小さなゲームにおける物語の作り方

今回は小さなゲームで物語をどのように表現するのかを考えてみました。

参考にしたのはこちらの記事です。

Candy Crush シリーズで知られる、King社による講演内容となります。

小さなゲームにおける物語の作り方

小さなゲームに物語は必要か?

私の印象では、なんとなく小さなゲームには物語や世界観は必要ないと思っていました。
ですが、先ほどの記事によると、意外とそうでもないようです。

しかし,Candy Crushシリーズのプレイヤーは実は物語を求めている。KingのシニアナラティブデザイナーであるStephanie Prue氏が2016年に行った講演で具体的な数字が示されており,「ゲーム内においてストーリーを伝える画面をスキップするのは,全プレイヤーの50%」という調査結果が出ている。つまり,プレイヤーの半分は物語を読んでいることになる。

 このことは直近の調査からも垣間見えており,「Candy Crush Friends Sagaを改良するとしたら,どこを改良しますか?」という問いに対して,要望の3位にあたる13%が「キャラクターとその役割を紹介する」,そして12%(同5位)が「もっとストーリー要素を加える」と回答している。合計すると43%のプレイヤーが,作品の世界観やキャラクター性にまつわる要望を持っていることになる。

物語や世界観は50%の人が求めていませんが、逆にいうと50%の人はあったほうが良いと考えています。
なので、そういった要素を切り捨てるという選択もありですが、物語を入れることでさらに遊ぶ人を増やすことが可能かもしれない、というデータが出ています。

ただ、小さいゲームでは長々と壮大なストーリーをテキストで見せることができない、としています。というのも、ほとんどの人がテキストの内容を覚えていいない、という調査結果になったためです。

小さいゲームで物語を感じさせる4つの方法

これを踏まえて King社では以下の方法で、物語を感じさせる工夫をしているとのことです。

  • 1. コンテキスト:ゲームと物語の関連性がある
  • 2. どこからでも入れる:前後の会話シーンを見逃しても理解できる話にする
  • 3. 一貫性:典型的なキャラクター、シナリオを採用する
  • 4. 魅力的にする:共感できる個性のキャラクター、ワクワクするシナリオ

「1. コンテキスト」はゲーム内容と物語の関連性がしっかりと存在していることです。例えば、お菓子を集めるゲームである場合、主人公がお菓子好きという設定があるかもしれません。またお菓子を楽しそうに食べるアニメーションを用意する、という演出が必要になるかもしれません。

「2. どこからでも入れる」というのは、わかりやすくストーリーを伝えるようにすることだと思います。例えばある会話イベントを見逃すと、それ以降の話が理解できなくなるのは良くない、ということです。またキャラクター同士に複雑な相関関係を持たせたり、時間軸の移動があるなどの複雑な構造のストーリーも、パッと理解するのは難しいので、避けたほうが良いかもしれません。

「3. 一貫性」というのは、物語の用語の表記ゆれをなくしたり、キャラクターの性格をテンプレを抑えた典型的な行動やリアクションにすることかな、と思います。物語を作る場合、キャラクターの意外な一面を見せたくて性格にブレを出してしまうと、みている側が混乱するので避けたほうが良い、とのことです。

「4. 魅力的にする」というのは当然のことですね……。テンプレを抑えつつも、どこかに独自の性格や信念を持たせて、共感を得るものを用意する必要があるとのことです。

個人的に考えた小さなゲームでの物語表現

これらを踏まえて、小さなゲームでの物語をどのように表現するかを考えてみました。

  • 1. 登場人物を少なくする。狭い世界(閉鎖空間)に閉じ込める
  • 2. しゃべらないキャラを用意する
  • 3. チュートリアルキャラを用意する

小さなゲームでは壮大なストーリーや、多くのキャラクターを描き切ることができません。なので、登場人物を最小限に絞って狭い世界に閉じ込めるのが良いのではないかと思いました。

また、「テキストを読まない」という調査結果から考えると、長々とおしゃべりするキャラクターは嫌われそうな気がします。それであれば、しゃべらずに意思疎通ができるキャラクター(動物など)を適度に配置したほうが良いのかもしれません。

以下は少し極論ですが、そもそも「テキストを読まない」というのは、ゲームとは直接関係ない会話を見せられるのでスキップされることが多いような気がします(例えば、対戦型落ちものゲームでの、ゲーム開始前の茶番劇など)。これが「ゲームシステムを解説する」というチュートリアルキャラであれば、しっかり読んでもらいやすいです。そのため、ゲームの説明をするためのキャラクターを配置して、その中で個性を出していくのが良いのかもしれません。
ちなみにチュートリアルキャラは「プレイヤーに色々教えてくれる頼もしい存在」です。そのため、チュートリアルキャラが殺されるようなことがあると、プレイヤーはなんとかして敵を倒したいと思わせることができます。(例:逆転裁判の「綾里 千尋」など)
これは設定で「親・兄弟を殺された」という説明的なものよりよっぽどゲームに入り込むことができます。なので、チュートリアルキャラは積極的にひどい目に合わせたほうが良いのかもしれません。( “殺す” のが世界観的にハードすぎる場合は、”誘拐される” くらいで良いかもしれません)

プレイヤーの邪魔をせずにストーリーを伝える方法

ゲームプレイに直接会話イベントを入れると、くどくて堅苦しい印象を受ける場合があります。その場合は間接的に伝えるようにすると、プレイヤーの邪魔をせずにストーリを伝えることができます。

記録で語る

ゲーム内で手に入るアイテムやメモ書きなどでストーリーを伝えます。
例えば、「日記」「手紙」「写真」「壁の落書き」「留守電電話」「ビデオ」「音声ファイル」「電子テキスト」などの小道具や記録媒体です。

背景のアートで語る

ステージクリア型のアクションゲームやシューティングゲームでよく使われる手法です。例えば、滅亡した世界を荒廃した背景のアートで語る、時間の変化を背景で、朝から昼、夜へと変化されることで伝える、などです。

盗み聞きさせる

主人公が会話に加わると興ざめする場合は、他のキャラクター同士の会話をプレイヤーに聞かせるという方法もあります。