現代的なゲーム難易度の考え方

この記事では、現代的なゲームの難易度についての考え方について説明をします。

難易度とは何か

難度(なんど)または難易度(なんいど)とは難しさ(むずかしさ、物事の実現しやすさ)の度合いの事である。

Wikipedia – 難度

ゲームにおける難易度とはゲームの難しさの指標です。難易度が高いほどゲームクリアが難しく、難易度が低いゲームは簡単にゲームクリアできるとされています。

現代的なゲーム難易度の特徴

現代的なゲームの難易度の肌感としては、「誰でもクリアできるように難易度調整されていると良いゲーム」とされている印象です。

この理由として「フロー理論」が挙げられれます。

フロー(英: flow)とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。ゾーン、ピークエクスペリエンス、無我の境地、忘我状態とも呼ばれる。心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱され、その概念は、あらゆる分野に渡って広く論及されている。

Wikipedia – フロー(心理学)

フロー理論とは「何かに自我を忘れて没頭させる(フロー状態に入らせる)ための条件」を定義したもので、この条件が満たせることで「ゲームに没頭させる」という応用が可能となります。このフロー理論はゲームでも応用できることが研究により明らかになっている、とのことです。

例えば「明確な目的」を提示してやるべきことをわかりやすくする、「直接的で即座な反応(フィードバック)」が起こることで何が起きているのか理解でき対処方法の検討材料となりやすくなる、といった手法でゲームにハマらせることができます。

そしてフロー状態に入るための条件として「能力の水準と目的達成の難易度のバランス」というものがあり、適切にクリア可能な難易度であることが、ゲームにハマらせるための条件の1つと言えそうです。

ゲームのターゲットをどこに設定するかに依存しますが、「より多くの人に遊んでもらいたいゲーム」というターゲットが広い定義(10万人以上に遊んでもらいたい)場合、ゲームクリアまでのハードルを高くしてフロー状態に入れず離脱者を増やすゲームよりも「誰でもクリアできるように難易度調整する」方がより多くの人に受け入れられやすいです。

誰でもクリアできるゲームとは

誰でもクリアゲームにするには「難易度を低め」に抑える必要があります。ゲームが上手い人には物足りないですが、ゲームが得意でない人にはちょうど良いゲームバランスとなるためです。

また、子供向けのゲームにする場合は基本的に「難易度を低め」にするのがセオリーとなっています(実際に子供向けゲームを仕事で担当した時には、何度もそのことを言われました)。そのため、想定するプレイヤー層に子供を含む場合は、必然的に難易度を抑える必要があります。

また、スマートフォン向けのカジュアルゲームを作る場合も、難易度の高いチャレンジがあるゲームよりも、多少簡単でもクリアしやすい難易度に抑えた方がダウンロード数が上がる傾向があるようです。

特に「ハイパーカジュアルゲーム」の場合は、ちょっとした難易度の上昇で離脱率が大幅に上がるため、難易度の扱いは慎重に行う必要がありそうです。

ハイパーカジュアルゲームの作り方 ハイパーカジュアルゲームの作り方

現代的なゲームの難易度の調整方法

子供向けにする、ハイパーカジュアルゲームを作る、というのは極端な例ですが、一般的なゲームであっても「難しくてクリアできない。このゲームはクソゲー」と言われるよりは、「誰でもクリアできる」としてゲームの評価を良くする(下げない)のは無難な選択と言えます。

以下、誰にでもクリアできるゲームを作るための考え方を提示します。

  • 1. ゲームクリアまでは簡単にして、ゲームクリア後のやり込み部分で高難易度モードを追加して、長くプレイしてもらえるようにする
  • 2. ゲーム中に難易度を変更できるようにして、プレイヤーが自由に難易度を調整できるようにする
  • 3. ミス・失敗に対しても報酬を与えるようにして、ゲームクリアしやすくする

ゲームクリア後に、本来遊んでもらいたかった遊び方(敵が強くなる、便利アイテムが使えないなど)を用意するのも1つの方法です。ゲームクリア後にプレイヤーが「物足りない」と感じれば、難易度の高いモードで再プレイすることで手応えのあるゲームプレイをすることができます。
もしくは、実績やアンロック、コンプリート要素で、それらを達成するための目標と高めに設定する方法もあります。
この方法の欠点としては、ゲームに “繰り返し遊ぶ魅力がない” 場合、再び遊んでくれず、中途半端な評価になってしまうことです。

また、プレイヤーに難易度を選ばせる、という方法もあります。ゲーム開始時だけでなくゲームプレイ中でも選ぶことができれば、間違った難易度を選んでしまっても、ゲームを最初からやり直すことなしに、自分にあった難易度を選び直すことができます。
ゲームプレイ中に難易度が選べる仕組みは、ゲームクリアまでが長いRPG(「俺の屍を超えてゆけ」「ペルソナ」シリーズ、など)で採用されています。
この方法の欠点は、「難易度調整」をユーザーに任せることで、遊ばされている感がどうしても出てしまうことです。

最後に、ミスや失敗をしても少しずつ報酬を与えることでゲームクリアまでの難易度を下げる方法です。例えば「グラディウスV」ではプレイ時間によりコンテニュー回数が増えるという仕組みがあります。これにより一定時間遊ぶことで、コンテニューが無限になって、誰でもクリアできるようになる仕組みが用意されています。
また最近のFPSでよくある仕組みとして、瀕死状態になっても物陰に隠れてハァハァしていると(じっとしていると)HPが自然回復するようになっています(昔のゲームは決まったHP内でクリアしなければならなかった)。これにより、何もできない時間を消費することで、比較的簡単にゲームクリアできるようになっています

プレイ時間が長くなるほど難易度を低下させる

つまり、「時間さえかければ、誰でもクリアできる」という難易度に調整されています。

ただ、この方法の欠点としては、「救済措置が目に見えてしまう」ことで手加減されている印象を受けて、ゲームに馬鹿にされているような気がすることです。
そこで、実装は少し難しいですが「Left 4 Dead」シリーズで採用されている “プレイヤーのスキルに合わせた難易度の自動調整AI” を作れると自然に調整された難易度でゲームを楽しむことができます。もしくは「ゼビウス」「バトルガレッガ」などのシューティングゲームで採用されている難易度(ランク)の自動調整。

ゼビウスの動的な難易度調整については、以下の考え方となっているようです。

一定時間経過で難易度が上昇する
プレイヤーのミスによって難易度が下がる
特定の敵を破壊すると難易度が上がったり下がったりする
難易度の影響を受けるのは一定の敵のみ

「ゼビウス」における動的難易度調整

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参考