このページでは、ストーリーのあるゲームシナリオを書くために役立つ本を紹介します。
私自身ゲームシナリオを書きたくて、様々な本を買った(30冊くらいは買っていそう…)のですが、そのなかでも自分にとって特に役に立ったものを厳選して紹介したいと思います。
目次
すごくおすすめな本3選
おすすめしたい本はたくさんあるのですが、その中でも最もおすすめしたい本を3つに絞って紹介します。
ちなみにオススメする本はすべて「映画の脚本術」「海外の映画が多く取り上げられている」ため、海外の映画をあまり見ない人にとっては興味が持ちづらい可能性があります。
「Amazon Prime」のようなサービスを使うと、一部の映画が無料で見れておすすめです。
SAVE THE CAT の法則(おすすめ度:★★★)
「シナリオの書き方がよくわからない…」「書いてみたけれど今ひとつ盛り上がりに欠ける…」とお悩みの方におすすめの本です。
対象としては初心者〜中級者向け、といったところでしょうか。
映画の脚本を作るために必要な知識を学ぶ本ですが、ゲームシナリオも映画と共通する部分が多いので、とても参考になります。
インパクトのあるログラインや主人公の作り方から始まって、「ブレイク・スナイダー・ビート・シート」というある程度の面白さが保証される構成の作り方がとても勉強になります。
- オープニング・イメージ:映画の第一印象を見せる。主人公の出発点
- テーマの提示:論点や主張の提示
- セットアップ:登場人物の紹介
- きっかけ:人生が変わる瞬間
- 悩みのとき:何かしらの疑問を抱く
- 第1ターニング・ポイント:何か大きな決心をする
- サブプロット: 場面転換や息抜き
- お楽しみ:お約束を果たす場面
- ミッド・ポイント:主人公が絶好調、または絶不調となる
- 迫りくる悪い奴ら:悪役が総攻撃をしてくる
- すべてを失って:失意のどん底で希望の欠片もなくなる
- 心の暗闇:深く考え心の奥底を探る
- 第2ターニング・ポイント:解決策が見つかる
- フィナーレ:悪い奴らが一掃される
- ファイナル・イメージ:本物の変化が起きる
三幕構成を理解している前提で話しますが、やはり重要なのは第1幕の終盤に「主人公が大きな決心」を行い、第2幕の終盤に「抱えている問題の解決策が見つかる」ことです。
これがうまく決まると、お話がとても引き締まります。
他の要素も「必ずこの要素を入れなければならない…」というわけではないですが、ある程度意識して取り入れるようにすると、ストーリーの盛り上がりを自然に作りやすくなります。
個人的に好きなのが、第2幕の「5. すべてを失って」です。これは「主人公の死」のメタファーで、本当に死ぬ必要はなく「死んでしまうかと思う」くらいのもので良いです。この経験により、主人公にパラダイム・シフト(誤った考え方を捨てて新しい自分に生まれ変わること)を起こして、その後の問題解決への流れがスムーズとなるような気がしています。
もちろん、「何を重視したいのか」はシナリオ作家の自由ですので、この本から、自分が何を重視して書きたいのか、というものが得られると良いですね
この本で取り上げられている映画
この本で高い頻度で取り上げられている映画をまとめてみました
- キューティーブロンド
- デンジャラス・ビューティー
- パルプフィクション
- フォー・クリスマス
- ホームアローン
- スターウォーズ
「感情」から書く脚本術(おすすめ度:★★★)
こちらは 「SAVE THE CAT の法則」と比べると、やや高度な内容となっています。
対象者としては「中級者〜上級者向け」といったところでしょうか。
というのも、これを読んで面白い話を書く、面白い話のテンプレが見つかる…というよりは、作ったシナリオが面白いかどうか、話を膨らませるヒントはないのか、という「チェックシートとして使う」「ヒントを得る」といった使い方がメインとなるかと思います。
例えば、魅力的なキャラクターの造形を行うためには、以下の5つの質問に答える必要がある、としています
- 主役は誰か?
- そのキャラクターは何を求めているのか?
- なぜそれを求めているのか?
- それを得ることに失敗するとどうなるのか?
- それを得ることでどう変わるのか?
これらの質問は、シナリオライターの頭の中に何もない状態、例えば明確な主人公やキャラクターが存在しない場合は、おそらく答えることが難しいと思います。
ですので、実際にキャラクターを作ってみて、それを動かしてみて、行動原理に違和感がある場合に、これらの質問をしてみるとより明確なキャラクターイメージを作り出すことができる、といった補助的な使い方になると思います。
また作品のテーマについても、「テーマをキャラクターの口(セリフ)から説教して伝える」のではなく、「テーマはストーリーの背後で観客の目に見えないところで動いているもの」……という理論(テーマは言葉で説明するものではなく、感じてもらうもの)がわかったところで面白い話が作れるわけではなりません。
やはり実際に作ってみて、「このセリフは説教臭くて、観客の鼻につくな…」という部分を別の方法に置き換えたり、試行錯誤することで身についていくもの、となります。
それとこの本で私の好きなのが「サスペンス」についての話です。サスペンスの定義を厳密に定義するのは難しいですが、個人的には「緊張感を持って観客がストーリーを見ている状況」と考えています。
この本では、そのサスペンスを成立させるための3つの条件を提示しています。
- キャラクターの行く末が気になる
- 危機的状況が間近に迫っている(危険を回避できない)
- 危機的状況を解決できないかもしれない(危険回避の不確実性)
サスペンスというと「危機的状況の設定」が重要と思われがちですが、結局は「1. キャラクターの行く末が気になる」が存在しない(=キャラクターに感情移入できない)と、「このキャラがどうなろうと、どうでもいい」と考えられて、サスペンスが成立しなくなる…、という考えが、個人的には大きな発見でした。
その他、シナリオを書くためのヒントが数多くあり「シナリオをもっと面白くさせたい」と考えている方にはとてもおすすめな本です。
それと個人的に「羊たちの沈黙」が好きで、この本では、レクター博士とクラリスの会話シーンがいかに優れているのかを分析した部分があってとても楽しめた、ということもあります。
興味のある映画が取り上げられている部分があれば、そこから読んでみるのも良いかもしれませんね。
この本で取り上げられている映画
この本で高い頻度で取り上げられている映画をまとめてみました
- 羊たちの沈黙
- ヒッチコック作品(北北西に進路を取れ、サイコなど)
- ゴッドファーザー
- カサブランカ
- E.T.
- お熱いのがお好き
- エイリアン
- 48時間
- レイダース/失われたアーク《聖櫃》
- トッツィー
- スターウォーズ
- ダイハード
- アメリカンビューティー
- ショーシャンクの空に
- 恋愛小説家
- チャイナタウン
- テルマ&ルイーズ
ストーリーの解剖学(おすすめ度:★★)
こちらは「感情から書く脚本術」をさらに詳細で深堀りした内容の本です。
対象者は「中級者から上級者」向けです。
ページ数が600ページ超えで、シナリオを書くための辞書…といっても過言ではない本です。他の本と同様に「ログイライン(この本ではプレミスと定義している)」「構成」「キャラクター」「テーマ」「世界観」「シーン」「ダイアログ(会話)」と多岐にわたる項目について書かれています。
この本だけおすすめ度が低いですが、実は絶版となっていて少し価格がお高めとなっているためです。(Kindleでも変えますが、個人的にこういった教本は、付箋をつけたり、蛍光ペンなどで書き込みを行うと理解がスムーズにできるため、物理媒体の本がおすすめです)
個人的に勉強になったのが、主人公とライバルの関係性の作り方ですね。例えばこの本では「ダブル・リバース」という手法を提示しています。通常、物語は主人公の成長のみを描くことが多く、ライバルは成長することがない(成長しないということで対立構造が生まれている)のですが、ライバルにも弱点と欠陥を与えて、それを克服する機会を与える、というものです。
ダブル・リバースを取り入れるメリットとしては、二人の成長を描くことで、話の解像度が上がり、それにより観客が得られるメリットが増えることです。また主人公だけの視点ではなく、ライバル側の視点も得ることで、より客観的に物語を俯瞰できることです。
例えば、漫画「タコピーの原罪」では、いじめられっ子のしずかの視点だけではなく、いじめる側のまりなの視点を描くことで、双方が抱えている問題が浮き彫りになり、話に深みを与えていました。
といった感じで、この本ならではの切り口もあるので、興味があればおすすめです。
この本で取り上げられている映画
この本で高い頻度で取り上げられている映画をまとめてみました
- カサブランカ
- トッツィー
- 素晴らしき哉、人生!
- 明日に向かって撃て!
- ショーシャンクの空に
- ユージュアルサスペクツ
- ニュー・シネマ・パラダイス
- ゴッドファーザー
- ロード・オブ・ザ・リング
- ハリーポッター
- スターウォーズ
- ワイルドパンチ
- アメリカン・ビューティー
- めまい
- L.A.コンフィデンシャル
その他、この本はホメロス作品やユリシーズ、など文学作品が多く取り上げられています
その他おすすめの本
マンガで夢を叶えるための“おもしろい”の伝え方
個人的に役立ったのですが、シナリオの書き方…という程ではないので、興味があればおすすめです。
主に漫画におけるキャラクターの動かし方に関する話が中心で、何かの前フリ・問いかけに対する「リアクション」を作ることで、キャラクターを魅力的なものにする、という手法が紹介されています。
これで「リアクション」の仕組みを理解した後、この本の作者であるヒロユキ先生の他の漫画を読んでみると、その構造が理解できるので、合わせて読んでみると良いのかと思います。
キャラクターからつくる物語創作再入門
この本はシナリオで最も重要な「キャラクター」の作り方について書かれたものです。
「キャラクターアーク」というキャラクターが物語の中でどのように変化するのが良いのか…、ということを丸々一冊使用して解説しています。
この本ではアークの本質を以下の3ステップと定義しています
- 主人公がある状態で登場する
- 主人公が物語のなかで何かを学ぶ
- 主人公が前より良い状態になる
とてもシンプルなステップですが、これを実現するためにするべきことは多いです。
そこでこの本では、物語の構成の中で、主人公がどのように変化していくべきかを事細かに説明しています。
「物語は主人公を成長させること」ということを理解していても、どうやってそれを実現したらよいかわからない…という人におすすめできる本なのではないかと思っています