたことにあります。
ゲームジャンル | 好きなところ | 気に入らないところ |
---|---|---|
プラットフォーマー | 直感的なルール。 リアルタイム処理 | レベルを暗記しないと クリアできない |
ローグライク | 自動生成による ゲームプレイの変化 | 複雑なターン制の コマンド戦闘 |
↓ お互いの良いところを組み合わせると…… ↓
- プラットフォーマーの利点:直感的なルールやリアルタイムのアクション、戦闘
- ローグライクの利点:自動生成でレベルを毎回変化させてプレイヤースキルを試すゲーム性
開発者の Derek Yu氏 はプラットフォーマーのレベルを覚えるという暗記要素が好きではなく、またリアルタイムゲームが好きだったということで、それぞれの利点を組み合わせたことで、Spelunky は生まれました。
つまり、単に組み合わせれば良い、というわけではなく「お互いの欠点を解消するような要素を結合する」組み合わせが好ましい、ということとなります。
あと、これは個人的な考察ですが、Derek Yu氏は、Spelunky の1つ前の作品として「Aquaria」という Metroidvania (メトロイドヴァニア) を発表して IGN の賞を獲得しています。
つまり Spelunky を作る前に 2Dプラットフォーマーについて、すでに彼なりの哲学と実績が存在していました。そして試作品としてローグライクをいくつか作ってみてこの結論にたどりついたとのことで、「最初から2Dプラットフォーマーとローグライクを組み合わせて作ろうとしたわけではない」という経緯があります。
前作の「Aquaria」は. IGN の 2007年の賞 (Seumas McNally Grand Prize) を取るほどの成功を収め、2Dプラットフォーマーに関する深い知識と実績がすでに存在していた。
ローグライクをいくつか試作してみていくつかの結論にたどり着いた。
ローグライクの特性を分析して、自動生成のダイナミックさは好きだが、ターン制の難解なシステムは不満に思っていた。
ローグライクを試しに作ってみたものの斬新さはなかった。
しかし、自動生成のダイナミックな要素は、2Dプラットフォーマーの不満点を解消する可能性があることに気がついた。
これは個人的な印象ですが、1つのジャンルを深く理解すると、どんな要素と組み合わせるのが相性が良いのか、また相性の悪いジャンルは何か、というのをある程度予測しやすくなるのではないかと思っています。そしてゲームジャンルを深く理解するには一度試作品を作ってみて検証するのが一番効率が良く、勉強になるような気がしています。
さらに、3の「最初からジャンルを組み合わせようと思って作ったわけではない」ということについて、例えばCrypt of the NecroDancer の Ryan Clark氏 も最初からリズムゲームにしようとは考えていなかったそうです。
Clark氏:
「Spelunky」というローグライクなプレイ要素を備えたインディーズゲームにインスパイアされました。Spelunkyは,プレイヤーの死ぬ理由が明確なゲームで,ミスをおかすと死んでしまいます。運が悪かったからというケースは稀でした。
昔ながらのローグライクゲームは運に左右されることが多く,それは時にストレスの原因となります。そのため,私はSpelunkyのように,“フェアに”遊べるローグライクゲームを作ろうと思ったのです。
4Gamer:
フェアな部分はSpelunkyの影響が大きいということですね。
Clark氏:
ええ,Spelunkyを“フェア”なゲームとして遊べる所以は,リアルタイム性の高いゲームプレイにあると思いました。そのリアルタイム性を自分のゲームにも取り込みたかったのと同時に,ローグライクのターンベース要素も失いたくなかったのです。
ですから,私は各ターンの時間が短い,クイックな思考が必要とされるゲームを作ろうとしました。これも楽しかったのですが,プレイしているうちに,自分がリズムにのってゲームをプレイしていることに気付いたのです。試しにマイケル・ジャクソンの「スリラー」のビートに合わせてプレイしたら,最高におもしろかったんですよ!
「Crypt of the NecroDancer」開発者インタビュー。ダンジョン探索要素とリズムゲームをミックスさせたアイデアの源泉とは
Crypt of the NecroDancer は「運に左右されないフェアなローグライクを作る、しかしターン制要素はなくしたくない」というアイデアを突き詰めて考えたところ、リズムにのってプレイするのが楽しい、ということを発見し、結果としてリズム要素を取り入れるようになったとのことです。
ゲームジャンルを組み合わせる3つの方法
ということで、具体的にジャンルを組み合わせる方法についてです(ここからが参考動画の本題)。
- 1. HAND-OFF: ジャンルのスイッチング
- 2. PLAY STYLE: 複数のプレイスタイルの融合
- 3. BLEND: 新しいジャンルを生み出す
1. HAND-OFF: ジャンルのスイッチング
ジャンルのスイッチングとは、ゲームが場面ごとに色々なジャンルに切り替わる方式です。
これは規模の大きいゲームで採用されやすい方式です。
ゲームタイトル | 1stジャンル | ↔ | 2ndジャンル |
---|---|---|---|
ペルソナ5 | ダンジョン探索時は 一般的なJRPG | ↔ | 学園パート時は Dating sim (恋愛ゲーム) |
Uncharted | 銃撃戦の FPS | ↔ | ・プラットフォーマー ・パズル ・乗り物操作 など大量のミニゲームが存在する |
God of War | 豪快なアクション | ↔ | 探索・パズル要素 |
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド | オープンワールドや クラフト要素 | ↔ | 探索・パズル要素 |
DOOM (2016) | ハードコアな バトルの FPS | ↔ | プラットフォーマー |
この方式を採用する理由として、同じ種類の遊びが何時間も続くと退屈なので、ジャンルが切り替わることで気持ちが切り替わって疲れずに長い時間遊ぶことができるからです。
特に Uncharted の場合、様々なゲームジャンルが細かく切り替わることで、ユーザーを飽きさせず長く楽しませることに成功しています(遊びのペース配分が絶妙)。
また、ゲームではないですがバトル漫画でよくある「バトルパート」「日常パート」という仕組みが JRPGではよく使われます。バトルパートはとにかくアクションのカッコよさで読者を引きつけ、日常パートでキャラクターの性格や内面を理解して、より物語に入れるような仕組みです。JRPGでは「バトルパート」でゲームの面白さを感じてもらって、「日常パート」でキャラクターとの会話を楽しめる2重構造となっています。
ジャンルのスイッチング方式を採用する場合は以下の3つに気をつける必要があります。
- 1. ユーザーは組み合わされたジャンルのすべてを気に入るわけではない
- 2. 曖昧にジャンルを切り替えないようにする
- 3. サブ要素にとどまる時間を考慮する
【注意点1】ユーザーは組み合わされたジャンルのすべてを気に入るわけではない
ジャンルのスイッチング方式を採用するときのよくある問題は「ユーザーは組み合わされたジャンルのすべてを気に入るわけではない」ということです。
JRPGで特に顕著ですが、ユーザーが「バトル(ストラテジー要素)」と「キャラクター・ストーリー」どちらを求めているかがよく問題となります。例えば「キャラクター・ストーリー」を求めているユーザーの場合、複雑で難易度の高いバトルは敬遠されます。かといって簡単なバトルにしてしまうと、ストラテジー要素を求めているユーザーからは「簡単すぎる」と低評価される原因となってしまいます。キャラクターの会話が長すぎたりしても攻略しがいのあるバトルを求めているユーザーから敬遠されます。
ターゲットユーザー層 | 求めている要素 | ネガティブ要素 |
---|---|---|
キャラクターや ストーリーに 興味がある | ・魅力的なキャラクター ・カットシーンや会話 ・衝撃的なストーリー | ・バトルが難しいと先に進めなくなる ・バトルはスキップして 話の続きが見たい |
バトルに興味がある | ・戦略性のあるバトル ・手応えのある難易度 | ・バトルが簡単なのは物足りない ・長々とキャラが会話するのは嫌 ・カットシーン演出が長いのは嫌 |
他にも例えば God of War といったゲームでも、ユーザーの目的が派手なアクションシーンである場合、テンポの遅いパズルは邪魔だと思われるかもしれません。
この問題の解決策の1つは、各ジャンルの特性をほどほどに抑えることです。例えば、Uncharted でのパズル要素は「ほどほどの難易度」で手詰まりになるほどのものではありません。あくまでFPSでのバトルの戦術要素がメインとなるジャンルなので、この要素を楽しませることが中心となるように設計されています。サブとなるジャンルはあくまでメイン要素の「箸休め」「寄り道要素」であるとバランスが良くなります。
もう1つの解決策として、サブ要素を「スキップ可能」としても良いです。例えば Shovel Knight ではサブ要素である「カード対戦」は省略できます。JRPGでも会話イベントはスキップや早送りが用意されています。
ただ理想としては、サブ要素であってもメイン要素を好むユーザーが求めるゲームメカニクス (類似性が強いジャンル) を採用することです。例えば XCOM: Enemy Unknow のメイン要素は「ターン制ストラテジー」ですが、サブ要素の「戦略基地を強化する」は経営SLG的なもので、ストラテジー要素を好むユーザーの嗜好とマッチしており、多くのユーザーはどちらも楽しむことができます。
【注意点2】曖昧なジャンルの切り替えを避ける
次に気をつけるべき点は、切り替えが「曖昧」にならないようにすることです。
例えば Puzzle platform game (パズルプラットフォーマー) は、パズルが解けない原因が「プレイヤーの操作スキルの未熟さ」にあるのか「障害を取り除く手順」に間違いがあるのかが明確に分離できないという問題があります。
そこで、Tomb Raider といったゲームでは、パズル要素で移動することを想定している場所には、明確にジャンプで飛び移れないようなレベル構成となっています。
- Grapple Dog: プラットフォーマーからタイムアタックへの切り替わり時には「カウントダウン」や「制限時間」を表示してはっきりとゲームの目的を伝える
- Batman: Arkhamシリーズ: ステルスを行うシーンでは、近接格闘しようとすると即座に殺される
このように「切り替わったジャンルが明確に理解できる」工夫をすることで、遊ばせたい要素をユーザーに示すことができます。
【注意点3】サブ要素にとどまる時間を考慮する
最後の注意点は、組み合わせたジャンルが互いに主張が強くなりすぎて、プレイヤーが何をやっているのかを忘れたり、ゲームの流れを不自然にしないようにすることです。
Civilizationシリーズで知られる、Sid Meier氏は “Covert Action” というミステリー謎解きゲームを作ったときにこのことに気がついたようです。
途中で挟まるアクションシーンが結構ハードで長いプレイを要求するものだったため、謎のことをすっかり忘れてしまうプレイヤーが数多く発生してしまったことに発売後、気がつきました。
The mistake I think I made in Covert Action is actually having two games in there kind of competing with each other. There was kind of an action game where you break into a building and do all sorts of picking up clues and things like that, and then there was the story which involved a plot where you had to figure out who the mastermind was and the different roles and what cities they were in, and it was a kind of an involved mystery-type plot.
私が Covert Action で犯したと思う間違いは、実際に 2 つのゲームを互いに競合させたことです。建物に侵入して手がかりを拾うアクションゲームみたいなのと、黒幕が誰なのか、役割分担を当てていくという筋書きのストーリーとか、そして、彼らがどの都市にいたのか、そしてそれは一種の複雑なミステリータイプのプロットでした.
I think, individually, those each could have been good games. Together, they fought with each other. You would have this mystery that you were trying to solve, then you would be facing this action sequence, and you’d do this cool action thing, and you’d get on the building, and you’d say, “What was the mystery I was trying to solve?” Covert Action integrated a story and action poorly, because the action was actually too intense. In Pirates!, you would do a sword fight or a ship battle, and a minute or two later, you were kind of back on your way. In Covert Action, you’d spend ten minutes or so of real time in a mission, and by the time you got out of [the mission], you had no idea of what was going on in the world.
個人的には、それぞれが良いゲームだったと思います。一緒に、彼らはお互いに戦った。解決しようとしていたミステリーがあり、その後、このアクションシーケンスが開始して、激しくクールで長いアクションで建物に乗り込むことに成功したユーザーはこう言います。
「さて、私が解こうとしていた謎は何だったかな?」
アクションが実際にはあまりにも強烈だったため、Covert Actionは ストーリー と アクション の統合が不十分でした。 Pirates! では、剣で戦ったり、船で戦ったりして、1、2 分後には元の場所に戻っていました。Covert Actionでは、ミッションに10分ほどリアルタイムで費やし、[ミッション] を終了するまでに、世界で何が起こっているのかまったくわかりませんでした。
So I call it the “Covert Action Rule”. Don’t try to do too many games in one package. And that’s actually done me a lot of good. You can look at the games I’ve done since Civilization, and there’s always opportunities to throw in more stuff. When two units get together in Civilization and have a battle, why don’t we drop out to a war game and spend ten minutes or so in duking out this battle? Well, the Covert Action Rule. Focus on what the game is.
だから私はそれを「Covert Action ルール」と呼んでいます。 1つのパッケージであまりにも多くのゲームを実行しようとしないでください。そして、その失敗は実際に私に多くの利益をもたらしました。Civilization以来、私が行ってきたゲームを見ることができます。また、より多くのものを投入する機会が常にあります。Civilizationで 2つのユニットが集まって戦闘を行うときは、戦争ゲームに参加して、この戦闘に10分ほど費やしてみませんか? さて、Covert Action ルール。ゲームが何であるかに焦点を当てます。
WIKIPEDIA – Sid Meier’s Covert Action
要は、サブ要素に10分も要する関係性の薄いハードなゲームをさせると、メイン要素を忘れてしまう…というリスクがあるといえます。
Bioshock では、ハッキングを成功させるための謎のミニゲームとして「水道管パズル」をさせられますが、1〜2分あれば完了するパズルであり、ゲームの本筋を忘れないようになっています。
つまり、サブ要素は「所要時間を短くする」とするのがセオリーとなります。
もしくはメイン要素とサブ要素が「綿密」に連携して影響し合うようにします。
- XCOM: Enemy Unknow: 基地を発展させることで、バトルでユニットが強化されるメリットがある。さらにバトル中の判断が基地の発展にもフィードバックされる
- ペルソナ5 ザ・ロイヤル: 友人との関係を深めることで強力なスキルや仲魔が開放される
余談ですが、個人的には推理ゲームの「ダンガンロンパ」の謎のリズムゲームは、ほぼ蛇足ではないかと思っています。
クリアには少し長めの時間のプレイが必要ですし、ユーザー層的にも求められていないゲームジャンルであり、ゲームのテーマ的にもミスマッチ感があるためです。ただ、それほど難しいものではなかったのと統一感のあるスタイリッシュなアートが素晴らしかったので、完全に不要だったのかというとそうでもないのかもしれません(それとゲームのボリュームをふくらませる目的として有効)。
それに対して、同じノベルタイプのゲーム ジャックジャンヌ 《 JACKJEANNE 》は、「歌劇」がテーマでもあり、歌劇の持つ楽しげで華やかな印象をうまく表現できていたので、リズムゲームパートはこのゲームに必要不可欠なものだと思いました。
2. PLAY STYLE: 複数のプレイスタイルの融合
プレイスタイルを融合したゲームとは、色々なゲームジャンルのスキルやアクションが用意されており、ゲームクリアの方法が複数用意されているゲームのことです。
- デビルメイクライ3: 「トリックスター」「ソードマスター」「ガンスリンガー」「ロイヤルガード」「クイックシルバー」「ドッペルゲンガー」といったアクションスタイルの選択
- Deus Ex: 「FPS」「RPG」「ステルス」の複合ジャンル
- Skyrim: 「魔法」「剣と盾」「弓矢」の複合装備
この方式を採用するメリットは、プレイヤーが「自由に選択」でき、「主体性」を持ったゲームプレイを生むことです。プレイヤーの好みでジャンルやアクション、スタイルを選ぶことができます。また「多様性」もあるので、 Replay value (リプレイバリュー) を高める効果もあります。
問題点として、1つのジャンルやスタイルに集中した作品と比較されてしまうことです。それらと比べると複合プレイスタイルのゲームは作り込みなどで劣った印象を受けます。また複数のゲームや遊びを同時並行で作ることになるので、開発コストが高くなりがちです。そのため、できるだけシンプルに作れる仕組みやリソースの作り込みなどを減らして、開発コストを下げるようにした方が良さそうです。
もう1つの問題が、ユーザーがあるスタイルに固執して他のスタイルを選ばなくなることです。理由として、プレイヤーは一度ゲームに勝てる方法を見つけたら、そのスキルを強化し続けてさらに勝率を上げようとします。わざわざ限りあるリソースを分散投資して、失敗するかもしれないというリスクを負ってまで別のスタイルを試そうとは思わないためです。
具体的にはJRPGなどで一度強力なパーティを作り上げたら、他にメンバーがいても固定メンバーで戦い続けることがゲームの攻略法としては最適解となります →正の Feedback loops (フィードバックループ)
フィードバックループについては以下の記事に書きました。
ゲームデザインにおける「フィードバックループ」の使い方特定のプレイスタイルに固執しているプレイヤーに別のスタイルを試させるには、以下の方法があります。
- 汎用的なスキルポイントを与え、別のスタイルを試す機会を与える
- スキルを振り直して、別のビルドを試せるようにする
- 特定のビルドが強くなりすぎないようにする
- Hades のように別の武器を使用することで報酬を得られるようにする
なお解決策として「特定のスタイルでないとクリアできない」「特定のスタイルを禁止する」という方法が思いつくかもしれませんが、これは「主体性」や「多様性」のあるプレイを否定することとなるので、あまり限定的な障害にしてしまうと「複合的なプレイスタイル」という本来の目的が有効に働かなくなるので注意です。
3. BLEND: 新しいジャンルを生み出す
先に説明した項目ではありますが、2つの異なるジャンルの特徴を組み合わせて「新しいジャンル」を作る方法です。
- Portal: FPS (マウス照準と一人称カメラ) +パズルゲーム
- Battle Chef Brigade: Fighting game (格闘ゲーム) +Match-three game (マッチ3ゲーム)
- Rocket League: FIFAシリーズ+Burnoutシリーズ
- Toodee and Topdee: 2Dサイドビューと2Dトップビューを切り替えるパズルゲーム
- Undertale: RPG+ Bullet hell (弾幕シューティング)
この方法のメリットは、今までに見たことがないゲームを作れる点で、新ジャンルが生まれる可能性があります。
この方法の問題点は、2つのジャンルの相性が悪い場合にうまくいかない、ということです。
そのため、Spelunky のように相互補完するジャンル・要素を使うべきです(→ローグライクの自動生成要素を、プラットフォーマーのレベル生成に利用して、プレイヤースキルを挑戦するゲームシステムにした)。
また似た特性を持つ要素を組み合わせるのも有効です。例えば、Shovel Knight Pocket Dungeon を開発した Yacht Club Games は「ローグライク」と「落ちものパズル」に似た要素が多く含まれていることに気が付きました。
以下、ローグライクと落ち物パズルの類似点です。
- オブジェクトはタイル(マス目)の上を動く
- 操作方法はシンプル
- ランダム要素が多い
- 何もないゼロの状態からゲームが開始する
- できるだけ長くプレイする(生き残る)ことが目的
- 数手先を考える必要がある
最後に
ゲームジャンルを組み合わせる場合、好きなジャンルを自由に組み合わせても、面白いゲームができるとは限りません。また新規性のあるゲームは、特定のジャンルに分類できないほどジャンルが混ざり合っている場合もあります。
またそういったゲームは、何か特定のジャンルを組み合わせて作ろうとしたわけではなく、結果として今までなかったジャンルを組み合わせてしまっただけの場合が多いようです。
そのため、ジャンルをミックスすることは新しいゲームを作る手段でしかなく、組み合わせることを目的としてはいけないのかもしれません。
参考
How To Combine Video Game Genres
今回の記事を書くにあたって参考にした動画となります。GameMaker’s Toolkit さんの動画はどれも興味深い内容なのでおすすめです。