「体験」から作るゲームデザイン

この記事ではゲームを作るときの出発地点を「体験」ベースにすることの重要性について紹介します。

体験がゲームづくりに大切であることを示す例

書籍やネット上の情報を元に「体験」を作ることがいかに大切であるのかをまとめました。

ゲームデザイナーの役割とは何か

「The Art of Game Design」という海外で最も支持されている(と思われる)ゲームデザイナー向けの本があります。(日本語訳も発売されています)


この本に以下のことが書かれています。

ゲームデザイナーの役割は何でしょうか。
そんなこと明白? ”ゲームを作ること” では?
それは違います。
ゲームは最終的な形式に過ぎません。

ゲームが楽しいのは、ゲームを遊ぶことで得られる「体験」があるからこそ。
この「体験」を魅力あるものにするのがゲームデザイナーの役割です。

  • ゲームデザインバイブル 第2版 ―おもしろさを飛躍的に向上させる113の「レンズ」
  • ゲームでは、様々な体験ができます。勇者になって世界を救うこともできますし、アニメや漫画のヒーローになって活躍することもできます。海外の自由なプレイスタイルのゲームであれば、犯罪者になって狼藉を働くことすらできてしまいます。

    そういった体験をいかに魅力的にできるのか、ということがゲームデザイナーには試されているわけです。

    ボードゲームデザイナー・ミヤザキユウさんの場合

    ボードゲームデザイナー・ミヤザキユウさんは、自身のゲームが生まれる過程を以下のように書いています。

    思えばいままで、「何かゲームを作ろう」という動機からは、ゲームを作れたことが一度もない。

    最初に自分がワクワクする世界観があって、それを他の人にもワクワクしてもらうためにはどうすればいいだろう、と考えてゲームをデザインしてきた。

    同様の目的を達成するためには、マンガや小説を用いることも考えられる。しかし自分のもっている能力やリソースを鑑みて、ある世界観の持つ魅力を、最も伝わるように翻訳する手段としてゲームを選んだのだ。

    「感情を翻訳してゲームをデザインする」プロセス その1

    ミヤザキユウさんは、”ゲームを作るためにゲームを作る” ということをしていません。

    むしろゲームとは無関係の何かの「世界観」から受けた「自分の感情」を分析して、それを再現するためにゲームを構築する、という方法を取っています。

    ゲーム開発者は、過去に遊んだゲームの思い出や分析からゲームを作りますが、大切なのは「ゲームシステムを再現する」ことではなく、人生で得られた興味深い体験を、ゲームのフォーマットを使って再現する」とすると魅力的なゲームを作れる可能性が上がりそうです。

    桝田省治さんの例

    桝田省治さんは「リンダキューブ」や「俺の屍を超えてゆけ」といった独特の世界観とゲームシステムで、ゲームファンの高い支持を得ることに成功しました。それらのゲームが生まれるまでの「思考の過程」「発想法」などをまとめた本がこちらです。

    この本に書いてある、桝田省治さんの発想法は以下の流れとなっています。

    1. まず、僕が面白いと思うとこと、逆に言えばユーザーを面白がらせたいゲームむきのネタをどこかで見つける
    2. 次にそのネタを再現するためのルールやゲームの目的を考える。ようするにシステム部分の構築だ
    3. そのルールや目的が存在してもおかしくない世界設定をでっちあげる。ようするにシステム部分の構築だ
    4. 最後に、ルールや目的、世界設定が説明的にならず、感覚的に理解しやすいシナリオやキャラクターを追加する

  • ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ―
  • 桝田省治さんも “ゲームシステムありきでゲームを作っている” のではなく、ユーザーを楽しませたいことの1つの形式としてゲームを利用している、という作り方をしています。

    感想

    ジャンルやテンプレから作るゲームは体験が弱い

    個人的な話となりますが、私は何かにつけて「ゲームジャンル」からゲームを作ろうとしているようです。

    自分を擁護するためではありませんが、これはある意味正しいです。というのも、ゲームを少しずつ形にしていき、その結果となる最終的なクオリティは “ゲームをいかに理解しているか” という部分で決まるからです。「体験」の感覚的なインパクトはゲームを繰り返しプレイするうちに薄れていきます。そのため、より深く楽しませるためにはそのゲームのシステムがどのように作用しているかを意識して機能させる必要があります。

    しかし、とっかかりとして「どのような感情をプレイヤーに体験してもらうのか」という部分を無視してしまうと、無味乾燥なゲームができてしまいます。改めて自分のゲームを見直してみると、テクニック・技術に寄りすぎて広がりがないのですよね。

    よく個人制作のゲームには「作家性」が必要ということが言われるのですが、「作家性」を表現するために必要な要素として、「体験」や「感情」の表現があるのでないか、などという気がしています。