目次
レベルデザインとは、ゲームシーンあるいは舞台といった「レベル」を作成することです。
良いレベルデザインにするためには、ゲームの難易度やバランスをよく考え、プレイヤーが進捗感や達成感を得られるような課題や挑戦を配置することが必要です。
レベルエディタとは、レベルを作成するためのツールのことです。
一般的なレベルエディタでは、
- 地形
- アイテム
- 敵キャラ
- イベント
などを配置することができます。
これがあると、レベルの調整が容易になります。例えば、2Dゲームのレベルエディタとしてよくあるのが、お絵かきツールように、マップチップを配置するツールです。
たとえば「Platinum」
のような「パーツ」のウィンドウから、チップを選択してちくちく配置するツールです。他にも、フィールド(地形)とキャラ(プレイヤー・敵・アイテムなど)の2つをそれぞれ「レイヤー」という単位で管理しています。Platinumはフリーウェアのツールですが、余裕があれば自作するのもアリだと思います。
また、テキストなどで、
- イベントのフロー
- 敵の動き
などを記述することができる場合、それは広義のレベルエディタといえると思います。(たぶん)
レベルの作成には2つのデザイン要素を使用します。それは、
- 障害
- 技能
です。
障害とは、プレイヤーに与えられる課題です。技能とは、プレイヤーがゲームを操作するために与えられる能力です。プレイヤーは、技能を活用して障害に対処しなければなりません。例えば、障害は「敵」や「罠」で、技能は「敵を倒すショット」や「罠を回避するジャンプ」などです。
レベルを作る前準備として、
- このゲームにはどんな障害があるか
- このゲームにはどんな技能があるか
それらをしっかり洗い出ししておくと、ゲーム全体のレベルの配分を適切に決定することができます。
プレイヤーに課題を与える
課題の種類には以下の4つがあります。
- ロードブロック:基本的な障害
- 敵:戦わなくてはならない障害
- 罠:避けなくてはならない障害
- パズル:解かなければならない障害
ロードブロックとは、小さな、取るに足らない障害です。プレイヤーの行く手を完全に防ぐのではなく、ゲームプレイ時間を少しだけ長くします。
例えば、
- 少しジャンプしただけで飛び越えられるような段差
- 前に立ってボタンを押すだけで開く扉
というような「ワンアクション」でクリアできるような障害です。簡単な操作でクリアできる障害は、単調なレベルに変化をもたらしたり、異なるレベル間のつなぎとして使用したり、難度の高いレベルにおいては、安堵をもたらす要素になります。
敵とは、プレイヤーに危害を与える存在です。たいていプレイヤーを殺しにきます。マリオで言えば、クリボーやノコノコなどが該当します。(ただマリオにおける敵は、直接プレイヤーを殺しにくるケースはあまりないです)
敵を配置する基準には、
- ランク
- 数
があります。ランクによる配置
プレイヤーにとって「初めて出会う敵」は、
- プレイスタイルに変化を与える
という効果があります。
ただし、あまりにも多くの種類の敵を登場させると、プレイヤーは敵の行動パターンを把握しきれなくなって、挫折させてしまう可能性が高くなってしまいます。敵の種類を段階的に学習させる、ということで、新しい敵は、1種類か2種類であると効果的、ではないかと思います。
敵にはランク(難易度)を付け、ランクが高いものは後半のレベルで出現するようにします。ただし、敵の組み合わせ方によっては、ランクが低いもの同士でも、ランクが極端に上昇することに注意します。例えば、プレイヤーをホーミングするミサイルは、単発では回避が容易ですが、
レーザーのようにプレイヤーの行動範囲を狭めるレベルと組み合わせると、ランクが極端に上昇します。数による配置
敵の数を多く出すとそれだけで難易度は上昇します。解法(攻略方法)が分らないほど多くの敵を出すと、プレイヤーがやられても
- 「なぜゲームオーバーになったのかわからない」
- 「自分のミスが原因ではなくて、敵に殺された」
と理不尽な印象を与えてしまいます。
たとえ、クリアできたとしても、
- 「なぜクリアできたか分らない」
- 「次はクリアできる自信がない」
と思わせることになります。
なので、難易度を上昇させるために、安易に敵の数を多く出すのは避けるべきです。
ただし、敵が多く出る直前に、「敵を一掃できるボム」を配置しておいて、敵をたくさん出して、ボムで一掃!というケースは、プレイヤーが爽快感を得られるので、ありなのかもしれません。※ボス敵について
特殊な敵として「ボス」と呼ばれる敵がいます。ボスはたいてい、
- 倒さないと先に進めない
- 攻撃や動きが特殊である
という特徴を持っています。
敵と同様、罠はプレイヤーに危害を与える存在です。ただ、罠は地形の一部で、プレイヤーのミスが発生しない限り、プレイヤーを殺しにこないのが特徴です。例えば、鉄球がぶらぶらしているとか、落ちる床とか、吊り天井とか。(いや、吊り天井は確実にプレイヤーを殺しにきますが
罠は見た目で分かりにくく、不意打ち的な要素として配置することが多いので、フェアなゲーム性にしたいのであれば、立て札や会話イベントなど、何らかの警告を出しておいた方が良いかもしれません。困ったら「トゲ」
宮本茂氏の名言?に、「困ったらトゲ」という言葉があります。罠を凝ったデザインにして、ダメージを受けるものと認識しづらいものにするよりは、「トゲ」という直感的に痛そうなものにするほうが、プレイヤーが認識できる可能性が高くなります。
宮本 その後、スーパーマリオになり、カメを踏むのが 実現できて、今度はどのカメも踏めるようにすると怖くないので、 踏めないカメを出すことになったんです。 踏めなくするためには、トゲを生やすのが いちばんわかりやすいだろうということになって・・・。 岩田 デザイナーの元倉さんが、 「困ったときはトゲ」だと言ってました(笑)。 宮本 僕が話したことは、ちゃんと伝わったということですね(笑)。
宮本「その後、スーパーマリオになり、カメを踏むのが実現できて、今度はどのカメも踏めるようにすると怖くないので、踏めないカメを出すことになったんです。踏めなくするためには、トゲを生やすのがいちばんわかりやすいだろうということになって・・・。」
岩田「デザイナーの元倉さんが、「困ったときはトゲ」だと言ってました(笑)。」
宮本「僕が話したことは、ちゃんと伝わったということですね(笑)。」
社長が訊く『スーパーマリオギャラクシー』
パズルは頭を使って解く必要のある障害です。
反射神経ではなく「思考」を要求します。特にアクションゲームでは、レベルの大部分を占める戦闘からの休息という意味で、
大いに必要とされます。(バイオハザードなんかがそうですね)
具体例として、
- カギを見つけて、扉まで移動する
- 3つのスイッチを入れると扉が開き、扉まで移動する
というものがあります。
前者の「カギ」は1つですが、後者のように「カギ(スイッチ)」を3つという複数にすると、プレイヤーはレベルを隅々まで探索する必要が出てきます。
パズルレベルを作る時のポイントとして、探索範囲が広いと、プレイヤーは途方にくれてしまいますので、探索範囲を故意に狭めた方が良い場合があります。
プレイヤーが操作するキャラが持つ能力を「技能」と呼びます。例えば、ジャンプしたり、弾を発射する能力のことです。プレイヤーはこれらの「技能」を駆使して障害をクリアします。
技能の中でも、ゲームの開始時から使用できる技能を基本技能と呼びます。基本技能は、攻略の基礎となり、また新しい技能の基盤となる場合もあります。なので、レベルはこれらの使い方をプレイヤーにしっかり教えるために、
「チュートリアルレベル」を作成する必要があります。
チュートリアルレベルとは、プレイヤーにゲームの「基本技能」の使い方を教えることを目的とするレベルのことです。通常、ゲーム中の一番最初のレベルとして作成されます。
作成のポイントとしては、
- プレイヤーがすぐクリアできるような簡単な課題を配置
- レベルの長さが他の半分くらいに抑える
- 技能の組み合わせを必要としない課題
などがあります。
プレイヤーはゲームを進めるにつれて新しい技能を取得します。
- 新しい武器
- アイテム
- 魔法
など。
新しい技能が出現させる場合、それを効率良く習得できるようなレベルを作成します。
- その技能を必要とする障害でプレイヤーをブロックする
- その障害の近くでその技能を得ることができる
というようにすると、確実にその技能を習得させることが可能です。
例えば、
- 岩でプレイヤーをブロックする
- その岩を壊すことのできるハンマーをすぐ近くに置く
というような感じです。
これがもし、岩からハンマーが遠くに配置されていた場合、プレイヤーはそのハンマーをどこで使用するべきか悩み、途方にくれてしまいます。
技能を組み合わせなければ超えられない障害を用意すると、難易度が上昇します。
例えば、
- プレイヤーより高い位置にいる敵⇒「ジャンプしてショット」しないと倒せない
- 穴が2つ連続している⇒「2回連続ジャンプに成功」しなければならない
- 落ちる床⇒「床にのり落ちるまでに2回連続ジャンプが成功」しないと先に進めない
など。
おまけ(よいチュートリアルとは)
結論を先に書くと、よいチュートリアルとしては、
- その操作を行うでどんな「結果」が得られるのか
- その「結果」が今のプレイヤーにどれだけ重要か
ということがポイントとなります。
例えば、操作だけ教えられて、何に使うのか分らない(その操作をしてもエフェクトが出るだけで何ができるのかわからない)、今すぐその操作が必要でない(敵がいないのに必殺技を教えられる)のは、あまりよろしくないチュートリアルといえます。
具体的な操作方法のチュートリアルとしては、以下のようなものがあります。(厳密にはチュートリアルといえないものも混ざっています)
- 隠しコマンド
- 説明書
- アドバタイズ(システムによる説明)
- チュートリアルキャラ、イベントによる説明(今すぐその操作が必要でない)
- チュートリアルキャラ、イベントによる説明(今すぐその操作が必要である)
- チュートリアルレベルによりプレイヤーが偶然気がつく
番号が後ろのものであるほど、良いチュートリアルと言えます。
最悪なのは、1の「隠しコマンド」ですね。それが分らないと先へ進めない、というような場合、プレイヤーはなぜ先に進めないか分らなくなってしまいます。2の「説明書」や、3の「アドバタイズ」もプレイヤーによってはあまり読まれません。(もしくは読み飛ばされやすいです)
4は、「Aボタンでジャンプじゃ」とかキャラが、いかにもシステム的な説明してくれるものだったり、イベントで説明してくれるものです。
5は、「Aボタンでジャンプしないと、先には進めんぞ」とか、「敵に囲まれた! 必殺技を出さないと死んでしまうぞ」的な説明です。「今すぐ必要」という点で4と異なりで、必然性が感じられ、効果的なチュートリアルといえます。6ができれば、文句なしのチュートリアルといえます。
マリオは、レベルだけで、チュートリアルを実現している良い例と言えます。
誘導とは、プレイヤーの行動を意図的に操作するレベルのことです。
- アイテム
- 障害
- ヒント
の3つの誘導方法があります。
アイテムによる誘導
アイテムによる動機付けが充分になされている場合、(※「アイテム=取るもの」はゲーマー的な発想であり、一般的には認知されない可能性があります)アイテムを発見すると、プレイヤーは条件反射により、その座標へ移動しようとします。
この習性を利用し、プレイヤーが進んでもらいたい方向に、
- お金
- 体力回復
などのアイテムを配置すると、プレイヤーの行動を操作することができます。
このように、プレイヤーが、「あのアイテムを取りたいなー」と思わせる度合いを、アイテムに対する「誘引」と呼びます。「誘引」は大きいほど、プレイヤーへの誘導が成功しやすくなります。
逆に、「誘引」が小さい場合、
- 「体力が最大」であるプレイヤーに対する体力回復アイテム
- 「お金がいっぱいある」プレイヤーに対するお金アイテム
- スコアに興味のないプレイヤーに対するスコアアイテム
これらは、たいてい誘導に失敗することに注意します。
アイテムを取る、という動機付けをさせるには?
例えば、マリオの場合、最初のキノコは、「?ブロック」から出現すると、土管に跳ね返り、半ば強制的に取らされてしまいます。
チュートリアルで「アイテムは取っていいものだよ」と説明するのもアリですが、このように「強制的に取らせる」ことにより、その説明を省略することもできます。また、有益なアイテムと知った後も、土管に跳ね返るために、わざわざキノコを追いかけることなく、取りやすくなっているという側面もあります。
障害による誘導
プレイヤーは可能な限り、障害を回避しようとします。例えば、AとBのルートがあり、Aが、あからさまに障害がたくさん配置されている場合、プレイヤーはBを選択します。
ヒントによる誘導
- 立て札
- メッセージポップアップ
- 会話イベント
などによる誘導です。
おまけ
技能の誘導
マリオでは、「敵を踏みつける」という攻撃技能があります。これを取得させるために、
- わざと狭い場所に敵を配置し、ジャンプのタイミングが悪くて、その結果、敵の頭の上に落ちたりするようにしたり、
- 高い土管の下に敵を配置して、偶然踏ませるようにしたり、
というテクニックを使っています。そして、もう1つ、「土管に入る」という行動技能があります。
これは1-1では気がつきませんが、1-2の開始時に「マリオが土管に入る」というデモがあります。
これにより、プレイヤーは「ん? ひょっとしたら、土管に入ることができるのかな?」などと疑問を持たせることができます。
レベルを評価する目安として、以下のような指標があるといいかもしれません。
- リプレイ価値
- レベルスコープ
- リトライ回数
リプレイ価値
プレイヤーが、クリア済みのステージを再びプレイしたくなるかどうかを示す値です。
リプレイ価値を上昇させる要因には、
- スコア
- 隠し要素
- 特性の異なるプレイヤートークンによるプレイ
があります。
スコア
スコアとは、プレイを評価する指標です。適正な評価はプレイに意味を与え、より適正なプレイへとプレイヤーを導く効果があります。隠し要素
「クリアに直接必要はなかったが、あそこには何かあったんじゃないか」という隠し要素の存在がプレイヤーに認知される場合、リプレイ価値は上昇します。
例えば、ドラクエ2のサマルトリアのお城には、金の扉で閉ざされた部屋があります。その扉は金のカギを持っていないと開けられないのですが、その部屋の中には宝箱と老人がいて、その場所の近くを通るたび、「何かあるんじゃないか」という印象をプレイヤーに与え続けます。
特性の異なるプレイヤーキャラによるプレイ
例えば、ステージクリア後、ジャンプ力が2倍のキャラを使用できるというような場合、今まで行くことのできなかった場所に行くことができるため、リプレイ価値は上昇します。
レベルスコープ
レベルがゲーム内に占める割合。
レベルスコープを構成する要素には以下のものがあります。
- プレイ時間
- レベル(仕掛け)の数
- リプレイ回数
レベルスコープが大きい場合、たっぷり時間をかけて作るほうがよい。逆に、レベルスコープが小さいものに、製作時間をかけてしまうのは、時間の無駄。
15分の法則
プレイヤーは、ゲーム中、約15分間に一度は何らかの変化が起こることを好む。そのため、レベルのプレイ時間を30分以内に制限するのがセオリー。
リトライ回数
プレイヤーがリトライ可能な回数。回数に制限があるほど、難易度は上昇する。
学習曲線
学習曲線とは、試行回数に伴う、可否の変化を表すグラフのことです。
例えば、動いている床に飛び乗る、というアクションについて、横軸に「試行回数」、縦軸に「成功確率」(例えば10回のうち何回成功したか)を取ります。そうすると、グラフは右上がりの曲線を描きます。
このグラフの傾向として、ある程度の「試行回数」を繰り返すまで、急な曲線を描きます。そして、一定の「試行回数」を超えると、なだらかな曲線へと変化します。この「なだからな曲線」を「高原現象(スランプ)」と言います。
ポイントは「高原現象」の成功確率のパーセンテージです。これが100%に近い場合、ほぼ問題ありませんが、50~70%を切るようならば、ほとんどの場合、レベルの見直しが必要となります。(※作り手は常に上級プレイヤーであり、50~70%を切ることを面白く感じます。このことがクリア困難なレベルを作ってしまう原因となります)
意識のあり方
経験側で、正しくない場合もあるかもしれませんが、レベルを作るうえで心がけておいた方が良いことを列挙して置きます。
ゲームをプレイするのは、自分ではない、ということを常に意識した方が良いです。
例えば、自分では退屈だと思うレベルも、他の人にプレイしてもらうと、「何をして良いか分からない」ということがよく起こります。
自分のプレイは退屈かもしれませんが、しっかり、チュートリアルレベルを作っておくと、プレイヤーは、ゲームに入り込みやすくなります。
また、自分では迷わずにゴールにたどり着ける場合でも、「どこに行けばいいのか分からない」ということがよくあります。
- ランドマーク
- アイテムによる誘導
などをしっかり入れておくと、プレイヤーの無意味なストレスを軽減することができます。
レベルをプレイした人の意見を素直に受け止めること
テストプレイをしてもらうと、たいてい自分にとって、わずらわしい、耳をふさぎたくなるような意見が、いくつか出てきます。変に理由を付けて、できないことを強調するより、レベルを見直すいい機会と受け取り、意見を素直に受け取った方がいい場合が多いです。どうしても、「作ったものを変えてしまうのはもったいない!」という意識が働いてしまいますが、そこはグッとこらえて、レベルの修正はためらわない方が、たいてい、良いものができます。
その他
その他、レベルデザインに役立つかもしれない知識を羅列しておきます。
学習心理学
- 古典的条件付け
- オペランド条件付け
- 報酬訓練
- 正の強化子
- 負の強化子
- 技能学習
- 学習曲線
- 結果の知識(KR)
- 社会学習
- 模倣学習
- 観察学習
- 問題解決と推理
- 問題解決
- 推理過程
古典的条件付け
古典的条件付けの典型例として、「パブロフの犬」があります。「パブロフの犬」とは、ロシアの生理学者パブロフが、犬を使って唾液分泌の研究をしているときに、発見した法則です。パブロフは、エサを運ぶ際に、食器の音がするだけで、犬が唾液を分泌することを発見しました。
そこで、
- 統制の容易な音(音叉)を鳴らす
- エサを与える
- (唾液を分泌する)
ということを繰り返すと、
- 音叉を鳴らしただけで、
- 唾液を分泌する
というように、唾液の分泌には本来「無関係」である「音叉の音」が、唾液分泌の条件(条件刺激)となることを発見しました。
これが何に使えるのかというと、「アイテム」はプレイヤーを誘導するための、条件刺激になりうる、ということです。
- アイテムがあるのを発見した
- アイテムを取ったらパワーアップした(⇒嬉しい!)
ということをプレイヤーが繰り返すと、
- アイテムがあるのを発見した
- とりあえずアイテムを取りに行ってみよう(⇒きっと嬉しいことが起こるぞ!)
という誘導が可能になるということです。(※アイテム=誘導できる、ではなくて、アイテムを取るとパワーアップする、という条件を事前にプレイヤーに理解させることが必要となります)
応用として、逆に、痛みを受ける(プレイヤーが死ぬなど)という要素であれば、それを回避するルートを選択させる、という誘導も可能です。
例)
ドラゴン→強敵。今のレベルで戦ったら死ぬ、ということを学習させる
⇒「左の道からドラゴンの叫び声が聞こえる」⇒右の道を通ろう(死にたくないから……)
結果の知識(KR)
プレイヤーがゲームを操作するために与えられる能力が「技能」なのですが、この「技能」を習得するためには、それを試みる回数(試行数)が重要となります。ただ、闇雲に試行数を増やすだけでは、「技能」の上達を促すことはできません。
例えば、テスト勉強をする場合に、問題を解きっぱなしで答えあわせをしないと、その解答が正しいのかどうかが分らず、たとえたくさんの問題を解いたとしても、テスト勉強の効果は上がりません。
正解だった問題は、「なぜ正解だったのか」を確認し、不正解だった問題は、答えに至る過程で「どの部分に間違いがあったのか」を確認することで、学習の効果は飛躍的に上昇します。
また、バスケットボールの初心者が、ゴールへのシュートを練習するとします。この場合、目隠しで練習すると、「ゴールに入ったかどうか」が分らないので、これも意味がありません。適切な構えでやったら入り、違う構えでやったら入らなかったという、「結果の確認」を常に伴った練習によってこそ、技能は上達します。
この「結果の確認」を、「結果の知識(Knowledge of results, KR)」、または、フィードバックといいます。
前置きが長くなりましたが、ゲームにおいて技能の習得の効果をあげるには、技能の正しい使用に対して、適正な評価をすることです。
評価方法には、
- 障害の消滅
- 演出
- スコア
などがあります。
技能の使い方が正しかったとき、例えば、
- 敵にダメージを与えた⇒敵が白く点滅、撃ち込み点取得
- 敵を倒した⇒敵の消滅。爆発音、破壊演出が開始、スコア500点取得
- アイテムを取れた⇒アイテム取得演出、心地良い音、スコア1000点取得
というように、音なり演出なりスコアなりをしっかり入れて、技能の成功をプレイヤーにアピールすることが大切なわけですね。
ライティングキャッチの法則
人は「明るい場所」へ行きたがる。
道路側に雑誌を配置して立ち読みさせ、「人が並んでいる」ように見せると、
人は店に入りたくなる
左回りの法則
人間は、左回りに移動をするのが気持ちがいい。
- 野球のベース⇒左回り
- 陸上のトラック⇒左回り
- スケートのリンク⇒左回り
- メリーゴーランド⇒左回り
逆にお化け屋敷は右回り。
3回目の法則
レベル内に、3つの小さなレベルを作成します(区切りにはロードブロックを配置)。1つ目、2つ目のレベルは、似たような技能を必要とするレベルを配置します。
そして、3つ目のレベルで同じようなものがくると見せかけて、大きな変化をつけると、プレイヤーは心地よく感じます。
この「3」というリズムは、
- ポップスのサビも同じフレーズを繰り返し、3つ目で変化を加える
など、よく使われます。
また、
- ホップ、ステップ、ジャンプ
- 起、承、転、結(結は省略)もしくは序破急
など、「3」は生理的に気持ちがいいリズムでもあります。
10秒変化同じ動作をし続けると、プレイヤーは飽きてしまいます。ロードブロックでもいいので、何か変化を入れるようにします。
プレイヤーキャラが、ダメージを受けたら死亡するかで、緊張感を量る法則。
- 6回以上受けても大丈夫なら余裕
- 4~5回受けて死ぬと強い敵。
- 1~3回受けて死ぬとかなり強い敵(ボスクラス)
ドラクエ1ではスタート地点の町から、最終目的である竜王の城を眺めることができます。(行くことはできませんが)
これにより、プレイヤーは、最終目的である「竜王の城」を意識せざるを得ないことになります。
最近では、ゲームでの経済活動(リソースの移動)を可視化して、ゲームシステム・バランスを検証・改善するツールが登場しています。とても抽象的な概念が多くて、理解が難しいですが、レベルデザインを理解する上で役に立つものと思っています。
概念やツールの使い方は、この動画がとても分かりやすいと思います。