この記事は、以下の方を対象にしたものとなります。
- これからゲームシナリオを書きたいと思っている個人ゲーム開発者
- ゲームシナリオを書きたいのに書けない個人ゲーム開発者
目次
ゲームシナリオを書くための4ステップ
ゲームシナリオを書く場合、おおよそ以下の4ステップを行います。
ストーリーのアイデアや設定の5W1Hをぼんやり考えます。思いついたところから書き出すと良いです。
ストーリーのアイデアや設定を元に、ストーリー全体の流れや展開を大まかに書いていきます。
プロットで出来事の流れや関連する理由や原因などを書き出せたら、シーンやキャラのセリフなどのテキストを書いていきます。このテキストはユーザーがゲームプレイ中に読む文章となります。
テストプレイしながらテキストや演出を調整していきます。
1. ストーリーを考える
ゲームシナリオは「ゲームで得られる体験」を基準に方針を決めます。例として「ゲームジャンル」を基準に考えます。
- 一般的なJRPG:強大な敵との戦いを通して得られる仲間との友情や絆、大切な人との出会いや別れ。戦争の悲惨さや平和の素晴らしさなど。
- ローグライク:同じ世界や時間をループすることによるヒーローの苦悩や絶望。そこから抜け出したときの達成感や解放感など
- ホラーゲーム:得体のしれない異形の生物に追いかけられる焦燥感、迫りくる死の恐怖。極限状態における人間の狂気など
ゲームジャンルが明確であれば、既存のゲームのシナリオを参考にします。ゲームジャンルごとに相性の良いシナリオの種類はある程度決まっているので、何か特別な理由がなければ王道のシナリオで良いと思います。
もちろんゲームジャンルが明確に決められないこともありますが、その場合は「作りたいゲームの核となる体験は何か?」「得られる感情は何か?」をよく考え、それを表現するのに適したシナリオを選択していくのが良いと思います。
ここではゲームシステムありきのシナリオの決め方について書きましたが、シナリオを決めていく順番は自由で、
- 1. ゲームシナリオとゲームシステムを「並行」して決めていく
- 2. ゲームシナリオを先に固める → ゲーム内容を後で考える
- 3. ゲームジャンルを決める → シナリオを後付けで考える
シナリオが先にあってゲームを後で作っても良いですし、同時に並行して進めていくのも良いです。
個人的な印象では、長いテキストを読ませるようなノベルゲームの場合はシナリオが先にあり、アクションゲームの場合はシナリオは後付けで良いような気がしています。
方針が決まったらシナリオを具体的にしてきます。具体的にするには「5W1H」を考えると良いです。
5W1H | → | シナリオの構成要素 |
---|---|---|
Who | だれが | 登場人物・関係者・NPC |
When | いつ | 時代・背景・時系列のチャート表 |
Where | どこで | 舞台・場所 |
What | なにを | 出来事・事件・事件の内容 |
Why | なぜ | 経緯・理由・PC / NPCの行動原理 |
How | どのように | 展開・結末・能力の使われ方 |
これらは好きな順番で作りたいものを基準に決めていって問題ないですが、1つだけ気をつけたほうが良いことがあります。それは自分が「作れる素材」で絞り込みしたほうが良い、ということです。
例えばアクションゲームの舞台を「学校」や「都会の街」「近未来SF風の建物」など人工物の多い入り組んだ場所にすると絵が描けない場合、素材を作るのに苦労します。
以下は「アクションゲーム」「素材」「背景」でGoogle検索した結果ですが、「草原」「森」「荒野」など簡素な自然物の素材が多いことがわかります。
他にも「ダンジョン」「洞窟」「迷宮」は素材が多く、ゲームの舞台として扱いやすくておすすめです。
このあたりはシナリオから頑張って決めていくよりも、「実際にゲームを作って、それに合う舞台を決める」とした方が楽なのではないかと思います。
以下、背景素材をフリー素材として提供されている方のリンクを貼っておきます。
2. プロットを作る
プロットとは、ストーリーの大まかな流れをつかむためのもので、発生する出来事や結末を並べただけのものです。以下は例としてホラー風の脱出ゲームのプロットです。
No | 出来事 | 検討事項 |
---|---|---|
1 | 主人公と友達は何者かによって 深夜の学校の教室に閉じ込められる | なぜ二人は深夜の学校にいる? |
2 | この学校に取り付いた悪霊が 閉じ込めていたことがわかる | 悪霊が存在する理由は? |
3 | 友達は命がけで霊的なアイテムを手に入れるが、 それを主人公に渡した後に呪い殺される | アイテムとは? なぜ命がけで? どういう状況? どうやって主人公に渡した? |
4 | アイテムを使って悪霊を退治し、 主人公は学校から脱出する | なぜ悪霊を倒せた? 脱出後どうなった? |
出来事を思いつくままに書いていきます。書いていくうちに疑問点が生まれますが、その場では答えが思いつかなくても、とりあえず「検討事項」の項目に入れておいて後で考えれば良いです。
前の段階で考えたアイデアや設定をどんどん詰め込んでいきます。多少の矛盾は後で調整しましょう。
それと例では起承転結を意識した時系列の順で出来事を書いていきましたが、順番もバラバラで良いです。ただ最終的にはストーリーの最初から最後までつながるようにしていきます。
そして登場人物の一覧を作って、名前や性格、役割や特技や悩み、他のキャラとの関係性などをまとめていきます。
名前 | 役割 | 性格 | その他 |
---|---|---|---|
四谷 こずえ | 主人公 | おとなしい・冷静 優柔不断 | 霊感がある。 言いたいことが はっきりと言えない 自分に悩んでいる |
岸寺 けいこ | 主人公の友達 | 人見知りしない 怖がり・感情的 | |
警備員さん | 悪霊に真っ先に 殺される →後に悪霊の手先に | オカルトは 全く信じない | |
悪霊 | ラスボス | ||
教室の霊 | 協力者。 主人公に悪霊の弱点を 教えてくれる |
キャラの性格を決めるときには「性格類語辞典」という本がとても役に立っておすすめです。
例えば、キャラクターにポジティブな性格を持たせたい場合、「性格類語辞典 ポジティブ編」では性格を以下のように分類しています。
- 愛国心が強い、愛情深い、遊び心がある、粋、ウィットに富む、影響力が強い、おおらか、おだやか、大人っぽい、お人好し、温和、外向的、賢い、型破り、活発、感覚的、勘が鋭い、感謝の心がある、感傷的、寛容気さく、几帳面、きちんとしている、奇抜、客観的、共感力が高い、協調性が高い、協力的、規律正しい、勤勉、クリエイティブ、気高い、決断力がある、謙虚、健全、賢明、倹約家、好奇心旺盛、公明正大、効率的、古風、幸せ、自信家、自然派、従順、柔軟、純真、正直、情熱的、上品、如才ない、思慮深い、芯が強い、慎重、スピリチュアル、正義感が強い、責任感が強い、積極的、世話好き、想像豊か、素朴、大胆、知的、注意深い、忠実、哲学的、天才肌、天真爛漫、独立独歩、内向的、情け深い、忍耐強い、熱血、熱心、粘り強い、派手、控えめ、秘密を守る、ひょうきん、太っ腹、プロフェッショナル、分析家、勉強家、冒険好き、奔放、魅力的、面倒見がいい、もてなし上手、優しい、野心家、勇敢、雄弁、誘惑的、用心深い、楽観的、理想家、利他的、臨機応変、礼儀正しい
ここから例えば「決断力がある」という性格を選ぶと、以下の説明があります。
「決断力がある」性格の分類 | 特徴 |
---|---|
この性格になった要因 | 幼少期から責任のある仕事を任されていた |
行動や態度 | 正しい知識や技能を持っており、 それに基づいた決断をする |
この性格が表すセリフの例 | 「迷う必要などない。さっさと決めよう」 |
似た性格 | 決意、自信、短気、立腹、冷笑 |
ポジティブな面 | 自分の決断を信頼しており、自信家である。 行動を決めたら揺らがず責任感があり、 リーダーに向いている |
ネガティブな面 | 自分の決断に固執しやすく考えを変えにくい。 間違いを認められない。 感情的で不合理な決断を嫌う傾向がある |
衝突しやすい性格 (嫌いな性格) | 防衛的、おおらか、気まぐれ、愚か、 忘れっぽい、だまされやすい、優柔不断、 無責任、怠け者、心配性 |
この性格を面白くするシナリオの例 | 優柔不断なパートナーと一緒に行動し、 決断を下さなければいけない |
この性格のキャラが登場する作品例 | 映画『スタートレック』の ジェームズ・T・カーク船長 |
上記の表は本の内容を簡単にまとめたものですが、実際はより詳しく書かれており、性格が持つ様々な情報を俯瞰・整理することができます。
3. シーンに合わせてセリフや情景描写、心の声を表現するテキストを書く
プロットで出来事の流れや関連する疑問点や矛盾を解決できたら、シーンやキャラのセリフなどのテキストを書いていきます。ここからは実際にユーザーがゲームプレイで読む文章となります。
プロットは書けてもここで手が止まってしまう場合は、以下のことを意識すると良いです。
- 良い文章や良いセリフを書こうとしない。無駄の多い冗長な会話や説明的な会話でも良いから、とにかく書き始めてみる
- 書いてみて違和感があっても見直しはせずに、まずはシーンの終わりまで書き切る
- どうしても書けない場合は、登場人物と雑談(シナリオに関係ない話でも何でも)をしてみる
無駄のないセリフや情景描写を考えるのは次の段階で良いので、まずは各シーンでのキャラの行動やセリフをざっくりで良いので決めていく、という作業をしていきます。
テキストを書くときの心構えとしては「読み手の負担を減らし、わかりやすい文章を心がける」ということです。細かいルールは各自の考え方によりますし、すべてを書き出すことは難しいですが、大まかには以下のルールがあります。
- 三点リーダーは「1つ」でも良い:小説では三点リーダーを「偶数」にしなければならないルールがありますが、ゲームの場合は表示する文字数を少なくするのが良いので1つでも問題ありません
- 感嘆符『?』疑問符『!』の後ろには空白を入れる:これは小説と同じで、空白を入れたほうが良いです
- 適切な改行を入れて読みやすくする:行頭に記号文字が入ったりしないようにしたり、できる限り文節で改行が入るようにテキストを調整します
- 心の声は主人公のみにする:心の声は一人称視点の描写方法ですが、主人公以外の心の声があると誰のセリフかわかりにくくなるので避けたほうが良いです。例外として、シーンが切り替わって主人公以外の視点になった場合には主人公以外の心の声を表現できます
テキストを書くときの注意点としてはゲームジャンルによってテキストで描写する情報や分量が異なるということです。
(※テキストがうまく書けない場合、このルールは無視して良いです。書き方に制約を入れると手が進まなくなりやすいためです)
ゲームジャンル | 状況説明 | セリフ |
---|---|---|
Action game (アクションゲーム) | ほぼ不要 | 重要なセリフのみ。 セリフは短くまとめる |
Adventure game (アドベンチャーゲーム) | 必要に応じて書く | 長くても良いが できるだけ短くまとめる |
Dating sim (恋愛ゲーム) | 少なめ | 主要なキャラとの会話は 長めに用意する |
Visual novel (ノベルゲーム) | 詳細に描く | 大量に書く。 心の声もしっかり書く |
アクションゲームのテキストは、ゲームプレイを阻害しないように「これを説明しないと理解できない」部分だけにします。セリフもできるだけ短縮して、冗長なセリフを極限まで圧縮する必要があります。極端な例として、アクションゲームのテキストは、ゲーム開始時の「オープニング」とゲームクリア時の「エンディング」のみで問題ありません。
それに対してノベルゲームは、文章で繊細な情景描写を行い、茶番を含め冗長とも言えるほどのセリフ量でキャラクターへの感情移入を促すようにします。
また、どのジャンルで作るとしても「背景画像」や「演出」「サウンド」などで省略可能なテキストは数多くあります。例えば、シーンの場面が「学校」だとして、背景画像が学校であれば情景描写は減らすことができます。他にも人が殴られるシーンでは、「殴られるSE」を再生して「痛そうな顔をした立ち絵」が揺れたりすれば、殴るアクションをテキストで描写せず「ぐはぁっ!」というセリフだけで説明できます。
4. ゲームプレイをしながらテキストを調整する
テキストが作成したら、ゲームに組み込んでゲームプレイしながら動作を確認していきます。実際にゲームプレイでのテキストを読むと様々な違和感が見つかります。
- 読みにくいテキストになっている。文法が間違っている
- 同じようなセリフの言い回しを繰り返している
- 説明的なセリフになっている
- 会話のテンポが悪い
- 説明不足になっている
- テキストの分量が冗長になっている
キャラとの会話が多いゲームの場合、セリフの内容をここで繰り返し調整するのも1つの方法です。個人的には、セリフに合わせて立ち絵や表情が変化すると、実際にキャラと会話している気がしてきて調整がやりやすいので、キャラクターの感情がわかるような表情差分を作っておくことをおすすめします。
また、先程テキスト量の注意点を説明しましたが、最終的にはゲームプレイに違和感がなければ分量は自由だと思います。
キャラクターとの会話が少ない〜中程度であれば基本の「6つ」のパターンがあればOKです。
- 通常(すまし顔)
- 微笑み(少しうれしい)
- 笑顔(とてもうれしい。たいてい目は閉じている)
- 怒り
- 悲しみ
- 驚く
さらにゲームジャンルによって増やすことができます。
- 何かを期待する(わくわく)
- 恍惚、テンションMAX(笑顔のパワーアップ版)
- 安心
- 緊張・不安・心配
- 激怒(怒りのパワーアップ版)
- 動揺・ショック・衝撃
- 恐れ(サスペンス・ホラーゲーム向け)
- 嫌悪(サスペンス・ホラーゲーム向け)
- 笑顔(目を開いた状態)
- 寝ぼけ・眠り(眠るシーン、寝起きシーンがある場合)
- ウィンク(キャラによる)
- キス顔(恋愛ゲーム向け)
- ぽやぽや(ぼんやり表現。キャラによる)
- デフォルメ表現(>< など)
個人的には、基本パターン6つにそれぞれ2つのバリエーションを持たせ、+8の特殊な表情で、合計20パターンくらい用意すると表情には困らないのでは、と思っています。
なお表情差分は「眼」「まゆげ」「口」を変えるだけで多くのパターンを作り出せます。
こちらは「立ち絵素材 わたおきば」様からお借りした画像で、多彩な表情が8パターン用意されていますがパーツはいくつか使い回されています。
このように表情差分は1から作り直す必要がなく、パーツの組み合わせで別の表情を作れるので、それなりに絵が描ければ量産は容易です。
表情に対するパーツの変化はおおよそ以下のとおりです。
表情 | 眼 | 眉毛 | 口 |
---|---|---|---|
通常 | ニュートラル | ニュートラル | ニュートラル |
微笑み | ニュートラル | ニュートラル | 口角が上がる |
驚く | 縦に少し広がる | 少し上に上がる | 縦に長くなる |
緊張・不安 | 目尻が中央に寄る | 逆ハの字 | 閉じる |
怒り | ニュートラル | 逆ハの字 (傾斜強め) | 釣り上がる |
悲しみ | ハの字 目線が外れる | ハの字 | 力が緩む |
笑顔 | にっこり | 少し上に上がる | 口角が上がる |
安心 | 目尻が下がる | ニュートラル | 力が緩む |
必ずこのようになるとは限りませんが、表情の目安とすると良いと思います。
ストーリー作りの4ステップ
ここまではゲームシナリオを完成させるまでの流れを書きましたが、ここからはストーリー作りの方法についてより詳しく書いていきます。
ゲームとストーリーを通してプレイヤーに感じてほしいことを決めます。
ゲームシステムと相性の良いジャンルを選びます。
ストーリーを動かす主人公を決め、主人公をサポートしたり対立するキャラクターを決めます。
序盤から中盤、そしてクライマックスを迎え、どのような結末となるかの構成を決めます。
1. テーマ・コンセプトを決める
ゲームとストーリーを通してプレイヤーに感じてほしいことを決めます。
- シミュレーター:人見知りの主人公が、様々な人生を仮想体験して、他人に対する理解を深める
- ホラーゲーム:人間の弱さと醜さが怪物を生み出してしまう恐怖を知る
- 探索型:記憶喪失の少女が無人の廃墟を探索して、サイコメトリー能力で記憶を取り戻す旅をする
- チャート型ノベルゲーム:時間巻き戻し能力を得た主人公が、バッドエンドを回避して真実を知る
- 脱出ゲーム:過度な恋愛感情でモンスター化して暴走する恋人から逃げる
- サバイバルアクション:パートナーを守りつつ命がけのサバイバルをして二人(友情・親子)の絆を深める
- 探索型:ポストアポカリプス(人類が滅亡した世界)で自分たちが存在する意味を求めて廃墟を探索する
- 探偵・推理ゲーム:デスゲームに勝ち残るために推理力で真の犯人の正体・真相を突き止める
- 探索アクション:アウトローな世界で生き残るために戦ったり組織間の抗争と仲間との絆を描く
ゲームシナリオの場合「ゲームジャンル」とセットで考えることが大切です。というのもシナリオありきで、ゲームジャンルを後付けで考えるのは少し難易度が高いためです。
2. 主要ジャンルを決める
ゲームシステムと相性の良いジャンルを選びます。前のシナリオのテーマ・コンセプト段階である程度ジャンルが決まっていれば、それに合わせて肉付けをしていきます。
例えば探索系のゲームであれば、「廃墟」「洞窟」「不気味な洋館」「絶海の孤島」などを舞台にすると相性が良いです。ホラーゲームであれば、敵の扱いを「倒せないので逃げるしかない(=脱出ゲーム)」とするか「強いけれど倒せないこともない(=サバイバルホラー)」とするかを決めます。
3. キャラクター設定を決める
ストーリーを動かす主人公を決め、主人公をサポートしたり対立するキャラクターを決めます。
キャラクター作りでは、そのキャラクターの詳細な設定を決めていきます。
- 名前、役割、年齢、性別、身長、体重、体格、服装や小物、生物学的な分類、家族構成、出身地、職業、経歴、口癖、性格、長所と短所、好きなものと嫌いなもの、趣味、特技、好きな異性のタイプ、尊敬する人、夢、欲求、学力、信仰心、思想、過去のトラウマ、コンプレックス、弱点・欠点、信念
特に重要なのは、ストーリー上でキャラクターの行動の動機づけとなる項目や、自身の成長に関連する項目です。
キャラクターは何らかの満たされない「欲求」や達成が困難な「信念」を抱えています。それを阻害するのが「過去のトラウマ」であったり「コンプレックス」や「弱点・欠点」です。これらの問題を解決したり、困難を乗り越えるのがストーリーの目的となります。
なお、主人公が抱えている問題は、対立する人物(ライバル)が別の形で歪んだ形で解決しているとストーリーに深みが得られます。
例えば「嫉妬」がテーマにある場合、嫉妬のポジティブな側面とネガティブな側面とその要因を考えます。
ポジティブ要素 | 粘り強さがある。行動力がある。 |
ネガティブ要素 | 独占欲が強い。他人をコントロールしたい。自己中心的。 自己評価が低い。ひとりになるのが怖い。失うことが怖い。 ライバルを妨害する。不安や憎しみの感情。対抗心が強い |
嫉妬の要因 | ・過去に悲痛な裏切りにあった ・不安がある ・何かを失うことを恐れている ・共依存している ・優越的、競争的でなければならない |
この分析を元にすると、ライバルとなるキャラは「何らかの支配者・権力者」であり「失うことが怖い」という弱さを隠すために、自分に歯向かうものを妬んで排除する行動をします。またそのライバルの過去には「過度な競争」にさらされ、もしくは「ひどい裏切りにあった」ことで苦痛を避けるための自己防衛として現在の性格が構築された、と読み解くこともできます。
というようにライバルは主人公の「影」の部分を描くようにするのが良いです。
なおこの情報は「性格類語辞典 ネガティブ編」の「嫉妬深い」という分類を参考にしました。
ストーリーとは別に、キャラを魅力的にする(キャラを立たせる)方法は2つ存在します。
- 1. 個性を極端にする
- 2. ギャップ
例えば大食いのキャラにする場合、たくさん食べるという程度では普通なので、天井まで届くようなパンケーキタワーをぺろりと平らげる、など極端な個性をもたせます。
さらにゲームの場合は、ゲームシステムや攻略と結びつくような個性がおすすめです。例えばメタルギアソリッドの「リボルバー・オセロット」は天才的な拳銃使いですが、拳銃が好きで特にリロードの瞬間がたまらない、という少し特殊な設定があります。これによりリロードの瞬間を攻撃できる攻略が生まれています。
次に「ギャップ」です。例えば見た目が凶悪な不良高校生が捨て猫の世話をしたり、ツンツンした女の子がさり気なく見せる好意だったりするアレです。
ただゲームの場合は、恋愛ゲームでない限り単なるフレーバーではなく、ゲームシステムと連動させる必要があります。よくあるのがプレイヤーが使用できる特殊能力と相反する性格や特徴、欠点をもたせることです。
- 記憶を読み取る能力を使うゲーム:記憶力が悪い
- 時間操作能力を持つ:時間にルーズで遅刻しがち
- 予知能力を持つ:目が見えない
- 巨大な悪魔を使役する:本人は非力で身体も小さい
4. ストーリー構成を決定する
序盤から中盤、そしてクライマックスを迎え、どのような結末となるかの構成を決めます。
構成として有名なのが「起承転結」と「三幕構成」です。
起承転結とは以下の構造を持つストーリーのことです。
そしてストーリーの進行に対するストーリーの盛り上がりを表現するグラフは以下のとおりです。
- 「起」は手短に終わらせて「承」に進み、何らかの出来事を起こして飽きさせないようにする
- 「承」はネガティブなことも起きるが、ストーリーが前に進んでいる印象を与える
- 「転」のクライマックスはピークがすぎたら長引かせずに「結」に進む
- 「結」でもストーリーの終わりの余韻を軽く感じられる程度の長さにする
大切なのは「転」のピークがどこにあるかを判断することです。これを間違えてしますと「結」までの流れが間延びしたり、途中で飽きてしまう危険があります。
よくやりがちなのが、ストーリーのピークとなるラスボス撃破後、ラスボスが何度も復活したり、別のトラブルが何度も起きたり、キャラクター同士の会話が長引きすぎてしまうようなケースです。
どうしても入れたい演出や会話が多くなってしまうと、「捨てるのがもったいない」とこのようなストーリーになりがちなので、取捨選択が重要となります。
三幕構成とは以下の構造を持つストーリー構成です。
単に「起承転結」の「承・転」を第二幕にまとめたものに見えますが、第二幕中盤の「ミッドポイント」という部分で主人公は何か大きな決断をすることでストーリーが大きく動く、というところに違いがあります。
ミッドポイントの考えを取り入れると、シナリオがキレイに引き締まるので、意識して取り入れることをオススメします。
ブレイク・スナイダー・ビート・シート (BS2) とは、三幕構成をより細かい単位に分けた構成です。
- オープニング・イメージ:映画の第一印象を見せる。主人公の出発点
- テーマの提示:論点や主張の提示
- セットアップ:登場人物の紹介
- きっかけ:人生が変わる瞬間
- 悩みのとき:何かしらの疑問を抱く
- 第1ターニング・ポイント:何か大きな決心をする
- サブプロット: 場面転換や息抜き
- お楽しみ:お約束を果たす場面
- ミッド・ポイント:主人公が絶好調、または絶不調となる
- 迫りくる悪い奴ら:悪役が総攻撃をしてくる
- すべてを失って:失意のどん底で希望の欠片もなくなる
- 心の暗闇:深く考え心の奥底を探る
- 第2ターニング・ポイント:解決策が見つかる
- フィナーレ:悪い奴らが一掃される
- ファイナル・イメージ:本物の変化が起きる
ただこれを忠実に埋めていく…、というやり方よりもプロットを先に作り、ある程度完成した時点で BS2 を見て必要な部分を追加したり削ったりする、という使い方が良いと思います。
どうしてもシナリオが書けない場合
どうしてもテキストが書けなくて行き詰まってしまう場合には、シナリオライターさんの力を借りるのも1つの方法です。
例えば、ココナラでは「ゲームシナリオの仕事を募集されている方」がいらっしゃいます。例えば、サービスの検索欄から「ゲームシナリオ」で検索することで、何人か見つかると思います。
もしプロットまでできていれば、それを渡すことでシナリオを作っていただけます。かかる費用としては、小規模なゲームでおおよそ 2〜3万円ほどですが、一人で頑張って作り続けて完成しないことは避けられて、どのように形にしていくのかがわかるので勉強にもなっておすすめです。
参考
今回の記事を書くにあたって以下の本を参考にしました。この本では「ストーリーの作り方」「プロットの書き方」などがより詳しく書かれているのでおすすめです。
それと、ノベルゲームを2つほと作った方が、その製作工程を事細かに説明した本があります。ノベルゲームを作りたい方は参考になるかもしれません。