ゲームデザイナーとしての素質を伸ばす方法

今回はゲームデザイナーに必要な能力、素質を向上するための方法について紹介します。

どんな人がゲームデザイナーに向いているのか

ゲームデザイナーとしての必要な素質はいくつかあります。
ゲームとその他のエンタメの知識。流行りものに対する嗅覚。心理学の知識。優れたインスピレーション……、などなど。

その中でも最も重要なのが「面白い状況を作り出すのが好きな人」です。
これはゲームに限らずエンタメ全般に言えるかもしれません。
自分が楽しむことも大切ですがそれよりも、楽しんでくれる人のために物作りができる人。
誰かを楽しませるための “遊び場” を心から楽しんで作れる人。
遊ぶ人の心に寄り添ってゲームを作れる人。そんな人が、ゲームデザイナーに向いていると言えます。

ゲームデザイナーに必要な素質

では、「面白い状況を作り出す」にはどのような素質が必要かですが、おおよそ以下のものになると思います。

  1. コミュニケーション
  2. チームワーク
  3. プロセスを構築する力
  4. 直感力
  5. 良い遊び手になる
  6. 創造性

1. コミュニケーション

ゲームデザイナーは、他の開発メンバーや利害関係者に自分のゲームのアイデアを伝える必要があります。それに取り組む価値があるのか、そのゲームがセールス的に魅力があるのかどうか、といったことを明確かつ効果的に伝えなければなりません。
その目的を達成するには、言葉選びのセンス、明確なビジョン、プレゼンテーションといったスキルが必要です。

一人でゲームを作るにしても、売り出す際には自分のゲームの魅力を正しく伝えることができなければ、誰にも見向きがされないゲームとなりやすいです。例えば、アイデアをひねりすぎて難解な複雑なゲームシステムを採用してしまうと、ユーザーに手に取ってもらいにくくなります。
ゲームを作ることそのものが、誰かに理解してもらうためのコミュニケーションの1つであるとも言えます。そのためには自分の伝えたいことに対する相手の反応を見て、「自分のやりたいこと」と「相手が求めていること」との “良い妥協点” を見つける力が求められます。

2. チームワーク

これはチーム開発をする場合に特に求められるものです。一人で作っていても外部に素材作成を発注する場合に必要となるかもしれません。
ゲームは総合芸術であり、各分野に専門用語があります。
プログラム、アートワーク、キャラクターアニメーション、シナリオ、サウンド、レベルデザインなど。
それぞれで使われる専門用語には隔たりがありますが、そういった意識のズレを調整して、自分が達成したいゲームデザインを正しく共有できるようにしなければなりません

3. プロセスを構築する力

ゲームは少しの変更をしただけで、ゲーム全体に破壊的な影響をもたらす要素が数多く存在します。そのためゲームを作り込んだ後で、失敗している要素を変更して修正することがとても難しいです。

ゲームデザイナーは、ゲームを構築する過程でどんな問題が起きるのか、何が失敗となりやすいのか、うまくいくのはどんなパターンが多いのか、といったことを知っておく必要があります。
もし問題が発生したとしても、正解に導くための選択肢を数多く知っていれば、損害を小さく抑えられるかもしれません。

そういった知識を身につけるためのトレーニングの1つとしては、Shitty-game (クソゲー) を研究することです。分析の方法としては以下の方針で進めると良いかもしれません。

  • 1. そのクソゲーのどこが問題なのか。対象を明確化する
  • 2. その問題は個人的な主観ではなく多くの人がそう思っているか。客観的な事実にフォーカスする
  • 3, その問題に対する原因と考えたものは、問題と直接的な関連性があるか。分析に論理性を持たせる
  • 4. 個人の感想ではなく具体的な解決策を提示する。例えば具体的な数値を提示してみる
  • 5. その解決策は実現可能かどうか。どういったプロセスで解決するのが良いか

4. 直感力

直感力とは何かというと、何かの問題に対して “理屈” ではなく、瞬間的に正解に近い答えを導き出す能力のことです。
人間の脳には “暗黙の学習” と呼ばれる膨大なデータが蓄積されていて、それが何かのきっかけで呼び起こされることで、信じられないひらめきを起こすことがあります。
この能力は生まれ育った環境により作られることが多いですが、今からできる方法の1つとしては「経験を積み、知識を蓄える」ことがあります。知識が増えるとその知識をもとに正解へのショートカットを発見できることがあるからです。
ゲームデザインに必要な “直感力” は「印象的な体験や感情をゲームシステムにスッと落とし込める力」「システムやルールの関連性を分析して、面白いゲームプレイを見つける力」などです。それらを身につけるには、多くのシステムを分析するのが良いです。
分析対象とするのは日常的に存在している「現実世界を支えているシステム」に気を配るのが良いです。既存のゲームに頼るのも良いですが、自分独自のゲームを作るには、ゲームではないものにヒントが隠れていることが多く、また優れたゲームデザイナーは、ゲームのアイデアを日常的な現象にヒントを得ています。なぜならそれは多くの人が体験しているものであり、その感覚が共感を得やすいからです。

5. 良い遊び手になる

既存のゲームを分析する場合は、それを構成するゲームシステムについて考えることが重要です。
さらに重要なのが、そのゲームで得られる体験が自分自身にもたらす感覚を理解することです。それにより、良いゲームプレイを作り出すための確固たるセンスを見つける助けとなります。
自分が得た体験を分析でき、その体験を自分のゲームに再現できるようになるのが最終的な目標です。

この力を身につけるためのトレーニング方法としては、ゲーム日記を書きます。
そこにはゲームの機能を書くだけでなく、自分の選択とその選択について考え感じたこと、その選択をもたらしたゲームの仕組みを掘り下げて分析を行います

6. 創造性

創造性とは独創的なアイデアを思いつく力です。
これを身につけるヒントとしては、欲望に忠実になることです。例えば 「SimCity」を生み出した Will Wright氏は、自分の夢と幻想を利用してインタラクティブな体験を生み出しています。
もう一つのヒントは、自分の人生体験を振り返ることです。他にも例えば、宮本茂氏はゲームのアイデアを子供時代の遊びやそれにより得た感覚をもとにしているとのことです。田尻智氏は、子供の頃の昆虫採集の楽しさをもとに「ポケットモンスター」が生まれたとしています。

そこで自分の子供の頃を振り返って、その頃遊んだゲームを思い出してみます。デジタルゲームでも良いですが、できれば「かくれんぼ」「鬼ごっこ」「缶蹴り」などアナログな遊びが良いです。それらをどのように遊んだのか。その遊びのどの部分に惹きつけられたのかを考えてみます。

なぜ子供時代なのかというと、子供の頃が一番遊びに夢中になっていて、自分の楽しさの原点になっていることが多く存在するためです。ここを掘り下げることで、自分の創造性の幅を広げる助けになります。

参考書籍

中ヒットに導くゲームデザイン

今回の記事はこちらの書籍の「1章 ゲームデザイナーの役割」を参考にしました。

おまけ

ゲームデザインの技術を得る別の方法としては、「ゲームのModを作る。または改造する」「TRPGのゲームマスターをする」という方法もあります。

海外では Mod (モッド) 文化があり、ゲーム自体が高度な改変を許容しています。それにより、例えば「The Elder Scrolls」シリーズや「Warcraft」のMod作成の経験を生かしてゲームデザイナーになるケースもいくつか存在しているようです。

そして改造という例では、Undertaleの作者であるToby Fox氏は、MOTHER2のROMを改造してRPGの作り方を学んだようです。

Minecraft (マインクラフト) でRubyやPythonを使って改造することでプログラムとゲームデザインを学ぶ人もいます。マリオメーカーでアクションゲームの作り方を学ぶのも良いかもしれません。

TRPGはデジタルゲームに大きな影響をもたらしたゲームの一つです。TRPGのゲームマスターを務めるには、ゲームルールに対する深い理解や、それを使ってプレイヤーが楽しめる環境を構築する必要があります。その経験はゲームデザイナーとしてとても重要なスキルを身につけるのに役立つのではないか、と思います。

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