オープンワールド型ゲームの簡単な作り方を考える

今回は Open-world (オープンワールド) 型ゲームの作り方を考えてみます。

オープンワールドとは

オープンワールドの定義はあまり厳密ではないようです。元々はGTA3で提唱されたゲームシステムで、広大な世界を制限なしに自由に動き回ることができて、自由に探索・攻略できる……というのが一般的な意味として扱われています。
オープンワールドの代表的なゲームとしては、GTA3、シェンムー、Witcher3、Fallout4、Skyrim、龍が如く、ゼノブレイドクロス、ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルドなどがあります。
また英語のWikipediaに記述されているオープンワールドの源流としては、コマンドをテキストで入力して調査や探索を行う「テキストアドベンチャー」から始まったとも考えられていて「ポートピア連続殺人事件」も広い意味ではオープンワールドで、TRPG「Dungeons & Dragons」に影響を受けた「Ultima」がRPGの原型を作り、さらにその影響化にある「ドラゴンクエスト1・2・3」がオープンワールドRPGを一般的なジャンルにしました。
あと、ハイドライドやゼルダの伝説もゲームが2Dだった頃のオープンワールド型ゲームです。特に “ゼルダの伝説” は「 Free-roaming (フリーローミング) =自由探索型」の基礎を作った最初の優れたゲーム (the first really good game based on exploration) とされています。

Free-roaming (フリーローミング) について

フリーローミングとは「自由に放浪する」という意味です。これはオープンワールドの特徴で「探索や攻略順をプレイヤーが自由に決めらる」というゲーム性を持つ場合に使われます。これは 「Closed circle(閉鎖空間) =クローズドなワールド」でも適用されるもので、例えば、メトロイドや悪魔城ドラキュラのような閉鎖空間を探索する Metroidvania (メトロイドヴァニア) もフリーローミングと言えます。
オープンワールドにおけるこのゲーム性の最も大きな部分は、未知の世界や未踏破の場所を自分の手で切り開く楽しさが得られるところです。

ちなみにフリーローミングは、「 Nonlinear progression (非リニア進行) =一本道でない進行」のゲーム性と呼ばれることもあります。

オープンワールドを採用するメリットとデメリット

オープンワールドをゲームで採用するメリットとデメリットは以下の通りです。

  • メリット
    * プレイヤーが自由に行動できて、積極的にゲームに関与できている感じが得られる
    * 好きな遊び方を模索、工夫する楽しさが得られる
    * プレイヤーがゲームプレイの中でドラマを作ることができる
  • デメリット
    * 遊び方がわからずプレイヤーがほったらかしにされがち
    * マップが広すぎるが故に、ゲームとして密度の低いものになりがち
    * 戦闘が面倒だと遊びづらくなる
    * 固定化されたシナリオを展開しにくい

オープンワールドは「マップが広ければ広いほどすごい」という1つの評価基準があります。例えば初代のゼルダの伝説は、当時としては広大なマップを自由に探索できる、ということがウリの1つになっていました。ゼルダの伝説はマップが階層的な攻略構造(新しいアイテムを手に入れると地形を破壊・変化させるアクションが可能となり、探索範囲が広がる構造)となっていてマップに密度や深みのあるものとなっていましたが、何も考えず単にマップを広くするだけでは、ゲームとして密度が低いものになり、プレイヤーにとって退屈な時間が長くなって飽きられる可能性があります

また好きに攻略順を決めて良いということは、何も知らないプレイヤーがいきなり強敵に遭遇して理不尽な死を迎えることを許容している、とも言えます。
例えば、フリーローミングであるキングスフィールドでは、ゲーム始めたばかりのプレイヤーがいきなり強敵のイカに近づいてしまいワンパンで殺される、なんてこともあります。また重要なNPCを殺してしまい進行不能になる、なんてこともあります。これはゲームに慣れていない人にとっては理不尽なゲーム性です。

そしてオープンワールドは探索をメインとするゲーム性のため、戦闘が面倒だと探索に集中できずにストレスとなります。そのため、できれば戦闘をエンカウント制ではなくシームレスにした方が、ゲームのテンポ感を損なわずにゲームをプレイしてもらいやすいように感じます。

オープンワールドを作る上での問題点

オープンワールドを個人制作で作る場合には、おおよそ以下の問題があると思います。

  • 広大なマップを作るには時間や工数が大きく必要となる
  • 自由度を上げるには様々な行動を可能にする仕組みが必要となる

普通に考えると、予算や時間がかかりすぎるため、個人ではかなり難易度が高いゲームとなります。
この問題はたっぷりと予算のある海外のゲームでも同じような問題に遭遇していて、「プレイヤーが自由に行動できる」「世界観を感じられるマップ作りをする」ということに集中したゲーム性となっている印象です。そのため、“固定イベントの作り込み” や “ゲームが苦手な人でも遊びやすくする” ということに関してはかなり妥協をしている気がします。そもそもオープンワールドがプレイヤーの想像力を求めるゲームであるので、親切なチュートリアルやレールに沿って遊ぶだけで楽しめる、というゲームを求めているユーザを最初から切り捨てているのかもしれません。

オープンワールドを簡単に作るための考え方

ここからは私個人の妄想です。おそらく以下の点に気をつけると、オープンワールド(フリーローミング)のゲームが低コストで作れると考えています。

  • 1. パンツ一丁でゲームを開始する
  • 2. マップを自動生成にする
  • 3. ゲームプレイの評価基準をゆるくする

オープンワールド(フリーローミング)では、プレイヤーの性能を高機能にすればするほど、やれることを増やす必要があります。そのため、プレイヤーの初期性能を限りなく低くすることで実装項目を減らす作戦です。
例えばゼルダの伝説では初期状態のリンクは武器すら持っていません。メトロイドでは初期状態で行けるところは限られています。厳密にはオープンワールドというよりもフリーローミングに近いかもしれませんが、これによりマップを作り込む時間を最小限に減らすことができます。

次に、マップを自動生成するようにします。多くのオープンワールドゲームでは、マップを作成する手間を軽減させるために地形データや地形モデルを 「Procedural generation (プロシージャル生成) =自動生成」しています。
2Dゲームのマップ自動生成はこちらのワールドマップ生成ツールが役に立ちそうです。

ワールド マップ自動生成

アルゴリズムについてはこちらの本で解説されているようです。

ワールドマップ自動生成読本 るてんのプチ技術書
created by Rinker

それっぽい地形が作れるツールです。JSONでの出力にも対応しているので組み込みは難しくないと思います。
ワールドマップ生成のアルゴリズムはこちらも参考になるかも。

  • 1: 任意の割合でチップをランダムに配置する
  • 2: 隣接色のいずれかにランダムチェンジ
  • 3: 隣接色がすべて同じ色だったら浸食
  • 4: 2〜3を繰り返す

自動生成を自作したい場合には、パーリンノイズを使うことでそれっぽい地形ができます。

ただ、完全な自動生成ではゲームバランスが取りづらいので、ある程度は手直しをした方が良いと思います。

最後に、ゲームのクリア基準をゆるくします。日本的なゲームに慣れていると、綿密に細部まで行き届いたゲームデザインを作らなければならない、と考えがちですが、この概念を捨てます。
具体的にはクリア条件を複数用意したり、クエスト主体のゲームとして一定数のクエストを攻略したらラスボスが現れて、それを倒すとゲームクリア、としても良いかもしれません。

おまけ

オープンワールドに似たゲームジャンルの説明です。

  • 箱庭ゲーム(ミニスケープ):神様視点のゲーム。いわゆるゴッドゲーム(ポピュラスなど)。経営シミュレーションや、農地経営ゲームなども含みます
  • サンドボックスゲーム:明確な目的がなく自由に世界を暴れまわれるゲーム。Minecraftなど。

広大な世界が存在するという点では、オープンワールドゲームとほぼ同じです。ただし、オープンワールドゲームでは、アクションやRPG、探索(フリーローミング)を楽しむゲームとなっているのに対して、箱庭ゲームやサンドボックスゲームはシミュレーターとしての側面が強い気がします。

オープンワールドゲームの系譜

以下は、週刊ファミ通 2015年5月28日号 に特集されていた「オープンワールドゲームの系譜」のまとめです。

オープンワールドゲームの定義

  • 1. 空間内で自由な移動や行動が可能である
  • 2. 目的を達成する手段はユーザーの手に委ねられる
  • 3. その世界に “生きている” 感覚をユーザーにもたらす

まず、行きたい場所に移動できて、したいと思った行動は何でもできる。次に、目的の達成や物語の進行に一切の制限がなく、ユーザーの裁量にゲームの進行を委ねる。最後に、プレイヤーは主体的に世界に干渉することで、世界が有機的に変化する、としています。

オープンワールドゲームを理解するポイント

  • 1. “プロシージャル技術” がオープンワールドを作る
  • 2. “箱庭ゲーム” と “サンドボックスゲーム” と “オープンワールドゲーム”

仮想世界にリアリティを持たせるには、水や植物、街並みなどを現実世界のように再現する必要がある。そのために使われているのが “プロシージャル技術”。これによりアルゴリズムにより地形が自動生成されリアルな背景を製作する手間を省略している。ゲーム製作エンジンの発達やこういった技術によって、オープンワールドは支えられている。

“箱庭ゲーム” は限定された空間でその環境を操作することが可能。”サンドボックスゲーム” は “箱庭ゲーム” の特徴である環境の構築と、自由に行動できる “オープンワールド” の2つの良さがミックスされたゲームである。

オープンワールドゲームのリスト

シェンムー: 精密に作りこまれた世界を歩く
ファイナルファンタジーⅪ: ヴァナ・ディールでの世界で “暮らす” 楽しさを表現
グランド・セフト・オートⅢ: 街全体をオープンワールドで表現
龍が如く: 路地裏まで再現された歓楽街を自由に探索
デッドライジング: 画面を埋め尽くす程の大量のゾンビがオープンワールドに出現する
ザ エルダースクロールズ Ⅳ: オブリビオン: 広大な世界で剣と魔法の冒険。”Radiant AI” によるNPCの自立制御が画期的
バーンアウト パラダイス: 広大で複雑な街を過激な走行で走り回る
アサシンクリード: 美麗なグラフィックと “フリーランニング” による自由自在に駆け回る高いアクション性
グランド・セフト・オートⅣ: New Yorkを模したマップで、移民の成り上がりを描くストーリーをリアリティ溢れる描写で表現
Halo 3 (ヘイロー3): ODST
Far Cry2 (ファークライ2)
INFAMOUS (インファマス) ~悪名高き男~
レッド・デッド・リテンプション
: 1911年のガンマンとなり西部劇の町を生き抜く
FableⅢ (ファイブルⅢ)
Fallout: New Vegas (フォールアウト: ニューベガス)
: 荒廃した世界を舞台に過酷なサバイバルを描く
ザ エルダースクロールズⅤ: スカイリム
ドラゴンズドグマ
: “ポーン” と呼ばれるAIキャラクターとパーティを組んで冒険
ファンタジーライフ: ファンタジーの世界で自由なのんびり生活
TOMB RAIDER (トゥームレイダー)
Thief (シーフ)
Sunset Overdrive (サンセットオーバードライブ)
レゴ ムービー ザ・ゲーム
ドラゴンエイジ: インクイジション

ウォッチドックス
DEAD RISING3 (デッドライジング3)
Destiny (デスティニー)
アサシンクリード

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