ターン制バトルで起こりがちな「3つの問題点」の解決方法

ターン制RPGについて調べていたら、

という面白い動画があったので、その内容を個人的にまとめてみました。

ターン制バトルの問題となるポイントと改善方法

ターン制のバトルとは?

まず、ターン制のバトルの定義です。

  • リアルタイム制と異なり、敵と味方は基本的に停止していて、何か行動を起こさないとゲームが進行しないバトルシステム
  • この行動は「コマンド」「アクション」と呼ばれる
  • 行動は敵と味方で「交互に」順番が回ってくる。または素早さなどのパラメータで順番が決定される
ターン制コマンドバトル

「ターン制バトル」というジャンルの呼び名として、特に日本では “ターン制コマンドバトル” と言われることが多いです。なぜ “コマンド” と呼ばれるかは、初代ドラクエにおいて戦闘での選択肢を「コマンド」と呼んでいた影響が大きいのではないかと思われます。

なお “コマンドバトル” と呼ぶ場合、SRPG的なストラテジーゲームは含まれないようです。

代表的なターン制バトルのゲーム

  • ドラゴンクエストシリーズ: 日本におけるターン制バトルの基礎を作った
  • ファイナルファンタジーシリーズ: サイドビューバトルやジョブチェンジ、ATBなど多数の (実験的な) 発明によりJRPGの進化に多大な貢献を果たした
  • 真・女神転生、ペルソナシリーズ:悪魔との会話やプレスターンバトルなど
  • グランディアシリーズ:タイムラインや位置関係によるストラテジー要素強めのバトルシステム
  • ファイアーエムブレムシリーズ:日本でのSRPGの基礎を作った

ターン制バトルのメリット

次にターン制バトルのメリットです。

  • 時間が停止しているので、「長い時間」考えて行動を選ぶことができる
  • 時間の経過が「不連続」的なので、1つの行動の「重み」が大きく、1つの行動で「複数の問題を解決する」ことが求められるメカニクスとなる
  • それにより、選択可能なそれぞれの行動に「異なった軸のメリット・デメリットがある」ことが望ましい

ターン制バトルのデメリット

  • わかりにくいルール:不連続な時間の扱いを処理するために「直感的でないルール」が存在しがち
  • 不自由さ:不連続な時間によるプレイヤーの「ゲームへの介入が限定的」となる
  • 単純作業になりやすい:攻略パターンを見つけると「同じ方法の繰り返し (レベル上げなど)」の単純作業に陥りやすい

ターン制バトルの問題となりがちなポイント

これらを踏まえて、ターン制バトルの問題となりやすいポイントは以下の3つです。

  • 1. バトルの「テンポが悪い」 (何もせず見ている時間が長い)
  • 2. 同じコマンドを繰り返すだけの「単純な戦闘」になりやすい
  • 3. 「レベル上げ」という単調な作業が発生しやすい

これらの問題の詳細と解決策について説明していきます。

問題点1. バトルの「テンポが悪い」

ターン制バトルの問題点の1つは、入力してから「何かが起こるのを待つ時間」が長いことです。メカニクスの都合上、不連続な時間を扱うので行動結果を反映・確認するタイミングが必要なのですが、そこをわかりやすくしようと必要以上に演出を長くしてしまうと、ユーザーにとって退屈な時間が長くなってしまうので注意が必要です。

以下、長くなりがちなポイントをリストアップします。

  • 戦闘開始演出:エンカウント演出や敵の出現演出。必要なリソースを読み込むロード時間など
  • キャラクターの行動演出:プレイヤーや敵の行動開始演出。攻撃アニメーション。テキストなど
  • その他の演出:特殊スキル演出、敵を倒した演出、逃走演出、メニューの入場退場演出、勝利・敗北演出など

ワーストケース:「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」のテンポが悪い例

バトルのテンポの悪さのワーストケースとして、ニンテンドーDSで発売された「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」は以下の場面のテンポがかなり悪いです。

  • 戦闘への移行演出
  • 戦闘開始テキスト
  • メニューの操作(とメニューのアニメーション)
  • 攻撃アニメーション
  • 攻撃ヒット演出
  • 亀のような遅さの体力ゲージの減少。その他ステータスエフェクト
  • すべてのテキストの確認(メッセージ送りボタンを押さないと先に進まない)

ポケットモンスター ソード・シールド」ではバトルアニメーションをOFFにする「高速化モード」があります。ですが、これを有効にすると魅力的なアニメーションがすべてOFFとなりゲーム体験を大きく低下させてしまい、根本的な解決となっていません

高速化モードがあるから演出は長くても良い」という考え方ではなく、標準のゲーム設定でテンポよく遊べるシステムであるのが理想となります。

戦闘が長引くのが悪いのか?

テンポが悪い」というのは、必ずしも長時間のバトルが問題となるわけではありません。長時間のバトルでしか出せない緊張感もありますし、頭を悩ます選択の連続が発生するバトルであれば、たとえ長時間のバトルでもユーザー体験は魅力的なものとなります。

例えばターン制のストラテジーゲーム「Into the Breach」では、1手に10〜20分以上も悩むこともある高難易度ゲームですが、最適な解法を見つけたときの達成感はとても高く、上質なゲーム体験を得られます。

Into the Breach (出典:Steam)

解決法1: アクションに対する演出を同時実行できるかを検討する

連続攻撃」による多段ヒットや「範囲攻撃 (AoE)」によるエフェクトなど、同時再生できないかどうかを検討します。特に連続攻撃であれば、ヒット演出のみを連続再生することで高速化が可能となります。

種別テンポが悪い演出改善後
連続攻撃1. 「○○の攻撃!」 (攻撃開始演出)
2. 「XXダメージ」(ヒット演出)
3. 「○○の攻撃!」 (攻撃開始演出)
4. 「XXダメージ」(ヒット演出)
5. 以下、ヒット回数だけ繰り返す
1. 「○○の攻撃!」 (攻撃開始演出)
2. ダメージ演出を攻撃回数だけ連続再生
3. トータルダメージを表示する
範囲攻撃1. 「○○スキル発動!」(スキル演出)
2. 「XXダメージ」(ヒット演出)
3. 「○○スキル発動」(スキル演出)
4. 「XXダメージ」(ヒット演出)
5. 以下、敵の体数だけ繰り返す
1. 「○○スキル発動!」(スキル演出)
2. 効果がある敵全体にヒット演出を同時再生

解決法2: ATB / CTB の導入

目指すべきバトルシステムにもよりますが、ATB / CTB を採用すると体感的な待ち時間が減り、ターン制バトルのテンポの悪さが軽減されます。

ATB (アクティブタイムバトル)

ファイナルファンタジーシリーズで伝統的に採用されている、ターンの順番を ATB ゲージと呼ばれるゲージが満たされたときに行動可能とするシステム。

コマンド選択中も時間経過が行われ、コマンド選択に時間をかけすぎると敵からの攻撃で割り込まれることもある「アクティブ」モードと、コマンド選択中には時間が停止する「ウェイト」モードがある(「アクティブ」の方が難易度は高いがメリットはない)。

また選んだコマンドによる「待機時間」が設定されており、待機時間中は ATBゲージは上昇しない。

待機時間の長さは、選んだコマンドの種類やそのキャラクターの速度、能力値などに依存するため、ストラテジー要素が強めのシステムとなっている。

CTB (カウントタイムバトル)

「待機時間」が “0” になったキャラクターから行動可能となるシステム。待機時間はキャラクターの速度値に直前の行動を乗算した値で求められる。

特筆すべきは、行動順がリスト表示され割り込みタイミングが発生した場合には即座に入れ替わるようになっていること。これにより敵の強力な攻撃の発生を遅らせたり、対処行動を先回りして行うなどの戦略性が生まれるようになった。

解決法3: アニメーション中にインタラクティブな (割り込み) 要素を入れる

これも目指すべきバトルシステムによりますが、アニメーション再生中に特定ボタンを入力することで良い効果が得られるシステムを採用すると、ただ待っているだけよりもプレイヤーが介入できるバトルとなります。

  • スーパーマリオRPG: 特定ボタンを押すことで追加ダメージなどが入る
  • ファイナルファンタジー6: 格闘ゲームのようなコマンド入力でスキルが発動する
  • 龍が如く7 光と闇の行方: QTE を入れる
  • Undertale: 敵の攻撃回避を Bullet hell (弾幕シューティング) で行う

これらは使い所が難しいですが、Undertale敵によって弾幕パターンや遊びが異なりキャラクターの個性を表現するのに一役買っているという狙いもあり、とてもうまく活用されているメカニクスだと思います。

Undertale (出典:Steam)

解決策4: メニュー操作の高速化

ターン制ゲームで最も繰り返し行う操作が「コマンドリストからコマンドを選択」することです。この時間をわずかでも減らすことで、テンポの悪さを改善できます。

例えばペルソナ5では、各サブメニューへ入るためのショートカットキーが用意されていて、高速で目的の項目へアクセスできるようになっています。

ペルソナ5 ザ・ロイヤル (出典:Steam)

またメニューの階層移動は一瞬で行われ、待ち時間を最小限に減らしているという点も参考にすべきポイントだと思います。

解決策5: 演出スキップ

根本的な解決ではありませんが、決定ボタンなどで「演出」や「ボイス再生完了待ち」をスキップできるようにしても良いかもしれません。

問題点2. 単純な戦闘になりやすい

ターン制バトルは、戦略が固定化すると単純で退屈(予測可能で同じことの繰り返し)になりやすいです。それを崩すには戦闘の流れを変えるシステムが必要となります。

解決策:  予測調和を崩したり、最適化の余地があるバトルシステムにする

ターン制バトルでは、使い勝手の良いスキルやキャラクターが手に入ると、そればかりを繰り返してしまいがちになります。ターン制バトルのコアメカニクスはストラテジー要素であり、それを強めるために予測が難しい要素や必勝パターンを崩すシステムの導入を行います。

  • バフやデバフ:行動順の入れ替え、睡眠や麻痺などでターンを止めたりする
  • プレスターン:弱点を突くことで相手のターンをスキップ、自分のターンを増やす
  • Brave and Default:デフォルト (防御) でターンを増やすことができる。またターンの前借りも可能(最大±4ターンまで。マイナスの場合は行動不可となる)
  • タイムライン:ATB / CTBの発展型。グランディアシリーズや Child of Light で採用されている
グランディアの戦闘システム

グランディアは独特なターン制の戦闘システムを採用している。以下、簡単に特徴を紹介する。

戦闘フィールドでの「キャラの位置」が重要となる

遠くの敵に近接攻撃を仕掛ける場合には、移動コストが必要となる。またキャラ同士が固まった状態でいると範囲攻撃の餌食にされたりと、一般的なストラテジーゲームの要素が入っている。

IP (イニシアティブ・ポイント) システム

行動可能になるには、時間経過に応じて増える「IP (イニシアティブ・ポイント)」が一定値に達する必要がある。この上昇率はキャラクターによって様々で、基本的に素早さの高いキャラほど速い。

グランディア HDリマスター (出典: Steam)

そして相手にダメージや状態異常を与えることで、IP増加を止めることが可能となる。

またターンが回って (COM) 、行動実行 (ACT) にはラグ (≒詠唱時間、キャストタイム) が存在し、スキルによっては COM〜ACT に長い時間を必要とする場合もある。 さらに COM〜ACT の間にクリティカルや特殊スキルをヒットさせると COM 以前までキャンセルさせることも可能。

なお Child of Light では、ほぼ同様のシステムが採用されている。(WAITが IP、CASTが COM〜ACT)

Child of Light (出典:Steam)

問題点3. レベル上げという単純作業

ターン制バトルは報酬として「XP (経験値)」や「アイテム」「装備品」などを獲得できますが、ゲームによって適切な報酬となりえないことがあります。

というのも「レベルアップ」や「スキルアンロック」「レアアイテム」というお目当ての報酬を入手するには、数多くの戦闘を繰り返す必要があり、これらは単純な作業となりやすいです。

この問題はアクションRPGなどのリアルタイムゲームでも発生しやすいですが、アクション要素があると単調さが軽減されることが多いです。それはターン制バトルの面白さが「頭を考えて戦う」というストラテジー要素に依存するため、頭を使わずに同じパターンの繰り返しが発生すると、その単調作業に退屈して飽きてしまうからです。

解決策1: 小さなアップグレードを繰り返し行えるようにする

単調な作業の解決策の1つとしては、小さな変化を繰り返し行うことです。

ファイナルファンタジー5 では、戦闘勝利時に経験値だけでなくジョブレベルを上げる ABP を獲得することができますABPを使ってどのジョブを強化するのはプレイヤーの自由な選択で、それにより新しいスキルを得たり、スキル同士を組み合わせてより強力な組み合わせを見つける面白さが得られます。ジョブレベルの成長速度は様々で小さなアンロックが細かく繰り返され、そのたびにゲームプレイに変化が生まれるわけです。

これはRPGに限らず、ストラテジーゲームでも同じ例が見つかります。ストラテジーゲームでは、各キャラクターの成長速度が様々で、クラスの選択や装備品や特性の違いなどで、キャラクターの構成について考える楽しさが得られます。

また Hack ’n’ slash (ハック&スラッシュ) のような「素材の獲得」による強力な武器の入手や、 アイテムを合成する Crafting (クラフト) 要素などもゲームに小さな変化を発生させるメカニクスとして検討の価値があります。

解決策2: バトルの目的を「勝利」以外のものにする

真・女神転生シリーズでは、敵との会話を通じて味方(仲魔)にすることができます。戦闘の目的を「戦って敵を倒すこと」だけを目的とするのではなく、お目当ての悪魔を入手する探索要素や交渉要素が生まれます。

また、これは問題2の「単調なバトル」の解消にも適用できる項目ですが、交渉に失敗した場合は敵の先制攻撃でバトルが開始されてリスクの高い戦闘となり、緊張感のある戦いととなります。

解決策3: バトルシステムをゲームの物語に織り込む

ファイアーエムブレム 風花雪月では、キャラクター同士の連携レベルの強化(バトルや会話)により戦闘を有利に進めることが可能となるシステムが採用されています。これにより強力な連携を探したり、お気に入りのキャラを強化する楽しみが生まれます。

さらに連携レベルによってストーリのルート分岐が発生するようになっており、キャラクター強化のモチベーションを押し上げる要因となっています。

恋愛ゲーム の要素を取り入れる

JRPGで有効な「ゲームシステム」と「物語」の融合が Dating sim (恋愛ゲーム) です。

古くは「サクラ大戦シリーズ」でキャラクターとの会話により「信頼度」を上げることでバトルを有利に進めることが可能となりました。

またペルソナシリーズ (ペルソナ3以降) では、お目当てのキャラクターと親密になることで強力なペルソナ (悪魔) を召喚できるメリットを享受できます。

解決策4: プレイヤーのレベルに合わせて敵を強化する

やや扱いが難しいですが、プレイヤーレベルに合わせて敵のレベルを自動で変動させることで、常に均衡の取れたバトルとなります

ファイナルファンタジー8 では、プレイヤーレベルが上がると敵も強化され、手詰まりになったときの救済要素として「ジャンクション」により、「召喚獣」や「魔法」を装備してプレイヤーを強化することができます。

クロノクロスでは、「レベルスター・システム (キャラクターのレベルを強化するスターに上限がある)」により、常に緊張感のあるバトルとなり、さらに戦闘はすべて逃走可能です。

ただこの方法は、負のフィードバックループの問題が発生するので取り扱いに注意が必要です。

負のフィードバックループ

負の Feedback loops (フィードバックループ) とは、常にゲームのパワーバランスを均衡させることで、パワーインフレによる単調化を防ぐメリットがあります。

ただし、常に均衡化するとプレイヤーの成長を感じにくくなる(「俺TUEEE」ができない)ので、正のフィードバックループ(インフレ化)を部分的に取り入れる必要がありそうです。

解決策5: ストーリーとレベル上げを分離する

ディスガイアシリーズでは、シナリオ進行とは別にキャラクター強化の場が用意されており、どこまでもキャラクターを育成することが可能となっています。

ストーリーの進行をロックしてレベル上げさせるのではなく、レベル上げを楽しむステージとストーリーを進めるステージを分けることで、プレイヤーは常に楽しい戦闘ができます。

参考

How Do You Improve Turn Based Combat?

今回の記事を書くにあたって参考にした動画です。

JRPGとは何か

戦略 (ストラテジー) 性とは何か、という考察が興味深いです。戦略性を高めるための3要素として以下のものを提示しています。

  • 1. 未来が予想できること:世界観や設定による確実性のある「情報の開示
  • 2. 未来が完全には予想できないこと:開示する情報と「非開示情報」の取捨選択。不確実 (ランダム) 性の導入
  • 3. 未来を自分で変えられること:受動的でなく「能動的」なプレイヤーのゲームメカニクスへの介入

その他

関連記事

バトルに特化した RPG を作る方法については、以下の記事に書きました。

RPGを簡単に作る方法