Zoombinis (ズンビーニズ) とは、教育を目的としたパズルゲームで、1996年に発売されたゲームです。
とても優れた設計を持つパズルゲームであるのにも関わらず、日本では知名度が低い(ような気がする)ので、今回記事にしてみました。
ちなみに過去作が様々なプラットフォームに移植されていて、現在はSteam や iOS、Androidで遊ぶことができます。(※注意:日本語化はされていません)
目次
Zoombinis の紹介
優れているところ
Zoombinis の優れているところは以下の2点です。
- 1. ゲームとして楽しい:従来の知育ゲームが単純なクイズゲームだったり退屈なゲームプレイだったのが、Zoombinis はゲームとして楽しい
- 2. パズルなのに繰り返し遊べる:従来の固定的な問題を提供するパズルと異なり、繰り返し遊ぶことを目的としたゲームデザイン ( Replay value (リプレイバリュー) が高い ) となっている
なぜゲームとして楽しいのか?
よくある知育ゲームは、教育を目的としているためなのか「遊ばされてる感」が強いデザインとなりがちです。
- クイズや暗記を要求する:地理や歴史など知識を要求され、知らないと答えられないし興味がないテーマは楽しくない
- 単純作業:脳トレのように単純作業の繰り返しをするだけ
- 一度解いたら終わり:繰り返し遊ぶモチベーションが生まれない
これらの問題の一番の原因は「一度解いたら終わり」ということです。答えを覚えられるとパズルの魅力は失われます。
それに対して、Zoombinis はパズルが「自動生成」されることで繰り返し遊べる設計となっています。
パズルの自動生成とは?
Zoombinis ではパズルをどのように自動生成しているのかを紹介します。ゲームが始まると ズンビーニ という生き物を生成するシーンから始まります。
ズンビーニには 4つの部位があり、それぞれに 5つのパーツが存在します。
- 髪型:ちょんまげや角刈り、帽子など
- 目:まぶたの大きい目、メガネ、単眼など
- 鼻:赤・青・緑などの色
- 足:バネ、プロペラ、スニーカー、ローラーブレードなど
これらを1つずつ選んでも良いですが、16体も作る必要があるので、通常はランダムで自動生成するボタンでズンビーニを作成します。
なお、この16体が Lives (残機) となり問題を解く際のリソースとなります。
そして最初の課題は「アレルギーの谷」です。
ここでは、あるルールに従って橋を渡ることのできる条件を探す…というパズルゲームではよくある問題です。
この問題の正解は、奥の橋は「ちょんまげ」のズンビーニが通過できて、手前の橋は「それ以外の髪型」のズンビーニが通過できます。
ここで重要となるのが、通過条件がランダムで変化することです。上記画像では「髪型」「ちょんまげ」というルールでしたが、挑戦するたびに「足」や「目」などに別のものに変化します。
数学的に説明すると「アレルギーの谷」の根本にある命題は、どちらかのルールが決定されると、もう片方はそのルールの「補集合」となる構造になっています。
ある集合Aが全体集合Uの部分集合であるとき、ある集合を全体集合から除いたあとの集合
補集合とは – コトバンク
つまりどんなズンビーニが作られたとしても、解くことができる上、答えをランダムにすることができます。
難易度の変化
さらに Zoombinis は繰り返し遊ぶことができるように、難易度の変化により「条件が少しずつ複雑化」します。例えば「アレルギーの谷」では、難易度が上昇すると条件に複数の要素が含まれます。
上記画像は「足」のパーツを探すように変化して、さらにパーツの種類の条件が複数含まれるようになっています。
最短の手順でクリアするほど効率が良くなる
Zoombinis は、ズンビーニが理想の場所を求めて冒険するお話です。そしてパズルを失敗すると(または失敗し続けると)、 Lives (残機) であるズンビーニが一人ずつ失われます。なので、失敗をしないように慎重にプレイする必要があります。
通常の場合、パズルゲームに Lives (残機) 制は相性が良くないです。例えば、逆転裁判では「突きつける」に失敗するとライフゲージが減少します。
ですが「固定の問題・解答を持つパズル」での Lives (残機) 制 は、直前にセーブして失敗したらロードする…という方法で総当りを行うことで簡単に突破できてしまう欠点があります。
それに対して、Zoombinis は問題・解答が自動生成されるため、直前でセーブしてロードする…という方法を無効化しています(問題が変化するのでやり直しても、ちゃんと考える必要がある)。
特に Zoombinis では中間地点があり、そこを経由してズンビーニを移動させるというメカニクスになっています。
残機が分散することで、大事なリソースを失わないように慎重に問題を解く緊張感がそれなりにあります。
各ステージの紹介と解説
最後に各ステージの紹介と解説を行います。ほぼ解答に近いのでネタバレ注意です。(ただ自動生成される問題の性質上、解き方が分かっても考える要素はあります)
最初の試練は「アレルギーの谷」と呼ばれる場所です。ここでは「手前の橋」か「奥の橋」をズンビーニが渡ることになります。しかし「ある法則」によって手前と奥で通過可能なズンビーニが異なります。それを見つけるのがここでの目的となります。
よく見ると分かりますが、髪型がちょんまげのズンビーニは奥の橋を渡ることができます。そしてそれ以外の髪型のズンビーニは手前の端を渡ることができます。
この問題は数学的には、ちょんまげをAとした場合に手前の橋はAの補集合であり、集合を求めるパズルと言えます。
石の冷たい洞窟は、アレルギーの谷の応用問題です。ここではルートが4つ用意されており、それぞれの特性を知っておく必要があります。
左右はアレルギーの谷と同じく、どちらかが A の集合で、もう片方が Aの補集合となる(ちなみに以下の画像の答えは「鼻の色」です)。
ポイントは中央の見張り番にある。今回は下段が正解で上に進むルートを選ぶと必ず通行止めされることになります。ただ難易度が上がると、この条件も複雑化します。
例えば難易度が上がることで中央の条件が変化したのが下の画像です。
ピザパスはトロルの好きなピザの具の組み合わせを当てるパズルです。
下記画像では難易度が上がっているためデザートが追加されていますが、初期難易度は「5種類」の具から「2つ」選ぶというもので、組み合わせパズルとヒット&ブローを組み合わせたパズルとなります。(ちなみに以下の画像での正解は男トロルの方は「パイナップル」「チェリー」のトッピング。女トロルの方は「サラミ」のみ)
キャプテン・ケイジャンのフェリーボートは「共通するパーツ」を持つズンビーニを連結させて配置するパズル。グラフ理論を要求する問題です。
タイタニックの入れ墨のヒキガエルは「色」「葉の切込みの数」「ゆりの形」にマッチする経路を探すパズルです。
例えば色に注目した場合は、以下のような経路をたどるため、対応する開始地点にヒキガエルを置くことが正解となります。
ゆりの花の形に注目した場合はこのようになります。
ちなみにこういった経路探索系の問題はゴールから逆引きで探索すると見つけやすいことがあります。
なお、ヒキガエルは2回のみ使用可能なので、使用可能なものを間違った場所に配置してしまうと2回分ロスが発生してしまいます。
ストーンライズは「対応するペア」を探すパズルです。
フリーンズ!ではズンビーニの特徴に対応するフリーンズを探すパズルである。例えば青ふちのメガネはサイクロップスのような目に対応しています。
共通点を探し、消去法で候補の対象を消していくことで解くことができます。
ホテル・ディメンシアでは、ホテルの部屋に入れるズンビーニを探すパズルです。このパズルでは、ある共通する要素を持ったズンビーニのみが部屋に入ることができます。
下記画像での正解は「鼻の色」です。
泥玉の壁は「色」と「記号」の正しい組み合わせの対応を探すパズルです。
発射ボタンを押すと「色」と「記号」に対応する場所に泥玉が発射されます。例えば下記画像では赤は1列目、黄色は3列目、青は5列目となっていて、星が2段目、四角が3段目、三角が5段目となっています。そして壁に刻まれている丸の場所を当てるとその数だけ正解ゾーンに登ることができます。
これは表の対応を探すパズルで、上記画像であれば対応は以下の通りです。
未確定な場所はいくつかあります、A3は赤の四角で確定しているので、まずはこれを埋めていくと手数が無駄にならないです。
次に狙うのは赤か黄色の列で、丸またはひし形の段を確定していくことになります。
正しい順番でズンビーニを並べるソートパズルです。
上記画像は足のパーツを、「ばね」→「車輪」→「スニーカー」→「プロペラ」→「ローラーブレード」の順で並べるのが正解です。
ミラーマシンは特徴の一致するズンビーニを提示するパズルです。
マッチする対象が存在しない場合は、別のリストに入れ変わることで詰みにならないようになっています。
バブルワンダー・アビスは経路探索と条件式のパズルです。ズンビーニを矢印ボタンの上に配置してその方向に進むことができます。途中にはパーツによる条件分岐がありパーツが一致するとその方向に進むことになります。またトグルで方向が切り替わるタイルも存在します。
パズルが自動生成されるゲーム
Zoombinisのように、パズルが自動生成されるゲームをリストアップしておきます。
Tile-matching game (タイルマッチングゲーム)
いわゆる落ちゲーと呼ばれるジャンルです。パズル要素となるタイルがランダムで生成されます。
他にも Match-three game (マッチ3ゲーム) なども含まれます。タイルマッチングゲームについては以下の記事に書きました。
タイルマッチングゲームの歴史まとめただ最近のこの手のジャンルは、考える要素が限りなく減ってきていて「たくさん消えて楽しい」という面白さが重視されています(特にジュエルパズル系)。
タイルマッチングゲームとは異なりますが、BioShock の水道管パズルは、考える要素とリアルタイムの緊張感のバランスが良く個人的に好みです。
ローグライク
ローグライクではレベルや敵・アイテムの配置が自動生成されます。アクション要素が強い場合はパズル性は低くなりますが、ターン制のローグライクは基本的に自動生成されるパズルに近いのではないかな……と思っています。
グノーシア
グローシアは「人狼ゲーム」をもとにした推理アドベンチャーゲームです。
人狼パートでは、狼役や能力持ちがランダムで決定されるので、自動生成パズル的なのでは…と思って紹介しました。ただ純粋なパズルというよりは「この人は怪しそう…」といったファジーな推理だったり、キャラの相性によるヘイト値による影響で「答えが分かっていても投票で処刑される」こともあって、コミュニケーションのシミュレーター的なゲームであるかもしれません。
個人的な印象としては、人狼ゲームを繰り返すことでキャラクターとの会話イベントやフラグがアンロックされる Visual novel (ノベルゲーム) なのではないか、と思っています。
Into the Breach
Into the Breach は高難易度のストラテジーゲームです。
レベルや敵の配置が自動生成されますが、ゲームバランスが絶妙で「この状況は詰みでは…?」と思っても、10〜20分考えることで打開策が見つかるということから、人によっては「詰将棋の自動生成」と評価されることもあります(ただし本当にどうにもならないこともよくあります)。