今回は、個人でゲームを作って生活していくための方法について書いていきます。
ただ、私自身は会社人間として働いていて、個人で作って稼いだのは、ほんのわずかなお金なので、あまり参考にならないかもしれません。
つまり、机上の空論!
それでもよければ読んでみてください。
目次
1. どんなゲームを作るか
まず、どんなゲームを作るかですが、基本的に作りたいゲームがあれば好きに作っていいと思っています。というのもゲーム開発は大変な作業なので継続して興味が持てるゲームであるほうが良いからです。ただ、もし特に作りたいゲームがなければ「人気のジャンル」「売れそうなもの」「自分でもできそうなもの」でも良いかもしれません。
ただ、自由に作るとしても、流行り物を作るにしても、漠然と作ったりそのジャンルをただ真似るだけではなく、
- 「それに対して自分はどう感じたか」
- 「それをどうやって表現すると魅力的になるか」
- 「他の人には受け入れられていないけれど、自分はこのジャンルのこういう要素が好きなんだ」
ということを、”作りながら” でも良いので、分析・意識してそれを再現しようとすると、それが個性となって自然と差別化された作品になるのではないかと思っています。
ちなみに、作り慣れないうちは、自分だけのオリジナリティを出せなくて
- 「このゲームは○○のパクリだ」「○○の劣化コピーだ」
という批判的なレビューが書き込まれるかもしれませんが、開発に慣れていない人が技術力不足であることはどうしようもないことなので、こういった批判はあまり気にしなくても良いと思います。ですがもしも「確かにその部分は力不足だな…」と思ったら、改善できるように次回作で頑張ってみてもいいかもしれません。
それと、作りやすくて技術力がアップしそうなゲームは以下の記事にまとめてみました。
初心者が作ると勉強になるゲーム20選もちろん、作りたいゲームがあればそれを優先して作ったほうが良いですが、技術力がアップすると作れるゲームの幅も広がるので、色々なゲームに挑戦してみるのも悪くないと思っています。
2. スタイルを考えてゲームを作る
個人でゲームを作るタイプには大きく2つのタイプがある気がします。
- 芸人タイプ:多くの人に笑われながらも、身近なあるあるネタで手軽に面白く遊べるゲームを提供する
- アーティストタイプ:独特の世界観や個性、もしくは作り込まれたゲームシステムを提供する
UNDERTALE や Stardew Valley は作り込まれたゲームシステムや世界観、ストーリーが売りとなっている「アーティスト」タイプ。それに対して、日常的に起こる出来事などをうまくゲームに落とし込んで、身近な話題を提供する、いわゆるバカゲーやストレス解消のミニゲームが「芸人」タイプだと私は考えています。
どちらが良い・悪いというのはなく、どちらもゲームとして異なった面白さがあるので、自分の好みに合った方向性を目指すのが良いと思います。
ただ、「芸人」タイプは時間をかけて作り込み過ぎると、ルールの複雑さがネックとなり、遊びづらくなって受け入れられにくくなる可能性があります。例えるなら、裸になる芸を披露する芸人の場合、筋肉ムキムキの引き締まった身体ではなく、ブヨブヨのだらしない身体を見せつけるほうが笑いを生み出しやすい、ということと同じです。変にカッコつけたり、気取ったりすると引かれやすいです。逆に「アーティスト」タイプはクオリティ勝負となるので、短期間で作ると荒さが目立ってしまい、評価を下げる原因となりがちです。
ただ明確にこの2つのタイプに分離されるわけではなく「どちらのタイプが自分向きなのかな?」と考えることで、得意な分野や評価されやすい部分を見つけやすいと考えています。
ちなみに、個人的な印象ですが「芸人」タイプのゲームを作っている人は、意外と真面目に売れることを考えていて、ちゃんと市場調査をしたり、手堅く遊んでもらえるトランプゲームや Puzzle game (パズルゲーム) 、ゲーム以外の実用アプリも作っていたりすることが多い気がします。
より多くの人に楽しんでもらいたい、という考えがあれば、そういう方法もありなのかなと思います。
一概には言えませんが、芸人タイプの方は「スマートフォン」向けのゲームを作るのが良いと考えています。ちょっとした思いつきを形にして、共感を得られるようなゲームで、対象はカジュアルゲーマーです。具体的に以下のジャンルが考えられます。
- Hyper-Casual game (ハイパーカジュアルゲーム)
- Jump ’n’ run game (ラン&ジャンプゲーム)
- Escape the room game (脱出ゲーム)
- Puzzle game (パズルゲーム)
- Tile-matching game (タイルマッチングゲーム)
- Non-field RPG (ノンフィールドRPG)
- Incremental game (放置系ゲーム)
ハイパーカジュアルゲームがどのようなものであるかについては、以下の記事にまとめました。
ハイパーカジュアルゲームの作り方ラン&ジャンプゲームの基本的な作り方は以下の記事に書いています。
ラン&ジャンプ系ゲームの作り方また、スマートフォン向けのパズルゲームを作るなら、オススメは Physics puzzle game (物理パズルゲーム) や Tile-matching game (タイルマッチングゲーム) 、 Match-three game (マッチ3ゲーム) あたりですね。
以下の記事では、マッチ3ゲーム (ズーキーパー) とツムツムのようなゲームの作り方を説明しています。
落ちものパズルの作り方これも必ず当てはまるわけではないですが、アーティストタイプは「Steam」での発売を目標としてイベントに出典したり、ゲームに精通した「コアゲーマー」を対象としたものを作ります。ゲームジャンルは以下のものが考えられます。
- Platformer (プラットフォーマー)
- Metroidvania (メトロイドヴァニア)
- Run-and-gun shooter (ラン&ガン・シューティング)
- Shoot ‘em up (2Dシューティングゲーム)
- Action-adventure game (アクション・アドベンチャーゲーム)
- Survival game (サバイバルゲーム)
- Sandbox game (サンドボックスゲーム)
3. たくさんゲームを作る
とはいえ、自分が作るゲームに自信を持てないかもしれません。その場合は、まずゲームをたくさん作ることです。
たくさんのゲームを作ったという実績を作ると、それだけで大きな自信につながります。
また、たくさん作ってリリースすると多くの人にみてもらえる可能性が上がります。1本しかゲームをリリースしていない人と、10本ゲームをリリースしている人では、単純に計算して「10倍」見てもらう確率が変化します。実際には、知名度や題材の話題性、PV作成やSNSでのプロモーションなどによる相乗効果で決まりますが、「リリースしたゲームの数以外の変数値を固定」とすれば、ゲームをリリースするほど遊んでもらえる確率は上がるわけです。
そのため、たくさんゲームを作ってリリースすることが有利となります。
当たり前のことですが「数多く撃てば当たる」作戦ですね。
――『アングリー・バード』はどのようにして誕生したのですか。
「2003年のフィンランドで、携帯電話向けのゲーム制作会社として誕生したのが、私たちの会社、ロビオ(Rovio)です。
最初に51タイトルものゲームをつくったのですが、なかなかヒットに恵まれず、非常に苦戦していました。そんな中でふいに生まれたのが、赤い1羽の鳥のキャラクターです。社内での評判もよく、じゃあこの鳥のゲームをつくってみようよ、ということになりました。ゲームにするために敵キャラを考えなければならなかったのですが、ちょうどそのとき、豚インフルエンザが流行っていたこともあって、「じゃあ、敵は豚にしようか!」という、そんな流れで生まれたんです(笑)
世界的スマホゲームの最高峰『Angry Birds』 日本代表に独占インタビュー
アングリーバードの制作会社のロビオは、51タイトル作ったのですが、なかなかヒット作品が出ずに苦しんでいたそうです。しかし、それでも作り続けた結果、大ヒットとなるアングリーバードが生まれました。
――ブレイクした理由は何だと思いますか?
トリノオリンピックでアルペンスキーの金メダリストになったスウェーデン人のアニヤ・パーション選手の影響も大きいポイントです。アニヤ・パーション選手は、2010年のバンクーバオリンピック直前に怪我をしたのですが、そのときのインタビューで、“アングリー・バードを楽しんでいるから、怪我をしていても退屈ではないよ”というような発言をしたんですね。実は、これがきっかけで、フィンランドに続き、ヨーロッパ各国でAppStoreの1位を獲得しました。
世界的スマホゲームの最高峰『Angry Birds』 日本代表に独占インタビュー
アングリーバードはたまたま金メダリスト選手の目にとまり、プレイされたことがヒットの原因となっています
「たまたま」つまり「運」です。
これだけ聞くと「結局、運かぁ…」と打ちのめされてしまうかもしれません。ただ、それでもその幸運を得る確率を上げるためには、多くのゲームを作り続ける必要があるのではないかと思います。
また、たくさんゲームを作ると、ゲーム開発者としての経験値を上げることができます。ゲーム開発スキルをアップさせると、作れるゲームの幅が広がり、より品質の高いゲームや、話題性に柔軟に対応したゲームを作る速度がアップします。
このあたりは、Game A Week (1週間で1本ゲームを作るチャレンジ)でも言われていることです。
Game A Week についてはこちらに書きました
Game A Weekの定義まとめそれに対して、世の中には天才というものがいて、長い期間かけて作ったゲームをヒットさせた人もいます。例えばインディーゲームとして大成功した UNTERTALE は開発期間が 2年7ヶ月、Stardew Valley は4年以上かかったとのことです。ただ、これはなかなか普通の人に真似できるものではないので、例外的なものとして考えた方が良いかもしれません。
自信があるなら何年もかけて1つのゲームを作るのも良いですが、小さく作って素早くリリースする方が、精神的な負担も小さい気がします。
もちろん、小さく作った作品がヒットするかどうかはわからないので、結局ヒット作を作るまでに数年間かかった……、なんてこともありそうですけれども。
もしくは、作りかけ途中のゲームを「体験版」「アーリーアクセス」として提供して反応を見るのも良いかもしれませんね。
どこかの記事で読んだのですが、会社を辞めて、たっぷり時間をかけて納得のいくクオリティの高いゲームを作ったものの、あまり売れずに生活に困っている、という話もありました。1つのゲームに集中すると当たった時にデカイですが、外れた時のダメージも大きいのではないかと思っています。
また「たくさんゲームを作る」という主張と矛盾しているかもしれませんが、試行錯誤もなしに作品のクオリティを「自分でも簡単にできるライン」に妥協すると、それはそれで他の人が作ったゲームとの差別化が難しくなるので、ある程度の頑張りは必要です。
4. 知名度を上げる
ゲームを売るためには、一定の知名度や実績が必要です。ただ闇雲にゲームを作り続けても、知名度を上げることは難しいです(経験談)。
方法としては以下のものが考えられます
- コンテストへ参加して賞を受賞する
- イベントに参加・出典する
- SNSでコミュニティを作る
コンテストに参加することのメリット・デメリットは以下の記事にまとめました。
ゲームコンテストに参加して開発力を上げよう個人的には直接的な知名度アップよりも、技術的な向上や、同じコンテストに参加した人との交流などが得られるイメージです。ただ、もし賞が取れれば実績をアピールしやすいですし、長期的に見ると知名度アップにつながる活動となります。大変ですが、興味があれば参加しても良いかもしれません。
「イベントへの参加・出典」は参加の準備が大変ですが、直接ユーザーや同じ開発者と話ができたり、人目を引くゲームであったり、実績があれば有名なメディアに取り上げられて、一気に知名度を上げるのに役立ちます。
インディーゲームのイベントは様々なものがあるので、情報サイトなどで参加できそうなイベントを探します。
なお、メジャーなイベントとして「コミックマーケット」「BitSummit」がありますが、どちらも競争倍率が高く参加条件が厳しかったりするので、イベントへの参加に慣れていない場合は、別のイベントへの参加を考えたほうが良いかも知れません。
今どきであれば、SNS (Twitterやインスタグラム、Youtube) で、開発中のゲームをアピールしたり、登場するキャラクターのイメージイラストをアップしたりして、ファンの獲得が期待できます。
SNSでの発信力をアップする方法は「シロナガス島への帰還」の作者の方が講演された内容がとても参考になるので、以下の記事がおすすめです。
「シロナガス島への帰還」に学ぶ個人開発タイトルをヒットさせる4つの方法5. ゲーム以外のお金を稼ぐ方法を考える
ゲームをリリースするだけが、ゲームでお金を稼ぐ方法ではないと思います。
例えば、「片道勇者」の作者である SmokingWOLF さんは、ゲームだけでなく電子書籍を配信しています。
こちらはゲーム開発を続けて得た経験や手法をまとめた本で、多くのゲーム開発者に高い評価を受けています。売れているかどうかはわかりませんが、技術書としてはレビュー数も多く、一定の売り上げランキングを維持し続けているので、そこそこ売れているのでは……、という印象があります。
あと、個人的な話ですが、私も技術情報を電子書籍として配信して、少しだけ収入を得ています。
技術書を書くのはとても時間がかかり、実はお金を稼ぐ手段としてはあまり効率的ではないのですが、
- 文章を書くのが好き
- ゲーム開発で得た知識を多くの人に広めたい
という気持ちがあれば、選択の1つとしてアリだと思います。
あと、本による収入は大したことないかもしれませんが「本を一冊書けるなんですごい人かも」というハロー効果が発動して、プロモーション作りに役立つ可能性があります。たぶん。
ゲーム開発経験をお金に変える、別の方法としては……、
- 受託開発をする (企業から部分委託などで依頼を受けてその仕様でゲームを開発する)
- ゲーム専門学校 (もしくはオンライン学習塾) の講師のアルバイトをする
- Udemy にゲーム開発手法の動画をアップロードして販売する
など、色々ありそうです。
ゲーム開発とは直接関係ないのですが、こういった方法で開発費(生活費)を稼ぐのもアリなのではないかと思います。
参考になる記事
「和尚」が語るゲーム作家の生き方指南
個人アプリ開発で生計を立てている「いたのくまんぼう」さんによる「いかにして個人制作ゲームで生きていくか」という講演のまとめ記事です。
- すぐにはヒットしない。当たるまで作り続ける
- 専業でやるのは危険。まずは会社で仕事をしながら余暇の時間でゲームを作る
- スマホ向けなら「放置系」「クリッカー系」が狙い目のジャンル
- スマホ向けは「めんどくさい」ゲームにしない
- 売るためにしっかりプロモーションする
- 自分にしか作れないゲームで、他との差別化・独自性を出していく
といったことが個人制作で生き残るために大切なことであるとしています。
また、いたのくまんぼうさんはUnityの本をいくつか出版されていて、どちらもUnity初心者にわかりやすく解説されておりおすすめです。
インディーゲーム開発者として活躍されている「一條 貴彰」さんがインディーゲーム開発者として生計を立てていくために必要な情報をまとめた本です。
ゲームを完成させるための方法から、マーケティングの方法まで、ゲーム開発に関することが幅広くまとまっていておすすめです。
もし技術力が不足していると考えているなら、小さいゲームをたくさん作って技術力を向上させるのも1つの方法と思います。以下の記事では、個人的におすすめな20のゲームを紹介しています。
初心者が作ると勉強になるゲーム20選「シロナガス島への帰還」というインディーゲームがあります。これはゲーム開発者としてほぼ無名ながら、数万本売り上げた鬼虫兵庫氏のポイントクリック形式のアドベンチャーゲームです。
鬼虫氏はこの売上を達成するための過程をいくつか公開しており、そういった情報をまとめた記事が以下となります。長い期間かけて自分の作りたいゲームを作り、しっかり売上の実績を残したい……と考えている方に参考になるかもしれません。
「シロナガス島への帰還」に学ぶ個人開発タイトルをヒットさせる4つの方法