ゲームクリエイターに必要な素養を考えてみる

面白いゲームを作れる人の素養として必要なものを考えてみます。

創造力と洞察力

面白いゲームを作るには、既存のウケている要素を巧みに組み合わせて新しいものを生み出す力が重要です。これは「0→1」の発想力と呼ばれ、非常に希少価値の高いスキルです。既存の要素を単に組み合わせるだけでなく、それらを独自の視点で再解釈し、新しい体験を生み出す能力が求められます。

重要なのは、常に好奇心を持ち、既存の枠組みにとらわれない柔軟な思考を維持することです。

以下必要となる要素と、それを身につけるための素養についてリストアップしてみます。

1. 深い洞察と再解釈

既存の要素を単に組み合わせるだけでなく、それらの本質を深く理解し、新しい視点で再解釈することが重要です。要素の意味や機能を掘り下げて考え、これまでにない文脈で活用することで、革新的なアイデアが生まれる可能性があります。

これを行うには、自分が長い期間をかけて本気で取り組めるような題材を見つけること、より良いアイデアが見つかるまで諦めず根気よく取り組む忍耐力粘り強さが求められます。
研究者のようにゲームデザインの資料やゲームの面白さを分析して、それを人に言葉で説明できる力を身につけるのも良いと思います。

2. 異分野からの発想

ゲーム業界以外の分野からアイデアを取り入れることで、新鮮な視点を得られます。例えば、建築、音楽、心理学など、全く異なる分野のコンセプトをゲームデザインに応用することで、独創的な要素が生まれる可能性があります。

これを行うための素養としては、色々な分野に興味を持つ視野の広さ好奇心の強さが求められます。

3. ユーザー体験の再定義

既存の要素を組み合わせる際に、プレイヤーの体験を中心に考えることが重要です。「このゲームでプレイヤーにどのような体験をしてもらいたいか」という視点から発想することで、既存の要素の新しい使い方が見えてくるかもしれません。

これを行うためには、人がどういったことに興味を持ってどのようにゲームを遊ぶのかといったゲームにおける心理学に対する理解や、ゲームを遊んでくれた人の反応をどうすればもっと良くできるのかといった人の行動や反応に関心を持つことが求められます。

4. 制約からの創造性

あえて制約を設けることで、創造性を刺激することができます。例えば、「この要素は絶対に使わない」「この条件下でゲームを作る」といった制約を課すことで、既存の枠組みを超えた発想が生まれる可能性があります。

この考えを身につけるには、自分がどのような要素に重きを持っているのかという自己分析、既存のゲームに対して当たり前とされている要素について疑問を考え続ける探究心、既存の枠組みを壊してもゲームメカニクスを成立させるための論理的思考など。プロトタイピングを行いスクラップ&ビルドを繰り返すフットワークの軽さも求められます。

5. 反転思考

既存の概念や常識を意図的に覆すことで、新しいアイデアが生まれることがあります。「もしこの要素が逆の効果を持つとしたら?」といった思考実験を行うことで、斬新なゲームメカニクスが生まれる可能性があります。

これも「なぜ?」を問いかける探究心や好奇心が必要とされます。

6. イテレーティブな開発プロセス

アイデアを早い段階でプロトタイプ化し、実際に遊んでみることが重要です。そこから得られたフィードバックを基に、さらにアイデアを発展させていくプロセスを繰り返すことで、独創的な要素が磨かれていきます。

ある程度ゲームが形になるまでは「とりあえず作ってみてから考える」といったフットワークの軽さも必要です。そして完成後「なぜうまくいったのか?」「なぜつまらなかったのか?」「次はどうすれば面白くできるのか」といった完成したゲームの評価を考える時間を取るようにします。これにより次の作品に向けて得たものを応用する力が身につきます。

7. コラボレーションとブレインストーミング

多様な背景や専門性を持つチームメンバーとアイデアを出し合うことで、個人では思いつかなかった組み合わせや視点が生まれる可能性があります。

チーム開発は難しいですが、同じ志を持った友人と共同開発することは大きな仕事を生み出すことができます。もしそういった人がいなくても、自分のゲームのアイデアや作品の評価や感想をもらって反応を得るだけでも意味があります。

ユーザー視点の理解

プレイヤーの感情への洞察

ゲームをプレイする人の感情や欲求を深く理解し、それに応える体験を設計する能力が重要です。プレイヤーが「楽しい」と感じる要素を見極め、それを効果的に組み込むことが求められます。

ここで求められる素養は人を観察する力、どういう考えや感情を持ってそれを選んだのかという人に対する興味です。

プレイヤーの感情を理解にするには

プレイヤーの感情を知るには、ゲームをプレイしてどのような得られるかのパターンを知ることです。例えばゲームで得られる感情には以下のものがあります。

  • 達成感と挫折感:ゲームのメイン目標やサブ目標を達成、もしくは失敗したときに得られる感情です。達成感は先を見たいと思わせる好奇心を高め、適度な挫折感によりそれが強調されます。高すぎる挫折感はモチベーションを失うことに注意です
  • 興奮と緊張感:適切な難易度はプレイヤーに興奮と緊張を生み出します。また魅力的な演出や音楽、キャラクターや世界観とストーリーはプレイヤーへの感情移入を生み出します
  • 安心と解放感:例えば危険な地帯での探索における緊張が続いた後に、安全な拠点に戻ったときに得られる感情
  • 没入感:没入感を得るためには、適切な難易度やゲームシステムの理解の他にも、直感的な操作性や魅力的なインタラクション (ゲーム世界での反応)、成長によって得られる報酬やゲームプレイの自由度や魅力的なストーリーなどが考えられます
  • 創造性:ゲームプレイにおける攻略の自由度の高さ。明確に語られないストーリーや世界観を想像する楽しさなどがあります
行動の動機づけとパターンの観察

プレイヤーが何に動機づけられてプレイを続けるのかを理解します。またプレイヤーがゲーム内でどのような選択をし、どのように行動するかを観察します。

例えば動機づけとしては以下の要素が考えられます。

  • 報酬システム:通貨やアイテムなどの具体的な報酬。経験値やレベルアップなどの成長要素。達成感を与えるバッジやトロフィー
  • リスクと報酬のバランス:危険な地域での高価値アイテムの配置。難易度の高いクエストに対する豪華な報酬
  • プレイヤーの進捗管理:クリア率や収集率の可視化。目標達成までの進捗バー
  • 探索要素:隠しエリアや秘密のアイテム。環境の相互作用による発見
  • タイミングと緊急性:期間限定イベント。タイムアタック要素
  • カスタマイズ要素:キャラクターやアイテムのカスタマイズ。プレイスタイルに合わせた成長システム
  • チュートリアルと学習曲線:段階的な難易度上昇。新機能の適切な導入
  • フィードバックシステム:プレイヤーの行動に対する即時的なフィードバック。長期的な成果の可視化
  • 選択の自由度と結果:プレイヤーの選択が及ぼす影響の明示。複数のエンディングや分岐ストーリー
  • 資源管理:限られたリソースの効率的な使用を促す仕組み。トレードオフを伴う意思決定

これらの要素を適切に組み合わせることで、プレイヤーの行動を動機づけ、多様なプレイパターンを観察することができます。重要なのは、これらの要素がゲームの世界観やメカニクスと自然に調和し、プレイヤーに強制感を与えないようにすることです。また、データ分析を通じてプレイヤーの行動パターンを継続的に観察し、ゲームデザインを最適化していきます。

長期的な魅力の創造

プレイヤーの人生の一部となるような、長く深く楽しめるゲームを作る視点も重要です。単に一時的な面白さだけでなく、プレイヤーの心に残り続ける体験を創造する能力が求められます。

ここで求められる素養は、長いスパンでプレイヤーの感情をどのように動かしていくかを考えるためのゲーム全体における構成を作り上げる力です。良い構成をするにはコンセプトの徹底が重要ですので、そういう意味では厳格さが求められます。
ユーザーと向き合い、ゲームで何を学んでどのように活かして欲しいのかといった学習曲線を作る力、作品を多角的に見ることができる客観的で広い視野などが求められます。プレイデータを分析する場合には分析力も必要となります。

プレイヤーの成長

プレイヤーのスキルや理解が時間とともに変化することを考慮し、長期的なゲーム体験をデザインします。

  • 段階的な難易度上昇:プレイヤーのスキルが向上するにつれて、ゲームの難易度も徐々に上げていきます。これにより、プレイヤーは常に適度なチャレンジを感じながらプレイを続けることができます
  • 新要素の段階的な導入:ゲームの進行に合わせて新しいメカニクスや要素を徐々に導入します。これにより、プレイヤーは常に新鮮な体験を得ながら、複雑性を段階的に理解できます
  • 短期・中期・長期目標の設定:プレイヤーに様々な時間スケールの目標を提供します。短期目標は即時的な満足感を、長期目標は継続的なモチベーションを提供します
  • 個人の成長に応じた目標:プレイヤーの好みや能力に応じて、カスタマイズ可能な目標を設定します。これにより、多様なプレイスタイルに対応できます
  • 明確な進捗指標:プレイヤーの成長を数値やビジュアルで明確に示します。これにより、プレイヤーは自身の成長を実感し、さらなる向上へのモチベーションを得られます
  • フィードバックシステムの実装:プレイヤーの行動に対して即時的かつ具体的なフィードバックを提供します。これにより、プレイヤーは自身の行動の結果を理解し、改善点を把握できます
プレイデータの分析

実際のプレイデータを収集・分析し、プレイヤーの行動パターンや好みを客観的に把握します。

  • データ収集:プレイログの収集 (プレイ時間、アクション、進捗状況など)
  • データの可視化:グラフ化 (折れ線グラフ、棒グラフ、ヒートマップなど)
  • プレイヤー行動分析:プレイパターンの特定。ボトルネックや離脱ポイントの分析。人気コンテンツや機能の特定

これらの要素を組み合わせることで、ゲームの改善点を特定し、ユーザー体験を向上させるための洞察を得ることができます。データ分析は継続的なプロセスであり、常に新しい仮説を立て、テストし、結果を反映させていくことが重要です。

技術的スキルと協調性

多面的な能力

ゲーム開発の各フェーズ(企画立案、詳細化、実装)に対応できる柔軟性が重要です。

ゲーム開発において、得意分野に特化する専門性も大切ですが、それと同時に「ゲームデザイン・アート・プログラム・サウンド・世界観・シナリオ・プロモーション(販売や広報)」といった多岐にわたる知識を万遍なく身につけておくと、より柔軟にゲーム開発を進めることができます。


知らないことに対して苦手意識を持ったりしない好奇心や「ゲームに関することはすべて身につける」といった高いモチベーションを持って取り組み、何にでも挑戦する力と効率的に技術を身につける分析力適応力柔軟性が求められます。

チームワーク

ゲーム開発は多くの場合チームで行われるため、他の専門家と協力して作品を完成させる能力も重要です。自分の得意分野を活かしつつ、他のメンバーの強みを引き出す協調性が求められます。

チーム開発を行うには、まずは自分だけの力でゲームを完成させる力があると良いです。その後、苦手な分野を補強するするために外部に仕事を依頼したり、もし考え方が合う人がいればチーム開発をしてみるのも良いです。

継続的な学習と挑戦

市場動向の理解

新しいゲームジャンルの流行など、常に変化するゲーム市場やプレイヤーの嗜好を理解し、それに応じた企画を生み出す能力が重要です。

8-BIT, 16-BITスタイルなどのレトロなゲームを作る場合でも、昔のゲームをそのまま再現するとたいていは不親切なゲームになります。その場合は、現代的なゲームデザインやUIを取り入れて、遊びやすくするのが良い場合もあります。
そのためにも日頃から最新のゲームの動向を追ったり、遊んだりするなど好奇心分析する力が求められます。

新技術への適応

新しい技術やプラットフォームの変遷などに柔軟に対応し、それらを活用して革新的なゲーム体験を創造する能力も求められます。