この記事では、ゲームデザインにおける「フィードバックループ」について説明をします。
目次
フィードバックループとは
Feedback loops (フィードバックループ) というのは、ある行動に対して得られた結果を入力として繰り返し再利用することです。
まず、入出力を持ち、入力に対してある操作を行ったものを出力とするシステム(系)を考える。このとき、その出力が入力や操作に影響を与えるしくみがあるとき、これをフィードバックという。ここで、ある瞬間の入力と出力の関係を増幅率と呼び、特に帰還を行っていない場合の系の増幅率を「裸の増幅率」と呼ぶ。また、帰還として戻ってきた値が、最初の入力に対して何倍になっているかをループ利得という。
Wikipedia – フィードバック
ここでゲームデザインにおいて重要となるのが、「正のフィードバックループ」と「負のフィードバックループ」という概念です。
正のフィードバックループ
正のフィードバックループとは、ループにより値が増大したり減少したりすることです。例えば、RPGでは経験値を得ることでレベルアップして、プレイヤーの性能が強化され、敵を圧倒できるようになります。
これはゲームを不安定・不均衡な状態へと導き、ゲームを進行させたり終了させる効果があります。言い換えると正のフィードバックループは「インフレ」のようなものです。お金持ちはその資産を使ってさらに大きく資産を増やすことができ、指数関数的に資産を増大できます。
また「正の」という言葉のイメージに引っ張られやすいですが、正のフィードバックループはマイナス方向への転落も含みます。
例えば対戦ゲームでは、味方を失うとより不利な状況に追い込まれます。不利な状況になればなるほど通常は逆転が難しくなります。借金が増えると利息によって雪だるま式にさらに借金が増えたりするようなものです。
負のフィードバックループ
では、負のフィードバックループは何かというと、「インフレ」や「負けるほど不利になる」状態を救済するように状態を均衡させることです。
先ほど対戦ゲームでは「負けがこむほど不利」としましたが、例えば4人対戦のゲームの場合、1位が独走状態に入ると、2位以下のプレイヤーが結託して1位から引きずり降ろそう、という行動原理が働くことがあります。このように正のフィードバックループが過剰に機能している場合、負のフィードバックループが適切に働くと良いバランスのゲームとなります。
もちろんゲームメカニクスとして負のフィードバックループを用意することも可能です。
- マリオカート:下位になるほど有利になる強力なアイテムを入手できる
- バイオハザード4:うまいプレイヤーほど難しくなる、という難易度の自動調整機能がある
- サムライスピリッツ:体力が減るほど「怒りゲージ」が増え逆転のチャンスが生まれる
それぞれの効果
ゲームにおけるフィードバックループの効果はそれぞれ以下のとおりです。
- 正のフィードバックループ:プレイヤースキルによる結果を反映させやすい。カオスな空間を作る。俺TUEEEができる。すごいことが起きて笑いが生まれる
- 負のフィードバックループ:ゲームバランスを調整する。緊張感を作る。プレイヤースキルへの依存度を減らせるのでパーティゲームに向いている
ゲームにどのように使うか
概念がわかったところで、実際にフィードバックループの仕組みをどのように利用するかについて考えてみます。
ゲームを分析するのに使う
既存のゲームの「正のフィードバックループ」「負のフィードバックループ」がどこで発生しているのかを分析します。まずは概念に慣れることが大切です。
例えば塊魂のフィードバックループについて分析してみました。
正のフィードバックループ | ↔ | 負のフィードバックループ |
---|---|---|
・アイテムをくっつけるほど大きくなる ・それにより、さらに大きいアイテムを くっつけられる ・また回収効率が上がる ・探索できる場所が広がる ・探索してちょうどよいサイズのアイテムを まとめて回収できた(見つけた)ときの スッキリ感がすごい | ↔ | ・大きくなるほど制御が難しくなる ・空間が狭くなるので、 障害物にぶつかりやすくなる ・拾えるものが少なくなる ・小さいものが隙間に入って 拾いにくくなる ・時間切れで終了する |
よくできたゲームは「正と負のフィードバックループが対になっている」ことが多いです。必ずしも1対1で対応しているとは限らず、様々な要素が複合的にループを作っていることも多いですが、このように色々なゲームをこのモノサシで分析することで、良いゲームのメカニクスを取り入れるときに適切な判断をしやすくなるのではないかと思います。
自作ゲームの分析・評価に使う
自作ゲームを評価する際に、どこでフィードバックループが生まれているのかを分析して、適切なフィードバックループがうまれているかどうかを評価します。
例えば特定のアクションを繰り返すことでインフレ的にプレイヤーが強く(有利に)なってしまう場合、それに対する負のフィードバックループが作れないかを考えてみます。
どうしても負のフィードバックループが入れられない場合、「フィードバックループのリセット」という方法を使うのもありです。
他にも、アクションゲームやRPGなどで、 Regenerating Health (HPの自動回復) を導入するかどうかも、フィードバックループの考え方が使えます。自動回復は戦闘のミスをリセットする「負のフィードバックループ」に近い効果があり、DOOM (2016) における Glory Kill (グローリーキル) のメカニクスは「正のフィードバックループ」に近い考えかたと思われます。