ゲームデザインに関する本はいくつかありますが、そのなかでも私がオススメしたい本「ゲームメカニクス おもしろくするためのゲームデザイン 」の内容を少しだけ紹介します。
この本はゲームの面白さを抽象的・体系的にまとめられていて、より深くゲームについて考えるきっかけとなります。
この本で核となるのは、ゲームメカニクスの1つである「内部経済(リソース管理)」を可視化する “マキネーション” というツールの紹介です。また、そこに至るまでの第4章までの内容 (ゲームデザインに関する考察や分類、開発手法がまとめられています) でも十分元が取れます。
もちろん、”マキネーション” を活用できれば、より優れたゲームデザインを持つゲームにすることが可能です。
ただ、ゲームを作り慣れていない初心者には抽象的過ぎて、あまり良さがわからないかもしれません。その場合は、いくつかゲームを作ると、この本で説明されている概念を理解できるようになると思います。
また、”マキネーション” を活用できるゲームジャンルは、「Age of Empires」などのRTSや、「マリーのアトリエ」や「牧場物語」などの経営シミュレーション、もしくは「放置ゲー」といった大量のリソースを管理するシミュレーター系が対象となるので、そういったジャンルのゲームを作ったことがない場合は、一度作ってから参考にした方がより理解できると思います。
なお、以下の説明は、本の内容と私の考察が混ざっているので、正確な内容を理解したい場合は、実際に本を読んでみることをオススメします。
目次
ルールはゲームを定義する
まず「ゲームとは何であるか」について考えてみます。この本では、ゲームの本質的な機能は「ルール」であるというを定義をしています。
例えば、シンプルなシューティングゲームであれば、以下のルールが定義されています。
1. 自機は上下左右キーを押すと、その方向に動く
2. 自機は攻撃ボタンで、弾を発射できる
3. 自機から発射された弾を敵に当てると、敵は消滅する
4. 敵は一定の間隔で弾を発射できる
5. 敵から発射された弾が自機に当たると、自機は破壊される
6. 自機が破壊されるとゲームオーバーとなる
7. 敵をすべて倒すとゲームクリアとなる
すべてのルールは、「〇〇すると××が発生する」という条件と結果を持ちます。ゲームにおいてルールは、プレイヤーができること、プレイヤーの行動により世界がどのように反応するかを決めているわけです。
そしてゲームには目的があります。
「ゲームはある目標を達成するために、ルールに従ってプレイヤーは行動する」
「ゲームの目的はルールにより決められた問題を解消すること」
さきほどのシューティングゲームであれば、「7. 敵をすべて倒すとゲームクリアとなる」というルールを達成することが勝利条件であり目的となります。
シューティングゲームは、敵が襲ってくる危機を打開するために、敵を倒すわけですね。
予測できない結果がゲームを面白くする
ゲームを面白くするには「結果をある程度、予測不可能とするべき」という提案をしています。
例えば、答えを知っているパズルゲームは、毎回同じ答えとなるため試行錯誤する余地がなく、とても退屈です。バイオハザードでゾンビが出てくる場所がわかっていたら怖くないですよね。(それはそれでRTAできますが)
というわけで、100%予測可能なゲームは、通常面白くならない、としています。
そんな予測不可能な結果をもたらすゲームを作る方法として、
1. サイコロを振る
2. 対戦要素を入れる
3. ルールを複雑にする
という3つの方法を提案をしています。
ブラックジャックやソリティアなどの短いゲームは、サイコロ(=乱数)が入ることで成立しています。ただ、長い尺を持つゲームにおいては、プレイヤーの技術と戦略的意思決定により正当な結果が得られるのが良い、としています。
次に、他の人間のプレイヤーが介入することで、予測不可能性は上がります。というのも、人間は常に合理的な行動をとることができず、そのときの心理状況によって選択が不安定になるからです。
最後に、複雑なルールはゲームを予測不可能なものにする、としています。これは、複雑性により多くの Interaction (相互作用) が発生し、取るべき選択肢が増えたり、選択による結果を評価することが困難になると、ある程度の推測で行動せざるを得なくなるためです。
例えば、物理エンジンを使ったゲームが面白いのは、複雑な計算により操作に対する結果のバリエーションが多くなるためとなります。
5種類のメカニクス
ゲームで使用されているメカニクスは、5種類存在しているとしています。
1. 物理
2. 内部経済
3. 進行型のメカニズム
4. 戦術的な操作
5. 社会的インタラクション
「1. 物理」は、キャラクターの移動・ジャンプ・飛び降り・乗り物などの挙動、それに反応するオブジェクトとの衝突をシミュレートしたものです。その反応が触っていて楽しいほど、感覚的な面白さが増大します。
「2. 内部経済」は、ゲーム要素の収集・消費・交換といった取引により、ゲーム内の経済を構築しています。お金やエネルギー、弾薬などのアイテムも含まれます。頭を使ってゲームの攻略を最適化する楽しさを提供します。
「3. 進行型のメカニズム」は特定のエリアを探索してキーとなるアイテムを見つけ、別のエリアへのカギをアンロックするというメカニズムによるものです。キーとなるアイテムには、扉を開くカギ・スイッチ・扉を破壊する爆弾などがあります。探索ゲーム、パズルゲーム向きの要素です。
「4. 戦術的な操作」はストラテジーゲームのように、複数のユニットを捜査して、攻撃や防御の陣形を組み、敵の戦略に対して先回りすること優位に立ち撃破する、といった頭を使う楽しさを提供します。古くはチェスや囲碁のようなボードゲームで見られたものです。
「5. 社会的インタラクション」の代表はソーシャルゲームです。またオンラインゲーム全般も含みます。プレイヤー同士の相互作用(協力プレイ・対戦プレイ)が重要な要素となります。
メカニクスとゲームジャンル
5つのメカニクスはゲームジャンルに当てはめることができます。
○アクションゲーム
・物理:移動、射撃、ジャンプなどの精密な物理
・内部経済:パワーアップ、アイテム、ポイント、ライフ
・進行:難易度が徐々に上昇するステージ
○ストラテジー
・物理:移動や戦闘用の単純な物理
・内部経済:ユニット構築、リソース収集、ユニットのアップグレード
・進行:新しいチャレンジを促すシナリオ
・戦術的な操作:攻撃用、防衛用のユニット配備
・社会的インタラクション:協力プレイ、同盟、対戦プレイ
○RPG
・内部経済:経験値によるキャラクターの成長、お金、装備品
・進行:登場キャラクターに行動を促すストーリー
・戦術的な操作:コマンド入力など
・社会的インタラクション:役割を演じる
とりあえずここまで
ここまでの内容は第1章の9ページぶんをまとめただけです。
それでこのボリューム!
海外ではゲームの研究が進んでいて、こういった学術的な情報を学ぶのが当たり前になっているようで、とても勉強になります。
ということで、興味があれば、ぜひ読んでみることをオススメします。
画像は、5つのゲームメカニクスをジャンルに当てはめて表にしたページです。重要な部分にマーカーで線を引いたり、感じたことを本に書き込んだりすると、より理解が深まります。
この本の使い方
最後にこの本の使い方ですが、「ゲームを分析するツール」として利用するのが良いと思います。何かお気に入りのゲームがあれば、そのゲームを構成している要素はこの本のどれに当てはまるのか……?! という推理・連想パズル的な発想で当てはめていくと、より深く理解できるようになるのではないかと思います。